コンクリートは強固なイメージが強いですが、練混ぜられた直後の生コンクリートは柔らかく、決して強固なものではありません。適切な打設を行う事で初めて強固な材料としての力を十分に発揮することが出来るようになります。
ここでは、コンクリートの打設手順について説明していきたいと思います。
この記事でわかること
コンクリートの打設とは
一般的な打設は、型枠の中に生コンクリートを流し込んで行われていますが、ただ流し込めばよいというものではありません。打設を行うにあたっては入念な準備と計画がなければ、良いコンクリート構造物を作ることは出来ません。打設手順は以下のような手順で行われます。
コンクリートの打設手順
- 打設前の打ち合わせ(打設計画)
- コンクリートの打設工法の選定
- コンクリートの打込み準備
- コンクリートの受け入れ検査
- コンクリートの打込み
- コンクリートの締固め(⑤⑥⑦は並行して行われます)
- コンクリートの仕上げ
①打設前の打ち合わせ(打設計画)
コンクリートの打設にあたっては、打設作業開始前にコンクリート工事関係者を集めて打合せを行う必要があります。打合せでは、全員に打設計画書を配り、打設の順序や打設時の注意事項を共有することで、各作業員の役割を明確にし、打設作業をスムーズに行う事が出来るようになり、不具合の発生を防止することができます。
②コンクリートの打設工法の選定
打設工法は、コンクリートポンプによる工法とコンクリートバケットによる工法の主に2種類に分かれます。
コンクリートポンプによる方法はポンプ車等によって配管を経由しポンプ圧送する方法で、コンクリートバケットによる方法はコンクリートを入れたバケットを打設位置までクレーン等で移動させ、打設する方法です。
現在では、ポンプ車の性能の向上や、現場での省力化が図られることから、ポンプ工法が主流となっています。バケット工法は、小規模の打設や固練りのコンクリートでポンプ圧送が困難な場合等に用いられています。
コンクリートを打設する箇所がどちらの工法が適しているかを検討し、選定しましょう。
③コンクリートの打込み準備
コンクリートを打ち込むためには、打込む型枠が必要になってきます。型枠が設計通り適切に作られているか?型枠内の鉄筋は適切な位置に配置されているか?等、事前の確認作業は非常に重要です。なぜなら、打込まれてしまってからでは修正を行う事が困難だからです。
以下は、土木学会および建築学会の打ち込み準備についての規定を抜粋しました。
(1)コンクリートの打込み前に、鉄筋、型枠、その他が設計および施工計画で定められた配置であること、堅固に固定されていること、ならびにコンクリートの打込みおよび締固めを阻害しないことを確かめなければならない。
(2)打込みは雨天や強風時を避け、それらの不足の事態を考慮して準備しておかなければならない。
(3)コンクリートの打込みの直前に、運搬装置、打込み設備および型枠の中を清掃して、コンクリート中に木片、ごみ等が混入することを防がなければならない。また、コンクリートと接して吸水するおそれのあるところは、あらかじめ湿らせておかなければならない。
(4)型枠内にたまった水は、打込み前に除かなければならない。また、型枠内に水が流入して新しく打ち込んだコンクリートを洗わないように適当な処置を講じておかなければならない。
(1)施工者は、運搬・打込みおよび締固めに用いる機器・用具・電源および人員などが、計画どおりに配置されていることを確認する。
(2)施工者は、かぶり厚さが確保されていること、型枠、配筋および設備配管・ボックス・埋込金物など埋設物の配置と寸法が設計図書どおりになっていることを確認して、工事管理者の検査を受ける。
(3)打込みに先立ち、打込み場所を清掃して異物を取り除き、型枠・鉄筋などに散水した水は、コンクリートの打込み前に高圧空気などによって取り除く。
④生コンクリートの受け入れ検査
現在では打設に用いる「生コンクリート」は、生コン工場に依頼し納入されることがほとんどです。
まずは現場に到着した「生コンクリート」が発注したものと同じかどうか伝票を確認しましょう。そして、ミキサー車から生コンクリートを荷卸しする際には、スランプや、空気量、塩化物含有量試験等の受け入れ検査を行います。
受け入れ検査では、生コンクリートの性状を確認し、発注した商品として規格を満足しているかどうかを判断します。
主な受入検査項目には以下のようなものがあります。
⑴スランプ試験
スランプ試験とは、「生コンクリート」の柔らかさの程度を示すもので、スランプコーンと呼ばれる高さ30㎝の筒に生コンクリートを詰め、筒を引き抜いた時にどれだけ下がるかでスランプを測ります。
⑵空気量試験
