コンクリート構造物にコールドジョイントが発生すると、コンクリート表面に波を打ったような線が入り美観が損なわれるばかりか、その部分からひび割れが発生し水密性が低下してしまいます。また、そこから雨水や塩分が浸入し中の鉄筋を腐食させるため、耐久性にも影響します。
ここでは、コールドジョイントが発生した場合の構造物への影響とその防止策について説明したいと思います。
この記事でわかること
1. コールドジョイントとは
コールドジョイントとは、「先に打ち込んだコンクリートと後から打ち込んだコンクリートとの間が、完全に一体化していない継目」とコンクリート用語では定義されています。
また、「硬化した状態にあるコンクリートに接して、新たなコンクリートを打ち込む行為」を「打継ぎ」、「まだ固まらない状態のコンクリート上に新しいコンクリートを打ち足す行為」を「打重ね」と区別されています。
以上のことから、コールドジョイントは計画の段階で予定されていない不連続な面のことで、予め計画された打継ぎ目とは異なります。
2. コールドジョイントの発生要因
コールドジョイントの発生要因は、コンクリートを打重ねる前に打ち込んだコンクリートの硬化状態(凝結状態)にあります。これは、「コンクリートの配(調)合」、「コンクリートの製造・運搬」、「環境条件」、「施工方法」などによる影響が、後から打込むコンクリートを一体化させない要因となっています。
3. コールドジョイントが構造物に及ぼす影響
施工不良によるコールドジョイントが発生すると、水密性が低下し中性化を誘発させます。また、構造物のコンクリート強度も低下し、著しく耐久性が失われてしまいます。
3-1. 水密性について
コンクリート打ち込み後、比較的早い段階でコールドジョイントが発生した場合、水密性は特に低下します。水密性が低下すると漏水の原因となり、雨水などが浸入して内部鉄筋の腐食、アルカリ骨材反応を増長してしまいます。
3-2. 中性化について
通常コンクリートはpH12~13の強アルカリ性ですが、コールドジョイントが発生すると、その部分から大気中の二酸化炭素が侵入し、コンクリートの水酸化カルシウムと反応して徐々にアルカリ性が低下して中性に近づきます。この現象を中性化と呼んでいます。
コールドジョイント部から進行した中性化は、健全な部分と比較して2~3倍中性化速度が速くなります。そして、鉄筋周辺のコンクリートがpH11以下になると鉄筋に錆びが発生してしまいます。鉄筋は不導態皮膜と呼ばれる酸化皮膜で保護されていますが、コンクリートの中性化により皮膜が破壊されるため錆びが発生します。
鉄筋は錆びると約2.5倍体積が膨張し、周辺のコンクリートを破壊しひび割れや剥離の原因となります。一体化されていないコールドジョイントには特に悪循環な現象が発生することになります。
3-3. 強度について
コールドジョイントが発生した先打ちと後打ち部分の付着強度は低下してしまいます。この付着はモルタル同士の強度で、外気温やコンクリート温度が高いほど、また、打重ね時間間隔が長いほど、形状が水平よりも角度が上がるほど低下します。さらに発生部の付着強度の増進はほぼ期待出来ません。
4. コールドジョイントの防止対策
コールドジョイントの防止対策としては、「施工計画」、「凝結時間の調整」、「打重ね時間間隔の遵守」の3つが考えられます。
以下にこれらの対策について説明します。
4-1. 施工計画
外気温が高くなると予想される施工時期や打重ね時間間隔が長くなると予想される場合など、コールドジョイント発生の恐れがある場合は、コンクリートの打込み開始時間やコンクリートの配合を検討するなどの計画が必要です。また、運搬車の配車時間を適切に管理し、コンクリートの練り混ぜから打ち込みまでの時間を極力短くすることも大切です。
4-2. 凝結時間の調整
コンクリートの凝結時間は、遅延形の混和剤を使用することで遅らせることが出来ます。また、混和剤の添加量を調整することで、コンクリートの凝結時間を容易にコントロールすることが出来ます。
ただし、コンクリートの凝結時間を遅らせることは、型枠の側圧が大きくなり、仕上げ時間や型枠の脱型時期が遅れるため、注意が必要となります。
4-3. 打重ね時間間隔の遵守
打重ねの一体化に大きく影響する、下層コンクリートの凝結性状は、プロクター貫入抵抗値にて評価することが出来ます。
土木学会コンクリート委員会のコンクリートのコールドジョイント問題小委員会では、コールドジョイントを防止出来る下層コンクリートの凝結の上限はプロクター貫入抵抗値で0.01~1.0N/㎜2の範囲とされています。
また、日本建築学会では、プロクター貫入抵抗値の上限を0.50N/㎜2とし、かつ運搬時間を1時間と見なして、一般の場合の打重ね許容時間の目安を、外気温25℃未満の場合に2.5時間以内、25℃以上の場合に2.0時間以内と定めています。
実際の施工現場では、部材の寸法、コンクリート温度、配合、風の強弱、日射条件、運搬時間等が相違し、コンクリートの打重ね面の状態も異なりますので、打重ね許容時間を設定する場合は多少安全側で設定するのが好ましいとされています。
5. コールドジョイントの補修方法
コールドジョイントの補修方法には、発生状態で様々な方法があります。ここでは、軽微な状態のコールドジョイントと重度な状態のコールドジョイントの一般的な補修方法を説明します。
5-1. 軽微のコールドジョイント
軽微な状態のコールドジョイントでも、目視で下層と上層の継目の色が違うことは、はっきり確認出来ると思います。ただ、縁切れがはっきりと確認できない場合は、一般的にポリマーセメントモルタルをはけ塗りして対処します。
5-2. 重度のコールドジョイント
縁切れが確認出来る重度のコールドジョイントは、漏水など耐久性に問題が発生しますので、ひび割れの補修に準じて行うことが良いと思います。
一般的な補修方法は、まず内部側のコールドジョイント部をUカットし、そこにシーリング材を充填します。次に外部側からエポキシ樹脂接着剤を注入して行う方法があります。
6. まとめ
コールドジョイントは、環境条件などによっては耐久性に関わる様々な不具合を引き起こす原因となり、また、補修費用や工程の遅れなどが発生します。重度な状態のコールドジョイントを防止するためにも、適切な計画や施工を実施することが大切です。