コンクリートの耐久性とは、時間の経過とともに起こる性能や機能の低下に対する抵抗性のことを言います。コンクリートの耐久性は、コンクリートの劣化の状態に大きく影響されます。
そして、コンクリートの劣化はふたつの要因に分けることができます。
- ひとつ目には、塩害、中性化、アルカリ骨材反応等の科学的な要因
- ふたつ目には、凍結融解作用、すりへり作用、乾燥収縮、化学的侵食、施工不良などの物理的な要因
が考えられます。
しかし、実際の劣化現象の多くは複数の劣化作用が複合され進行していくことが多いと言われます。以下に、劣化の現象について簡単に説明していきます。
この記事でわかること
1. コンクリートの耐久性が低下する「科学的」な要因
1-1. 塩害
塩害とは、コンクリート中に進入した塩分の塩化物イオンが、酸素や水と反応を起こし内部の鉄筋を腐食膨張させて、コンクリートの劣化を進行させていくものです。
鉄筋が腐食膨張すると、コンクリートに引っ張る力が働き、やがてコンクリートがそれに耐えられずひび割れが生じます。
塩化物イオンとは、水に溶けてしまっている塩化物の塩素分のことで、水中で分解されたり沈殿することなく水中にとどまっている物質のことです。
1-2. 中性化
中性化(ちゅうせいか)とは、コンクリートの表面から内部に向けて少しずつアルカリ性から中性に変化していく現象です。
コンクリートに使用されている材料のセメントは、非常に強いアルカリ性で出来ています。そのため、普段はコンクリートの内部は強いアルカリ性で保たれています。
しかし、外部からの炭酸ガスの進入により内部がアルカリ性から中性に変化し、ここでコンクリートにひび割れが入ると、そのひび割れから進入してくる酸素と水によって、鉄筋の表面を保護している被膜が失われ腐食が始まり鉄筋に錆が発生し始めます。
1-3. アルカリシリカ反応
アルカリシリカ反応とは、一部の砂や砂利に含まれる反応性の高いシリカという成分がセメント中のアルカリと反応してゲルという物質に変化、そのゲルが吸水することで異常膨張し内部に膨張圧を引き起こし、コンクリートに無数のひび割れを発生させます。
2. コンクリートの耐久性が低下する「物理的」な要因
2-1. 凍結融解作用
凍結融解作用とは、コンクリート中の水の一部が凍結や融解を繰り返すことによりコンクリートがだんだんと劣化していく現象です。
水は凍結して氷になると、約10%体積膨張しますが、水の凍結による体積の膨張を吸収する隙間がコンクリート中に十分に無い場合、その膨張する圧力でひび割れが発生します。
2-2. 表面の磨耗および衝撃
コンクリートで出来た水路などは、水の摩擦により表面の部分がだんだんと削られて砂利が露出し始め、やがては剥離して断面が欠損して行きます。
また、衝撃により表面が破損し欠損していく場合もあります。
2-3. 乾燥収縮
乾燥収縮とは、コンクリートが乾燥していく時、収縮により体積が減少する現象です。
乾燥収縮を起こす要因は、水、セメント、砂や砂利とコンクリートを形成しているすべての材料に影響されますが、一般的にセメント、水の量が多いほど大きくなります。
また、使用している砂や砂利が乾燥することによって起こる収縮もコンクリートの収縮率に大きく影響を与えます。
2-4. 化学的侵食
化学的侵食とは、外部から侵入する物質とセメントが化学反応を起こし、コンクリートを膨張、ときには破壊させたりする現象です。
劣化の現象を進行させる物質として、酸、動植物油、塩類、腐食性ガス、炭酸ガスなどがあります。
2-5. 施工不良
いくら良いコンクリートで打ち込んでも、施工に問題があるとその後の劣化を進行させる要因となります。施工不良となってしまう要因としては、以下のようなことが考えられます。
①打ち込み時の締め固め不足
コンクリートを型枠に打ち込む時の締め固め不足は、コンクリートの密実性が失われ、耐久性に大きく影響を与えます。
②打ち込み時の過剰な振動締め固め
打ち込み時に過度な振動を与えると、コンクリートが分離してしまいます。
コンクリートの分離とは、砂利が型枠の下に沈み、上部はセメントと水、砂で出来たモルタルだけになってしまう状況となってしまいます。
これも後々コンクリートの耐久性を損なうひとつの要因です。
③打ち込んだ後の養生不足
冬季にコンクリートを型枠に打ち込んだ後、初期の段階で凍ってしまうと強度にも大きな影響を与えます。夏季においては乾燥による収縮により、有害なひび割れを発生させることがあります。
3. コンクリートの耐久性を高めるためには?
ここまでコンクリートが劣化していく、つまり耐久性を低下させる要因について説明してきましたが、それではコンクリートの耐久性を高めるためには、どの様な事が重要になってくるのでしょうか。
3-1. コンクリートの品質
①鉄筋が中に入っている建物に、塩分を多量に含んだコンクリートを使用してはいけません。鉄筋を腐食膨張させ、有害なひび割れを発生させます。
②アルカリシリカ反応性の高い砂や砂利を使用している場合は、セメントの種類を混合セメントに変更することで、アルカリシリカ反応を抑制できます。混合セメントとは、普通セメントに製鉄所から排出された産業副産物を混合したセメントや、普通セメントに火力発電所から排出された石炭灰を混合したセメントなどがあります。
③適度な空気量が入ったコンクリートを使用しなければなりません。水が氷になった時、空気の粒が体積の膨張を吸収し、凍結融解作用に抵抗力の高いコンクリートになります。一般的な環境では、コンクリート中に3%以上の空気量が必要であると言われています。
3-2. 施工方法
コンクリートを型枠に打ち込む時には、適度な振動を与え、全体が均一になるようにしなければなりません。全体が均一になることで、密実性を増し、中性化や科学的侵食、磨耗、衝撃に強いコンクリートになるのです。
3-3. 打ち込み後の養生
コンクリートは固まった後に乾燥状態が続けば、強度の伸びは早めに止まってしまいます。合わせて乾燥による収縮も大きくなり、ひび割れの発生を高めることにもなります。その為、特に夏季には水分の補給が必要となります。
また、気温の低い冬季には、初期の段階で完全に凍ってしまうと凍結膨張によりコンクリートに大きなダメージを与えると共に強度の伸びは、ほとんど無い状態となってしまいます。その為、特に環境がマイナス温度の場合は、加熱による養生が必要です。
一般的には、最低5℃で3日間の加熱保温養生が必要であると言われています。
4. 最後に
コンクリートの耐久性を高める為には、コンクリートの性質を良く知ること、また、製造、打ち込み、養生のどの工程においても手抜きをしないことが最も大切なことなのです。