アルカリ骨材反応とは、骨材中の特定の鉱物とコンクリート中のアルカリ性細孔溶液との間に起こる化学反応です。
この化学反応によってゲルと呼ばれる物質がコンクリート中に生成され続け、内部で局部的な容積膨張が発生し不規則なひび割れを発生させます。
さらに圧縮強度の低下や耐久性能の低下も引き起こします。
この記事でわかること
1. アルカリ骨材反応(AAR)とは
アルカリ骨材反応(あるかりこつざいはんのう)とは、骨材中の特定の鉱物とコンクリート中のアルカリ性細孔溶液との間の化学反応のことです。アル骨(あるこつ)と略されることもあります。
このアルカリ骨材反応は“コンクリートのガン”とも言われており内部で進行していき、気がついた頃には劣化しています。
この反応によって内部で局部的な容積膨張が生じひび割れが発生します。さらに、圧縮強度の低下や静弾性係数の低下といった耐久性能の低下も引きおこします。
アルカリ骨材反応は、T.E. Stantonによって1940年に初めて報告(カリフォルニアKing City橋)されました。日本において1950年頃から調査報告はありますが、1980年代に入ってからアルカリ骨材反応による早期劣化が顕在化しました。
劣化のメカニズムの解明が進んでいますが、膨張予測や補修工法については未だ研究段階にあり、不明な点も多くあります。
1-1. アルカリ骨材反応の分類
アルカリ骨材反応は下記の3つに分類されます。
①アルカリシリカ反応(ASR)
アルカリイオン、水酸基イオンと骨材中に含まれる準安定なシリカとの間に起こる ある種の化学反応。
②アルカリ炭酸塩反応
アルカリとドロマイト質石灰岩が反応して、膨張を起こす反応。
③アルカリシリケート反応
アルカリシリカ反応とほぼ同じであるが、アルカリシリカ反応よりも長期間にわたって継続し、生成するゲルの量が少ない。
日本において①アルカリシリカ反応の発生事案がほとんどで、アルカリシリカ反応と表記されることがほとんどです。
2. アルカリ骨材反応のメカニズム
アルカリ骨材反応は、「高アルカリの環境」、「反応性骨材」、「水の供給」の3種類が揃った場合に発生します。どれか一つでも欠けた場合は発生しません。
コンクリート中のシリカ鉱物とアルカリとの反応によって、骨材の周りにアルカリシリカゲルを生成します。このゲルは吸水性が高いため、周囲の水をどんどん吸水していき膨張していきます。その膨張によってひび割れが発生します。ひび割れが発生すると、鋼材の腐食へと発展していきます。
3. アルカリ骨材反応による劣化の特徴
コンクリート中の骨材の周りに発生したアルカリシリカゲルが吸水膨張するため、表面全体にひび割れが発生します。形状としては亀甲状(マップ状)のひび割れで、方向性がないのが特徴です。さらに、アルカリシリカゲルによって、圧縮強度や静弾性係数も低下し、コンクリート構造物自体の強度が低下してしまいます。
また、ひび割れからアルカリシリカゲル(白色のゲル)がひび割れからにじみ出る場合もあります。
鉄筋やPC鋼棒がある場合には、それらに沿った形状でひび割れが発生します。曲げ鉄筋を使用している場合は、曲げ部分が断裂している可能性もあります。
長期的な反応も特徴の一つであり、建設後数年~数十年が経過した後にコンクリート表面ひび割れとして劣化が顕著化します。
4. 防止方法
アルカリ骨材反応を防止するために、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」にその対策が記載されています。
反応の抑制対策としては、
- 低アルカリ形ポルトランド セメントの使用,
- 高炉セメントあるいはフライアッシュセメントといった混合セメントの使用
- コンクリート のアルカリ総量の規制(3.0kg/m3以下)
があります。
さらに、骨材の反応性を試験する方法としては
- 化学法
- モルタルバー法
があり、試験結果が無害と確認された骨材を使用する必要があります。
5. 補修方法
補修方法は、「高アルカリの環境」、「反応性骨材」、「水の供給」のどれかひとつを取り除く必要があります。一般的には「水の供給」を防ぐことです。
既設の構造物から「高アルカリ」と「反応性骨材」を取り除くことは不可能なので、「水の供給」を抑制するのが一般的です。
補修工法としては
- 表面被覆工法
- 表面含浸工法
- ひび割れ注入工法
が挙げられます。
現在では、アルカリシリカゲルの吸水膨張性質を非膨張化に変えてしまう亜硝酸リチウムを用いた工法も普及してきました。
6. まとめ
“コンクリートのガン”とも言われているアルカリ骨材反応は、内部でゆっくりと進行していくため、外観では確認できません。気がついた頃にはひび割れが入り、そこから劣化が加速します。
そのため、見た目だけでアルカリ骨材反応と判断することは非常に難しいです。
さらに、気がついた頃には劣化がかなり進行しており、大規模な補修もしくは補強が必要となる場合があります。
しっかり調査をしなければ判定できないため、専門家による調査が必要です。
もし、亀甲状(マップ状)のひび割れやそのひび割れから白色のゲルを見かけた場合はコンクリートの専門家にすぐにご連絡下さい。