コンクリート構造物は建設して終わりではなくて、補修・維持管理を適切に行うことで、健全な状態を保つことができます。

この記事では、コンクリート構造物の劣化調査をする必要性と、劣化調査の方法、専門家ではない人でもできる調査の方法についてお伝えします。

Basilisk
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1. なぜコンクリート構造物の劣化調査が必要なのか

コンクリートはビルやマンション、橋、ダムといった形で我々のくらしを守り、形づくっています。

これらのコンクリートは本来、適切な材料を選び、配合して適切に施工されることで密実かつ堅牢な組織を作り、風雨による浸食や、寒さによる凍結、地震にも耐える大変丈夫な構造物となることができます。

しかし、残念ながら日本では1960年代から1970年代にかけての高度経済成長期に建設された構造物が、早期に劣化しはじめたことが社会問題となりました。

この年代は、東京オリンピックや大阪万博といったビッグプロジェクトが重なり、それに合わせた首都高速道路や山陽新幹線の開通といった社会基盤の整備が大変急がれた時期でした。

急速なコンクリート需要の拡大は、材料となる砂や砂利の枯渇をもたらし、品質の悪い材料(未洗浄の海砂など)が使用される原因となりました。

また、コンクリートポンプ車を用いた急速大量施工の発達によって、短い期間で数多くの社会基盤整備を成し遂げることができましたが、施工のスピード化を意識するあまり、施工品質がおろそかになっていたことも早期劣化の原因と考えられます。

時代とともにコンクリートに使われる材料や配合、施工に関する基準は見直され、近年では造られて間もないコンクリート構造物の早期劣化が叫ばれることはほぼ無くなりました。

ですが、適切に配合、施工されたコンクリートも、年月とともに必ず劣化していきます。

劣化したコンクリートを調査することで劣化の原因や進行具合を把握し、適切な補修や維持管理を行うことによってコンクリート構造物は健全な状態でいられるのです。

2. コンクリート劣化調査の方法

コンクリートの劣化原因や進行具合の調査には、特殊な機材を使用しない簡易な調査と、機材を使用する専門的な調査があります。

一般的には目視調査や打音検査といった簡易な調査で劣化の原因を推定し、劣化の進行具合を調査するには専門的な機材が必要になります。

2-1. 目視調査

目視調査はコンクリート表面の損傷や劣化の状況、構造物全体の変形、周辺の環境状況などを目で見て観察したり、簡易な器具を使って状態を把握したりする調査方法です。

ひび割れの幅をクラックスケールの目盛りと照らし合わせて測定する調査や、コンクリート表面の剥がれの観察、構造物全体の傾きや沈下などの変形を観察することが目視調査に含まれます。

2-2. 打音検査

コンクリート表面をハンマーで軽く叩く調査方法で、その叩いたときの音質でコンクリートの表面近くの劣化状況が把握できます。

「コツコツ」といった高音の箇所は健全で問題ありません。一方、低い音がする箇所にはコンクリートの浮きやはく離、空洞などが生じています。

2-3. コア抜き調査

円形のドリルでコンクリートに穴を開け、直径7.5cm~10cm、長さ10cm~20cm程度の円柱型のコンクリートサンプル(コンクリートコア)を取り出す調査です。

取り出したコアは、強度の測定や劣化原因の調査、劣化進行具合の調査などに使われます。

2-3. 非破壊検査

専門的な機材を用いることで、コンクリートを壊したり傷めたりすることなくコンクリート内部の欠陥やひび割れの深さを調査したり、コンクリート強度を推定したりすることができます。

非破壊によるコンクリート内部や表面調査方法には、超音波を用いる方法やサーモグラフィ、電磁波、X線などを用いる方法があります。

また、コンクリート強度は、リバウンドハンマー(テストハンマー)という機材を用いて、コンクリートを壊さず推定することができます。

3. コンクリートの劣化調査は専門家ではなくてもできるのか

特殊な機材を使用しない、目視調査や打音検査であれば専門家でなくても行えます。

ひび割れが気になるようであれば、クラックスケール(ひび割れ幅を測定する定規)を使ってひび割れ幅を測定してみましょう。

建物の環境条件などによりますが、一般的にはひび割れ幅が0.3mm以下であれば、特に建物の性能上問題はないと言われます。

(ちなみにクラックスケールは大きなホームセンターなどで購入できます)

また、小さなハンマーなどで打音検査をすることで、コンクリートの浮きやはく離といった欠陥部分を見つけることもできます。

目視や打音で気になる箇所がある場合は、専門家に相談するのもよいでしょう。

コンクリートの劣化に精通した専門家は、こんな資格を持った方たちです。

  • 資格名 - 認定団体
  • コンクリート診断士-公益社団法人 日本コンクリート工学会
  • RCCM(シビルコンサルティングマネージャ)-一般社団法人建設コンサルタンツ協会
  • 一級建築士-国家資格

4. 調査費用について

専門家に調査を依頼する際には、調査費用が必要になります。

調査費用は、調査する建物の規模や依頼する会社や組織によって幅がありますが、簡易な目視調査のおおよその目安は以下のようになるようです。

  • 簡易な目視調査 5万円~15万円(交通費は別途のところが多いです)
  • マンション1棟規模の目視調査 30万円~50万円

【最後に】コンクリートも生き物です

ここまでコンクリートの劣化調査の必要性や方法についてお話してきましたが、皆さんも体の調子が良くないときは、病院に行って検査をしたりお医者さんに診察してもらうことがあるかと思います。

コンクリートも同じで、作られてから年月が経てば、厳しい環境にさらされて色々な病気(劣化)を生じてくるものです。

人もコンクリートも、健康な状態を保ち、長くにわたって活躍するためには定期的に専門家の検査(調査)を受け、適切な治療(補修)を行っていくことが大切でしょう。

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