空気量試験とは、「生コンクリート」中の空気の量を測定するもので、コンクリートに空気を含ませる事で、凍結融解抵抗性(内部の水分が凍結と融解を繰り返すことによって生じる劣化の抵抗性)を高める事ができます。
空気量試験は、エアーメーターと呼ばれる試験器具によって測定されています。
⑶塩化物含有量試験
塩化物、いわゆる塩分は鉄筋の腐食の原因となるため、生コンクリート中の塩化物イオンの量には上限が設けられています。JIS(日本工業規格)では、通常0.30㎏/m3以下とされており、購入者の承認を受けた場合には、0.60㎏/m3以下とすることが出来るとされています。
⑷圧縮強度試験(試験体の採取)
圧縮強度試験は、圧縮力に対してどれくらいの強さをもっているのか確認する試験です。しかし、現場へ納入される「生コンクリート」は、まだ固まる前のものである為、圧縮強度を測定することが出来ません。
その為、テストピースと呼ばれる円柱状の試験体を採取し、硬化後に圧縮試験をおこなってコンクリートがもつ強度を測定します。
⑤コンクリートの打込み
コンクリートの打込みは、型枠内に流し込むだけではありません。材料分離や打ち込み高さ、打ち重ね時間等に留意しなければいけません。コンクリートは密度の違う材料を練り混ぜて造られた混合物の為、重い材料(骨材)は沈みまた打ち込み箇所からあまり動かず、軽い材料(モルタル分:主に水分)は浮き上がろうとし、振動を与えれば打ち込み箇所から流動し遠くへ移動しようとしてしまいます。これらの材料の動き等によって材料分離を引き起こし、ジャンカやひび割れ等を引き起こしてしまいます。
また、コンクリートは時間とともに硬化していくため、打ち重ね時間が空き過ぎてしまうと先に打ち込んだコンクリートと後から打込んだコンクリートが一体化せずコールドジョイントを引き起こしてしまいます。
打込みにあたっては、以下の土木学会および建築学会の打込みについての規定を参考にして下さい。
(1)コンクリートの打込み作業にあたっては、鉄筋や型枠が所定の位置から動かないように注意しなければならない。
(2)打ち込んだコンクリートは、型枠内で横移動させてはならない。
(3)打込み中に著しい材料分離が認められた場合には、材料分離を抑制するための方法を講じなければならない。
(4)計画した打継目以外では、コンクリートの打込みが完了するまで連続して打ち込まなければならない。
(5)コンクリートは、打上がり面がほぼ水平になるように打込むことを原則とする。コンクリートの打込みの1層の高さは、40~50㎝以下を標準とする。
(6)コンクリートを2層以上に分けて打込む場合に、上層と下層が一体となるように施工しなければならない。また、コールドジョイントが発生しないよう、施工区画の面積、コンクリートの供給能力、打重ね時間間隔等を定めなければならない。許容打重ね時間間隔は以下を標準とする。
外気温
許容打ち重ね時間間隔
25℃以下
2.5時間
25℃を超える
2.0時間
(7)型枠の高さが大きい場合には、型枠に投入口を設けるか、縦シュートあるいは輸送管の吐出口を打込み面近くまで下げてコンクリートを打ち込まなければならない。この場合、シュート、輸送管、バケット、ホッパ等の吐出口と打込み面までの高さは、1.5m以下を標準とする。
(8)コンクリートの打込み中、表面に集まったブリーディング水は、適当な方法で取り除いてからコンクリートを打ち込まなければならない。
(9)打上がり速度は、一般の場合には30分当り1.0~1.5m程度を標準とする。
(10)スラブまたは、はりのコンクリートが壁または柱のコンクリートと連続している場合には、沈みひび割れを防止するため、壁または柱のコンクリートの沈下がほぼ終了してからスラブまたははりのコンクリートを打ち込むことを標準とする。
(11)コンクリートを直接地面に打ち込む場合には、あらかじめならしコンクリートを敷いておくことを原則とする。
(1)コンクリートは、目的の位置にできるだけ近づけて打ち込む。その際、打込み箇所以外の鉄筋、型枠および先付けタイルなどにコンクリートが付着しないようにする。
(2)打継ぎ部におけるコンクリートの打込み・締固めは、打継ぎ部に締固め不良やブリーディング水の集中などによる脆弱部を生じないように行う。
(3)1回に打ち込むように計画された区画内では、コンクリートが一体になるように連続して打ち込む。
(4)打込み速度は、コンクリートのワーカビリティーおよび打込み場所の施工条件などに応じ、良好な締固めができる範囲とする。
(5)コンクリートの自由落下高さおよび水平移動距離は、コンクリートが分離しない範囲とする。
(6)打ち重ね時間間隔の限度は、コールドジョイントが生じない範囲として定め、工事管理者の承認を受ける。
