中性化とは、普段は高アルカリ性で保たれているコンクリートが中性になっていく劣化現象です。
排気ガスや室内の二酸化炭素が内部に侵入し、コンクリートのアルカリ性を示す成分である水酸化カルシウムと反応して、炭酸カルシウムを生成し中性化が進んでいきます。
コンクリートの中性化進行を調査する方法として、はつり法、コア法、小径コア法、ドリル法などがあげられます。
この記事では、中性化試験の方法と中性化による劣化の対策案をご紹介いたします。
この記事でわかること
1. コンクリートの中性化とは
中性化(ちゅうせいか)とは、高アルカリ性(pH12以上)であるコンクリートのpHが下がり中性になっていく劣化現象です。
硬化直後のコンクリートは、セメントと水の水和反応によって作られた水酸化カルシウムにより高いアルカリ性を維持しています。
しかし、排気ガスや建物の室内において二酸化炭素が内部に侵入していきます。その二酸化炭素が水酸化カルシウムと反応して、炭酸カルシウムを生成します。アルカリ性を示す水酸化カルシウムが減少するため、pHの低下が起こります。
コンクリートのpHが低下すると、鉄筋が錆びることを防止する役割のある不動態皮膜が破壊されてしまいます。それが破壊されてしまうと鉄筋の腐食がはじまり、その腐食膨張圧でひび割れが発生します。
コンクリートにひび割れがはいると、その箇所から劣化がさらに進行し、構造物の性能が低下してしまいます。
2. コンクリートの中性化の試験方法
中性化は、コンクリート表面から内部に向かってアルカリ性を失っていく現象です。そのため、表面から深さ方向にアルカリ性を示す反応物がどこまであるかを調べます。
アルカリ性を調べる方法としては、フェノールフタレインを噴霧し、着色した色で判別する方法があります。
- 赤紫色 : 中性化していない部分
- 着色しない部分 : 中性化している部分
といった違いがあります。
着色しない部分はpHがおおむね8以下となっている部分で、アルカリ性は失われてしまっています。
このような中性化した部分が鉄筋まで達していると、鉄筋の不動態皮膜は破壊され、鉄筋腐食が始まる段階にあります。
実際の構造物に対して中性化深さを測る方法は、はつり法、コア法、小径コア法、ドリル法の4つがあります。
2-1. はつり法
はつり法は、電磁波レーダー法などで鉄筋位置を把握した後にはつり箇所を決定し、コンクリートを数十㎝はつり試験をおこないます。鉄筋の位置まではつることが多いため、鉄筋の腐食状態の確認も行うことができます。
はつり法としては、角形、十字形、L形などがあります。はつりの方法としては、手ばつり、電動ピック、エアーピックなどがあります。
対象となる部材の場所では、粉じんの飛散防止対策を行う必要があります。
作業手順
- 電磁波レーダー法などで鉄筋位置を把握後、はつり位置の決定
- はつり作業
- コンクリート粉の除去
- フェノールフタレイン溶液の噴霧
- 中性化深さの測定
2-2. コア法
コア法は、電磁波レーダー法などで鉄筋位置を把握した後に、コアを採取し中性化試験を行います。コアの直径は使用する粗骨材によって異なります。
中性化試験は、割裂面にフェノールフタレイン1%エチルアルコール溶液を噴霧し、赤紫色に呈色した位置から中性化深さを測定します。
作業手順
- 電磁波レーダー法などで鉄筋位置を把握後、コア採取位置の決定
- コア採取
- コアの割裂
- フェノールフタレイン溶液の噴霧
- 中性化深さの測定
2-3. 小径コア法
小径コア法は、コア法と作業手順が一緒ですが、採取するコアの大きさがφ25㎜程度と小さいです。
それによるメリットは、
- 配筋が密な場合、鉄筋を誤って切ってしまう可能性が低い
- 構造物に与える損傷を軽減できる
- コア採取部の埋め戻しが容易
などが挙げられます。
2-4. ドリル法
はつり法やコア法などは、精度は良いですがはつりやコア抜きをおこなうため、構造物の耐力低下を引き起こす可能性があります。一方、ドリル法は、本非破壊検査協会より直径10mmのドリルの削孔粉を使用した試験方法が提案されています。そのため、構造物への影響の軽減、コスト削減や作業性の向上に期待できる工法です。
作業手順
- 壁⾯に直⾓を保持し、電動ドリルで削孔(直径10mm)を行います。
- フェノールフタレイン溶液をしみこませた試験紙をゆっくり回転させながら削孔粉を捕集します。
- 試験紙が⾚紫⾊に変⾊したら、削孔を⽌め、中性化深さを測定します。(ノギスのデプスバーを使⽤)
3. 中性化進行の予測
コンクリート構造物を対象に中性化試験を行い、現時点の中性化深さを測定することが出来れば、今後中性化がどのような速度で進行していくか予測することができます。
コンクリートの中性化は、一般的に√t則と呼ばれる法則に従うことが知られており、中性化深さと経過年数の関係は下のような式で表されます。
この式に、実際に測定された中性化深さと、測定時の建設からの経過年数を代入することで中性化速度係数αを導くことができます。
中性化深さCを、コンクリート表面から鉄筋位置までの深さ(かぶり厚さ)にすることで、被り厚さまで中性化深さが達する年数を予測することができます。
4. 中性化によるコンクリートの劣化対策
中性化による劣化が進行しているコンクリート構造物の補修にあたっては、中性化の進行具合により選ばれる工法が異なりますが、以下のような対策が取られます。
CO2浸透の低減
ひび割れへの樹脂注入や、コンクリート表面を補修材で被覆したりコンクリート組織を緻密化させる液剤を含浸させることで、外部からの劣化因子の浸透を遮断します。
アルカリ性の回復
中性化によってアルカリ性を失った部分をはつり取って除去し、補修用モルタルで断面修復したりコンクリートで打ち換えたりすることで、鉄筋廻りのアルカリ性を回復させます。
また、電気的にアルカリ液を浸透させることでアルカリ性を回復させる工法(再アルカリ化工法)が採用される場合もあります。
鉄筋の錆びの抑制
鉄筋の不動態皮膜を再生させる液剤を注入または含浸させたり、鉄筋に電流を流して腐食反応を電気化学的に制御し、腐食の進行を抑制する工法(電気防食工法)などの工法があります。
5. 【まとめ】中性化の可能性
中性化はコンクリート表面から二酸化炭素が浸入することによって発生します。発生しやすい場所としては、排気ガスがかかる壁高欄や二酸化炭素濃度が濃くなる室内のコンクリート壁です。中性化は徐々に進行するため、建設後すぐに中性化で劣化する可能性は低いです。しかし、建設後数十年経過していれば中性化が発生している可能性があります。
また、「コンクリートはなぜアルカリ性(12〜13pH)?中性化すると危険な理由」こちらの記事でコンクリートのアルカリ化に関する内容を解説しているので、合わせて参考にしてください。
気になることがあればコンクリートの専門家へご連絡下さい。