コンクリートひび割れ補修方法

コンクリートは引張に弱く、圧縮に強い性質をもつ脆性材料です。鉄筋コンクリート構造物は、引張に強い鉄筋をコンクリートの内部に配置することによって、コンクリートの弱点である引張の弱さを補い、鉄筋コンクリート構造物が成り立っています。

そのため、鉄筋コンクリート構造物にひび割れが生じてしまうとそのひび割れから水や酸素などが浸入し、コンクリート内部にある鉄筋をサビさせ、構造物自体の耐久性を低下させてしまい、寿命を短くしてしまいます。ここでは、構造物に発生したひび割れの補修方法について、説明したいと思います。

1. コンクリートの耐久性上、有害となるひび割れの種類

日本建築学会では、鉄筋コンクリートに生じる劣化現象をコンクリート自体の劣化と鋼材の腐食に分けて整理しています。ひび割れはコンクリートの劣化現象であるばかりでなく、鋼材腐食の原因にもなります。

また、中性化や塩害によって生じた鋼材腐食はひび割れの原因になることも示されています。したがって、耐久性上有害となるひび割れの種類は、以下の3つに分けて整理ができます。

  1. 鋼材腐食が進行した結果、生じたひび割れ(鋼材腐食先行型)
  2. 鋼材腐食を促進させる原因となるひび割れ(ひび割れ先行型)
  3. コンクリート自体の劣化を表わす進行性のひび割れ(劣化ひび割れ)

①と②は、鋼材の腐食が先か、ひび割れが先かの違いはありますが、いずれも鋼材腐食が構造物の安全性の低下につながると考えられるひび割れです。

また、③はひび割れの進行に伴い、コンクリート自体が劣化し、構造物の安全性の低下につながると考えられる種類のひび割れです。

なお、構造物の安全性には構造物や部材の構造的な安全性のみでなく、コンクリート片の落下が人や器物に危険を及ぼすといった安全性も含まれます。

1-1. 鋼材腐食先行型

鋼材腐食先行型の劣化は、中性化や塩害などの原因で鋼材に腐食が生じ、サビによる膨張によって、かぶりコンクリートがひび割れ、その後短期間のうちにかぶりコンクリートが剥落することが多いです。

かぶりコンクリートの剥落は、人や物に対する安全上、避けなければならない劣化です。そこで、鋼材腐食によって、かぶりコンクリートに鋼材に沿ったひび割れが生じた時点が鋼材腐食先行型の劣化限度と考えられます。

このため、腐食ひび割れはひび割れ幅に関わらず有害なものとなります。

1-2. ひび割れ先行型

ひび割れ先行型の劣化は、何らかの原因で生じたひび割れが鋼材位置に達し、鋼材腐食に有害な幅まで成長した際、そのひび割れからの劣化因子の浸入によって、鋼材腐食が進行します。

そこで、コンクリートの保護性能が失われたと見なされるひび割れ幅に至った段階がひび割れ先行型の劣化限度となります。

ただし、ひび割れが先にあると鋼材周辺に腐食による膨張圧が蓄積されにくく、鋼材腐食先行型の劣化の場合と比較するとかぶりコンクリートの剥落は生じにくいため、比較的安全側の劣化形態といえます。

また、ひび割れ先行型の場合、その発生原因について進行性であるか否かを見極めることが重要で、進行性でないひび割れについては、早い時点にひび割れ補修を行えば耐久性の低下の問題には対処可能と考えられます。

1-3. 劣化ひび割れ

乾燥収縮などのひび割れとは異なり、アルカリシリカ反応、凍害、化学的腐食、疲労といった劣化現象は進行性であり、ひび割れの発生によって、コンクリート自体の組織が緩み、強度低下が生じます。

また、放置しておくとコンクリート自体の劣化が部材の崩壊につながる可能性があります。

2. コンクリートのひび割れ補修工法(方法)

ひび割れ補修工法は、防水性、耐久性を向上させる目的で行われる工法であり、その種類には、「ひび割れ被覆工法」、「注入工法」、「充填工法」、「その他工法」などがあります。

これらの工法は、ひび割れ発生原因、発生状況、ひび割れ幅の大小、ひび割れの変動の大小、鋼材の腐食の有無などによって、工法の使い分けることになります。温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れなど、打込みから数年の間に収束すると考えられるひび割れを対象としたときの工法の選定例は下図のとおりです。

 

 

それでは、それぞれの工法について説明します。

2-1. ひび割れ被覆工法

ひび割れ被覆工法は、微細なひび割れ(一般に幅0.2mm以下)の上に、ひび割れ追従性に優れた表面被覆材や目地材などを塗布する工法です。ひび割れ被覆工法の施工手順については、下図のとおりです。

 

 

2-2. 注入工法

注入工法は、防水性および耐久性を向上させる目的のほかに、躯体の一体化を図ることも可能なため、コンクリート構造物全般に発生したひび割れの補修工法として最も普及しています。

その方法も従来はグリースポンプを利用した手動による注入方法でしたが、専用の治具が開発されたことにより、注入圧力0.4MPa以下の低圧で、かつ低速で注入する工法が主体です。

この工法の特徴としては、①注入材の量の管理ができる、②注入精度が作業員の熟練度に左右されない、③ひび割れ深部のひび割れ幅が0.05mmと狭い場合でも確実に注入することができるなどがあります。

注入工法の施工手順については、下図のとおりです。

「図(注入工法手順)を入れてください」

2-3. 充填工法

充填工法は、1.0mm以上の比較的大きな幅のひび割れの補修に適する工法で、ひび割れに沿って、サンダーなどでコンクリートをカットし、その部分に補修材を充填する方法です。

この方法は、鋼材が腐食していない場合と腐食している場合とで異なってきます。

①鋼材が腐食していない場合

鋼材が腐食していない場合は、ひび割れに沿って約10mmの幅でコンクリートをUまたはV形にカットした後、このカットした部分に補修材を充填する方法です。ひび割れに動きがある場合、ウレタン樹脂やシリコーン樹脂などのシーリング材(目地材)や可とう性エポキシ樹脂など変形追従性の大きな材料を充填します。また、ひび割れに動きがない場合には、ポリマーセメントモルタルを充填する場合が多いです。

②鋼材が腐食している場合

鋼材が腐食している場合には、その原因として、中性化や塩害などが考えられます。この場合には、鋼材が露出するまでコンクリートをはつり、鋼材の錆落としを行い、鋼材の防錆処理した後、ポリマーセメントモルタルなどで断面修復をする必要があります。

2-4. その他工法

ひび割れに対するその他の補修工法としては、PC鋼材で締め付ける工法やシリコーン系やシラン系の浸透性吸水防止材による含浸材塗布工法などがあります。

3. まとめ

ひび割れは、以下の3種類の評価で区分されており、その評価によって補修などの要否を判断することができます。

・評価Ⅰ(乾燥収縮ひび割れなどに適用):温度ひび割れや乾燥収縮ひび割れなど、打込みから数年の間に収束すると考えられるひび割れを対象とした評価。

・評価Ⅱ(中性化・塩害などに適用):中性化や塩害による腐食ひび割れなど、進行性のひび割れの場合であっても、専門的な調査により劣化進行予測が概ね可能と考えられるひび割れを対象とした評価。

・評価Ⅲ(複合的劣化などに適用):評価Ⅰあるいは評価Ⅱで取り扱うことができない複合的な劣化によるひび割れや構造上の検証が必要と考えられるひび割れを対象とした評価。コンクリート診断士などの資格を有する専門技術者が行う。

気なるひび割れなどがありましたなら、コンクリートの専門家へご相談してください。