現在、日本全国には約3,500の生コン工場があり、年間約8,000万立方メートル超が生産されています。この生コンクリートの製造及び販売には、生コンクリート協同組合という組織が密接に関係をしています。

この記事では、生コンクリート協同組合の成り立ちや社会的な役割について解説していきます。

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1. 生コンクリート協同組合とは?

生コンクリート協同組合とは、中小企業等協同組合法に基づく法人であり、その構成企業の大多数が中小企業であることから独占禁止法のカルテルから除外され、地域別に協同組合を組織して製造や販売を行うことが認められています。

この協同組合には、全国的な組織として「全国生コンクリート協同組合連合会」があり、その下部組織として、全国各地に254の協同組合と3県の協同組合連合会が組織されています。

2017年3月末現在、この協同組合と協同組合連合会には全国の生コン工場の約64%が加入しています。

1-1. 共同販売事業

生コンクリート協同組合(生コン協組)の特色のひとつに、共同販売事業(共販)があります。

各地区の生コン協組ごとに、需要家(ゼネコン)からの工事単位での発注に対して年間シェアに応じて組合員である加盟社に割り当てを行い、協組が販売を仲介します。

この共同販売の仕組みにより、その協組が管轄する地区ごとに生コンの販売価格は異なり、その価格差には地域ごとの需給量の差や協組の組織力が反映されるようです。

1-2. アウトサイダー

生コン協組に加盟せず、自ら受注・販売を行う企業も存在し、業界では非組合員(アウトサイダー)と呼ばれます。

アウトサイダーは一般的に協組価格より安く生コンを販売しています。

需要家は必ずしも共販を行う生コン協組から購入する義務はありませんが、生コンの安定供給や品質確保の面から協組を通じた購入が主となるようです。

2.  生コンクリート協同組合の歴史

生コンクリートは、時間経過とともにセメントと水の水和反応が進み品質変化が変化していく性質材料であるため、日本工業規格(JIS)で運搬時間を1.5時間以内と制限されています。

従って、工場からの供給範囲は他産業に比べ極端に狭くなることから、生コン製造業は必然的に地域密着産業となります。

他にも、生コン製造業の特色として、経済産業省の「生コンクリート製造業の集約化に関する調査・検討報告書」では以下の点が挙げられています。

  • 製造開始から品質変化が始まり、固化する製品のため在庫ができないこと
  • 顧客との間に価格形成力の脆弱な産業であること
  • 品質差別化の難しい業種であること

これらの特色は、日本で生コン製造業の始まったおよそ70年前からほぼ変わることがありません。

このような業態から、経営の安定化のために、生コン製造業者は建設業界との価格交渉などを目的として次第に組織化を進め、昭和38年には最初の生コン協同組合である「中央生コンクリート事業共同組合」が設立されました。

その後、昭和40年に岐阜県生コンクリート共同組合が共販を始めました。これが最初の生コン共同組合共販であったと見られます。

そして、昭和43年に全国生コンクリート協同組合連合会が設立され、現在に至ります。

3.  生コンクリートの協同組合の社会的な役割

生コン協組の大きな役割としては、共販事業を主とした経済活動の実施やその指導が挙げられますが、そのほかにも様々な周辺事業を行っています。

次からは、生コン協組が行う事業についてお話していきます。

3-1. 輸送の共同化

生コン協組では、ミキサー車の稼動率の向上や効率的な配車を目的として輸送の共同化を事業として進めている地区があります。

この輸送の共同化には様々な形態がありますが、協組で一定台数のミキサー車をチャーターし、組合員が共同で活用するというやり方は比較的上手く行っているようです。

東日本震災後の復興事業でミキサー車が不足した際は、宮城や福島県内の生コン協組でこのやり方を取り入れ需要に対応したそうです。

3-2. 合理化・集約化

バブル経済の崩壊以降、全国の生コン出荷量は多少の増減はあれど減少傾向が続いています。

生コン需要は共販制度のもと組合員に割り振られますが、限られたパイを分け合うにも限界があり、供給過剰を野放しにしては工場あたりの出荷量が減ることから、生コン業界も工場の統廃合を軸とした構造改善事業に取り組まざるを得ませんでした。

生コン協組では、今後の需要予測に合わせてプランを立て、数工場を1工場に集約する方法や共同出資会社を設立して共同操業する方法などにより、協組内での工場の集約化を進めています。

4. 生コンクリート協同組合は消費者にどのような影響を与えているのか?

生コン協組が一般の消費者に与える影響には、直接的なものとしてはありませんが以下の3点ほどが挙げられます。

①生コン供給の安定

生コンの発注は組合員の工場に割り振られ契約となりますが、注文日に契約工場の出荷が一杯で対応不可能な場合などは、代理納品(代納)という制度により組合員の他工場より納品を受けられる場合があります。

また、組合員は相互にミキサー車の貸し借りを行っている場合が多いので、運搬車不足による納品受け付け不可といったケースは少ないと考えられます。

②品質の安定

生コン協組と並び、生コン業界の全国組織として「全国生コンクリート工業組合連合会」があり、組合企業向けの品質管理指導や教育などの活動を行っています。

また、工業組合連合会に加盟している工場は毎年品質監査を受けることが義務付けられており、日々品質の安定化と技術の研鑽に努めています。

③地域貢献活動

全国には、大規模災害時などに工場で保有するミキサー車を消火用の水の供給用に活用することで地域に貢献する活動を行っている協組があります。

他には地元自治体や工事業者を対象とした技術講習会の開催や学校からの工場見学や研修の受け入れ、道路清掃などの貢献活動を行っています。

5. まとめ

生コンクリート協同組合の成り立ちとその役割についてまとめてきました。

日ごろあまり名前を聞く機会もなく、活動の内容もなかなか伝わってこない生コン協組ですが、社会への貢献と生コン業界の持続可能な発展のため今後とも様々な活動を行っていくようです。

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