コンクリート診断士は公益社団法人 日本コンクリート工学会(JCI)が認定する民間資格です。
コンクリート構造物の診断・維持管理に関する知識と技術を問われる資格で、受験に際しては2日間の講習をあらかじめ受けることが必須とされています。
有資格者に対する社会のニーズは高く、特にコンクリート構造物の診断・調査を手がける企業やコンクリート構造物のメンテナンス、リニューアル工事を手がける企業などに有資格者が数多く在籍しています。
この記事でわかること
1. 資格の概要
「コンクリート診断士」はコンクリート構造物の診断や維持管理に関する幅広い知識をもった技術者を養成し、社会に貢献することを目的として創設されました。
日本コンクリート工学会が実施する講習会を受講し、さらに試験を合格することによって相応しいレベルのコンクリート診断・維持管理の知識・技術を保有していると認められ、登録した者に与えられる称号です。
コンクリート技士・主任技士などのこれまでのコンクーリート関連の資格が、新規の構造物に使用するコンクリートの設計・製造・施工を主としているのに対し、コンクリート診断士は既存のコンクリート構造物を対象とするところに特徴があります。
創設は2001年。主催は公益社団法人 日本コンクリート工学会(開設当時は社団法人日本コンクリート工学協会)です。
2. 資格の評価
コンクリート診断士は以下のように評価されています。
・国土交通省の業務発注
国土交通省が建設コンサルタント業務を発注する際に使用する「建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン」の平成27年11月の改訂に際し、技術者資格等の区分内で技術者資格の評価対象となっています。
※参考:建設コンサルタント業務等におけるプロポーザル方式及び総合評価落札方式の運用ガイドライン
・一部の都道府県の発注工事
a) 橋梁、浄水場、汚水処理場等のコンクリート構造物初期点検委託業務の「点検の実施体制」の項には、「コンクリート診断士を有する者を責任者として1名以上配置する」との記述があります。
また「橋梁長寿命化修繕計画策定業務委託」において「コンクリート構造物診断技術者として、コンクリート診断士を必須とする」と明記されています。
b) 簡易プロポーザル方式の補修工事における「技術提案書の特定」をする際の技術者評価において、設計技術者資格(管理技術者)、施工技術者資格(主任技術者又は監理技術者)に対して、コンクリート診断士の資格がある場合に評価(加点)されています。
また、総合評価落札方式等における技術資料作成において、「コンクリート診断士の資格を評価」と明記されています。
・土木学会
2012年制定コンクリート標準示方書「基本原則編」において、用語の定義内でコンクリート主任技士、コンクリート技士およびコンクリート診断士が明記されています。
3. コンクリート診断士に求められる知識
コンクリート診断士には、コンクリートに関する耐久性のうち、特に劣化を診断するので、構造の知識はもとより、測定箇所の選定にいたるまでありとあらゆる知識が求められます。
当然、コンクリートの基礎知識は必要です。
試験項目は概ね以下7つです。
a) 変状の種類と原因
b) 劣化の機構
c) 調査方法
d) 劣化の予測・評価および判定基準
e) 対策の種類、補修・補強工法
f) 建築物あるいは土木構造物の診断の考え方・調査方法
g) 技術および基準類の変遷
4. 有資格者数
2017年4月1日現在 12,358名 です。
5. 出題形式
四択式問題 40題
記述式問題 2題(1000字程度および1000字以内)
です。
6. 受験者数と合格率
約5400名が受験し、合格率は15%程度です。
7. 受験日程
コンクリート診断士の受験には講習会の受講が必要です。
講習会の受講申込期間は1月上旬~下旬
受験願書の販売・受験申し込み期間は4月上旬~5月上旬
試験日は7月下旬です。
※年により変わりますので、注意しましょう
8. まとめ
世の中に膨大な量がある「コンクリート構造物」は時が過ぎるに連れ劣化します。
しかし、コンクリート構造物の健全性を適切に評価・措置することで、構造物としての寿命を延ばすことは可能です。
「コンクリート診断士」はコンクリート構造物の診断・維持管理に関する幅広い知識を持った技術者です。
「新設」から「維持」へと新たなニーズが産まれる中で、活躍の場がより広がりつつある「コンクリート診断士」の取得を目指してみてはいかがでしょうか?
※参考引用:http://www.jci-net.or.jp/j/exam/shindan/index.html
公益社団法人 日本コンクリート工学会
2017年度コンクリート診断士試験のご案内(PDFファイル)