コンクリートの表面気泡はなぜできる?発生メカニズムを解説

コンクリート構造物を造る際、型枠を建込み、その中に鉄筋を張り巡らせて、コンクリートを流し込み、バイブレーターなどで締固めを行います。気泡やあばたのないコンクリート、すべすべして緻密に見えるコンクリートを皆さんが求めるのは確かなことです。

しかし、気泡の全く無いコンクリートをつくるのは、大変難しいのです。ここでは、気泡の発生の要因ときれいな肌面を得るための対策について述べてみたいと思います。

Basilisk
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1. 型枠による影響

コンクリート型枠の材質には、木製(コンパネ)と鉄製(スチールフォーム)があります。以前は軽量であることからアルミ製型枠もありましたが、今はあまり見かけなくなりました。ここでは木製と鉄製の型枠について述べてみたいと思います。

コンクリートと型枠の接する面、界面の性質が重要になります。コンクリートは水で練り混ぜられています。よって、水に親しむ親水性といえます。親水性の界面を持ったコンクリートは、親油性の界面を持った型枠に打設されるとスムースに脱型する事が出来ます。

しかし、油を塗った面に水を垂らすと、その表面張力で丸い水滴が出来ます。これは硬化後気泡として残ります。

1-2. 木製型枠(コンパネ)

コンパネは、無垢のままだと親水性で、樹脂塗装を施すと親油性の界面と言えます。よって、無垢のコンパネには、水を吸水するという性質もあるのでほとんど気泡は残りません。

しかし、親水性であるがゆえに、コンクリートがよくくっつき脱型が難しいのです。そのため、コンクリート剥離剤など塗布して、親油性に界面を変えて、その問題を解決しています。

また木から出る糖分などでコンクリート表面が赤く着色したり、糖分による硬化遅延で荒れた表面になってしまいます。そこで樹脂塗装コンパネが一般的になっています。

もう一つの要因として、樹脂合板界面の滑らかさがあります。摩擦係数が小さければ気泡(この時点では水泡も含まれます)は軽いので上にあがりやすく、抜けやすいのです。

1-3. 鉄製型枠(スチールフォーム)

スチールフォームは、鉄面がそのままであれば親水性です。しかし、コンパネのところで述べたように、親水性のコンクリートと親水性のスチールフォームは脱型が難しいので、コンクリート剥離剤を塗布する必要があります。

表面の平滑さ、その剛性によりコンクリート打設時の圧力を受け止め逃がさないという点でスチールフォームの方が奇麗な仕上がりが期待できるのです。

2. 離型剤による影響

コンクリートを打ち込む前に、型枠にはコンクリートがはがれやすくなるように離型剤を塗布します。離型剤には油性と水性があり、油性離型剤は親油性、水性離型剤は親水性です。

2-1. 油性離型剤

離型効果が高いのは油性離型剤ですが、反面気泡が残りやすいと言われています。し

かし、油性離型剤にも気泡を消す工夫がされています。植物性の油脂と界面活性剤を適量加えているのです。生コンクリートから出るアルカリとこの油脂が反応して金属石鹸を作ります。界面活性剤はこの反応を手助けする役割があります。生成された金属石鹸は、型枠とコンクリートの界面で、型枠側を少し親水性に変えます。

石鹸を塗った鉄の面に水を垂らすと、水の表面張力は低下し、丸い水滴は出来なくなる事は、皆さんもよく知っている事です。これによって、生コンクリートの界面と型枠の界面を最小にし、気泡を消すのです。脱型した後の型枠面に拭うとすぐ落ちる白い粉を見かけると思います。これが金属石鹸です。

2-2. 水性離型剤

水性離型剤は希釈の媒体が鉱油ではなく水であるところが違いです。

しかし、水性といえども、あまり多く塗布してしまうと、コンクリートの練り混ぜ水に混じり合って、色むらの原因になります。水性離形剤は連続相が水でその中に油脂が分散した乳液です。

ハンドクリームを手に塗った時、ハンドクリームは水に溶けますが、手に薄く伸ばす水をはじきます。適量に塗布された水性離型剤は、水分の蒸発によって、乳化が転送し連続相が油脂に替り、薄い油脂の被膜いわゆるワックスが型枠面に出来ます。

そのワックスは親水性と親油性の両方をバランスよく持っており、離形性と美観性のバランスを取っています。

3.  コンクリートの塑性(粘性)の影響

最後は生コンクリートの塑性です。いわゆる粘性です。

型枠に水やオイルを流し込めば水と型枠の界面には気泡は残りません。生コンクリートは密度の違う材料が混ざり合っています。練り混ぜという工程や打設の際、コンクリート内部に空気は巻き込まれます。その空気、気泡は、当然軽いですから上に上がろうとします。

しかし、これは逆で重いものが下に下ろうとするから軽い空気は上に上がるのです。練り混ぜられたコンクリートは四つの部分に分けることが出来ます。粗骨材(砂利)、モルタル(セメントと砂)、水それに空気(連行空気と巻き込み空気)です。

密度は砂利、モルタル、水、空気の順です。砂利とモルタルそして水が上下に密度の違った階層作ってしまう事を分離といいます。分離すると余分な水が上部に浮き出します。これをブリーディングといいます。連行された空気は、その大きさは大体20-200μ程度と微細で、二重の強い膜で囲われているため、空気泡の中に水は侵入できません。

適正量の空気量を持ったコンクリートには数億個の微細気泡がモルタル部分に含まれ、それぞれが独立しているのでそれぞれ等間隔を維持するため、表面には現れません。ここで問題になるのは巻き込み空気です。

3-1. 巻き込み空気の影響

巻き込み空気は、独立した空気泡ではなく、連続した細孔です。余分な水があると気泡の中に水が浸入し、浮力を下げてしまいます。

浮力の下った気泡(水泡)は、上に移動しないで振動するバイブレーター側に移動します。内部振動であれば内側に、外部振動であれば型枠側にモルタルの中を粗骨材(砂利)の底面を這って移動します。

型枠表面に到達した気泡(水泡)は、時間とともに生コンクリートのスランプの低下とともに行き場を無くしその場に止まり、気泡として表面に残ります。

ブリーディングを無くすという事は、余分な水が浮かない、すなわちモルタルや砂利が沈まないという事です。流動性が良く、粘性が低いが分離のないコンクリートを練り混ぜれば、きれいな肌面のコンクリートは自然と得られるのです。

3-2. バイブレーターの影響

生コンクリートの塑性、粘性とバイブレーターの強さとその掛け方は、きれいな肌面のコンクリートを得るために重要な関連があります。それは殆ど現場の職人の経験と感覚で決められているようです。バイブレーターの強さと掛ける時間は、生コンクリートの流動性、粘性に反比例するのは感覚的理解できる事です。

まとめ

コンクリートの表面は、すべての要因を上手くバランスされる事で気泡のない滑らかな美しい表面が得られます。型枠の素材、形状、配筋の緻密さ、コンクリートの流動性、打設方法、温度、天候、剥離剤、混和剤、コンクリート配合など考える要因を十分考える事が大切です。

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