コンクリートポンプ車の仕組みと役割

建設・建築現場で打設を行う現場では、アジテータトラックとともに、コンクリートポンプ車をよく見かけます。ここではコンクリートポンプ車について、その役割や仕組みを解説します。

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1. コンクリートポンプ車の概要・役目

コンクリートポンプ車は建設現場において、アジテータトラックから離れた所にコンクリートを輸送し打設するために使われる車両です。

コンクリートポンプ車はトラックやトレーラーなどの車両を改造(架装)して製作した車両が主です。一般的に使用される車両の大きさは、小さいもので宅配便でつかわれる2トン車クラスのトラックを架装したものから、大きいものだとGVW25トン級※の物まで様々あります。

※GVW 車両総重量:自動車などにおいて最大定員が乗車・最大積載量の荷物を積んだ状態の自動車全体の総重量のことを指します。

2. コンクリートポンプ車の仕組み・構成

コンクリートポンプ車は、遠くに圧送するために、主にホース配管を近くまで近づけるための「ブーム式」と「配管式」の工法と、とコンクリートを送り出すための「ポンプ」の2つから構成されます。

2-1. ブーム式

ブーム式は配送管を目的の荷下ろし箇所に効率良く向けるためについています。

ブームの長さは架装ベースの車両の大きさによって異なり、2トン車の場合8mからGVW25トン級で36mまでの最大作業高さに対応できます。

折りたたむことでコンパクトな輸送姿になるのが特徴で、現在は4段階に折りたたみ可能なブームを搭載したポンプ車があります。

尚、ブームがなく配管は人力で対応するコンクリートポンプ車(配管車)もあります。

2-2. 配管式

配管式は、コンクリートポンプ車が打設箇所に近寄れない場合やブームが届かない場合に配管式の工法でコンクリートを打設します。配管は人力で配置し、配管の距離ができるだけ短く、曲がりの数が少なくなるようにコンクリートポンプの配置および配管の経路を定めることが重要です。

2-3. ポンプ

ポンプには大きく、「スクイーズポンプ形式」と「ピストンポンプ形式」の2つがあります。

a)スクイーズポンプ形式

歯磨き粉を使用するときの様に、チューブを物理的に絞り出して輸送(圧送)する形式です。

具体的には「ポンピングチューブ」とよばれるゴム製のチューブを、ローラーを回転させる作用で絞り出しながらコンクリートを圧送します。

b)ピストンポンプ形式

竹を使用した水鉄砲の様な「ピストン」と「弁(バルブ)」がついており、吸い込みと押し込みを繰り返すことで輸送(圧送)する形式です。

具体的には、「コンクリートピストン」を油圧シリンダで動かし、後退・前進を繰り返すことで吸い込みと圧送を行います。

一般的には「ピストンポンプ形式」の方が、圧送能力が高いです。

参考:コンクリートポンプ (極東開発工業様)

3. コンクリートポンプ車の打設能力

コンクリートポンプ車の打設能力は、コンクリートポンプ車の性能によって最大吐出量が変わってきます。ポンプ圧送にあたって、所要の品質のコンクリートが得られるよう、コンクリートのポンプ圧送性を考慮し、コンクリートポンプの機種、輸送管の径、配管の経路、吐出量などによって決める必要があります。

コンクリートポンプ機種の選定は、コンクリートのポンプ施工を円滑に進めるうえで、最も重要な事項であり、コンクリートポンプにかかる最大圧送負荷を求め、得られた最大圧送負荷がコンクリートポンプの最大理論吐出圧力の80%以下となるようにコンクリートポンプの機種を選定しなれけばなりません。

コンクリートポンプにかかる最大圧送負荷の計算方法は、当サイト「ポンプ車の圧送計算」(https://concrete-mc.jp/pumptruck/)をご参照してください。

また、コンクリートポンプ車の必要台数は、圧送負荷、吐出量、単位時間当たりの打込み量および施工場所の環境条件などを考慮して定める必要があります。

4.コンクリート打設手順

コンクリートの打設手順については、当サイト「コンクリートの打設手順の解説」(https://concrete-mc.jp/pouring/)をご参照してください。

また、コンクリートの圧送手順は、一般社団法人全国コンクリート圧送事業団体連合会(略称:全圧連)

「最新コンクリートポンプ圧送マニュアル」を発売しております。

5. コンクリートポンプ車の運転に必要な免許・資格

コンクリートポンプ車の運転には以下の3つの免許・資格が必要です。

◎車両系建設機械(打設用)の作業装置の操作の業務に係る特別教育の修了

コンクリートポンプ車の作業は、労働安全衛生法の定めにより就業制限の課されている一定の車両系建設機械の対象となっております。

このため、車両系建設機械(打設用)の特別教育を履修・修了する必要があります。本教育の内容は、学科7時間、実技5時間です。

これに違反した場合、労働安全基準法第119条の罰則に基づき、6ヶ月以上の懲役または50万円以下の罰金が科されることにます。

◎特殊自動車免許

コンクリートポンプ車で公道を走るために必要な免許です。対象となる車両のサイズにより、大型特殊自動車免許、または、中型特殊自動車免許に必要になります。

◎コンクリート圧送施工技能士

国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県知事が実施します。

コンクリート圧送に関する学科及び実技試験に合格することで取得可能です。1級と2級の種別が有り、学科試験と実技試験からなります。

学科試験の内容:

  1. 建設一般
  2. 施工法
  3. 材料
  4. コンクリートの圧送性
  5. 製図
  6. 関係法規
  7. 安全衛生

実技試験の内容:

製作等作業試験、判断等試験及び計画立案等作業試験のいずれか、又はそれらの組み合わせにより実施されます。

6. ポンプ車の製作メーカー

ポンプ車として架装を行っているメーカーは主に以下があります。

まとめ:適切な仕様のコンクリートポンプ車を使う

打設作業・ポンプ圧送作業では高圧なホースなどの重量物を扱うことになります。適切な仕様のコンクリートポンプ車を選択し、また知識技能を持った有資格者に携わっていただくよう心がけたいものです。

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