(7)コンクリートの打込みに際しては、最外側鉄筋とせき板とのあきの状態を観察し、スペーサおよび鉄筋のサポートの修正、鉄筋および型枠の修正を行って、所要の最小かぶり厚さが確保されるようにする。
⑥コンクリートの締固め
コンクリートを型枠の隅々まで充てんする為には、締固め作業が必要になります。
締固めを行う方法としては3つの方法があり、コンクリート内部に振動機(バイブレータ)を挿入して締め固める「内部振動方式」、型枠の外側から振動を与えて締め固める「型枠振動方式」、道路舗装や床などの表面を締め固める「表面振動方式」があります。
締固めの際は、ジャンカや空隙等の充てん不良やコールドジョイントの防止を意識して作業することが大切です。
以下は、土木学会および建築学会の締固めについての規定を抜粋しました。
(1)コンクリートの締固めには、棒状バイブレータを用いることを原則とする。ただし、棒状バイブレータの使用が困難で、かつ型枠に近い場所には型枠バイブレータを使用して確実に締め固めなければならない。
(2)あらかじめ計画した締固め作業高さを超えることがないように、作業足場の設置や締固めの方法を検討しなければならない。
(3)せき板に接するコンクリートは、できるだけ平坦な表面が得られるように打ち込み、締固めなければならない。
(4)コンクリートを打ち重ねる場合、上層と下層が一体となるよう、棒状バイブレータを下層のコンクリート中に10㎝程度挿入しなければならない。
(5)コンクリートを十分に締め固められるよう、棒状バイブレータの挿入間隔および1か所あたりの振動時間を定めなければならない。また、棒状バイブレータはコンクリートから徐々に引き抜き、後に穴が残らないようにしなければならない。
(6)再振動を行う場合には、コンクリートの締固めが可能な範囲でできるだけ遅い時期がよい。
(1)締固めは、鉄筋および埋設物などの周辺や型枠の隅々までコンクリートが充填され、密実なコンクリートが得られるように行う。
(2)締固めは、コンクリート棒形振動機・型枠振動機または突き棒を用いて行い、必要に応じて他の用具を補助として用いる。
(3)コンクリート棒形振動機は、打込み各層ごとに用い、その下層に振動機の先端が入るようにほぼ鉛直に挿入する。振動機の挿入間隔は60㎝以下とし、加振はコンクリートの上面にペーストが浮くまでとする。コンクリート棒形振動機を引き抜くときは、コンクリートに穴を残さないように加振しながら徐々に引き抜く。
(4)型枠振動機は、打込み高さと打込み速度に応じてコンクリートが密実になるよう、順序立てて加振する。
⑦コンクリートの仕上げ
コンクリートは型枠内に打ち込み後、締固め作業を行っただけでは表面に凹凸ができてしまい、きれいな表面になりません。こて等を用いて均し作業を行う事できれいな表面に仕上げることができます。
以下は、土木学会および建築学会の仕上げについての規定を抜粋しました。
(1)締固めが終わり、ほぼ所定の高さおよび形にならしたコンクリートの上面は、しみ出た水がなくなるかまたは上面の水を取り除くまで仕上げてはならない。
(2)仕上げ作業後、コンクリートが固まり始めるまでの間に発生したひび割れは、タンピングまたは再仕上げによって修復しなければならない。
(3)なめらかで密実な表面を必要とする場合には、作業が可能な範囲で、出来るだけ遅い時期に、金ごてで強い力を加えてコンクリート上面を仕上げなければならない。
(1)打込み・締固め後のコンクリート上面は、所定の位置と勾配に従って、所定の精度および仕上がり状態が得られるように仕上げる。
(2)コンクリートの沈み、材料分離、ブリーディングおよびプラスチック収縮ひび割れなどによる不具合は、コンクリートの凝結が終了する前に、タンピングなどにより処置する。
(3)柱・壁などの水平打継ぎ部の上面は、所定の勾配と粗さに仕上げる。打継ぎ面を凝結遅延剤を用いて処置する場合には、凝結遅延剤の種類および使用方法を信頼できる資料または試験によって定め、工事管理者の承認を受ける。
(4)せき板に接するコンクリート表面は、せき板取外し後、型枠セパレータの頭処理や不具合の手直しを行い、所定の仕上がり状態になるように仕上げる。
3. まとめ
ここまで打設について紹介してきましたが、打ち込みや締固め等をしっかりと行わなければ良いコンクリート構造物をつくることができません。型枠内に打ち込まれたコンクリートは型枠を外してみるまで、しっかりとした打設が行われたかどうかは目で見ることは出来ませんが、どこに注意し、どうすれば良いかが分かっていれば出来上がったコンクリート構造物は、より良いものになっているのではないでしょうか。