コンクリート表面の変色メカニズムと清掃方法

私たちの暮らしの周囲にあるコンクリートの構造物。壁や柱、基礎、塀など様々な種類があり、出来上がって間もないものは基本的に明るい灰色できれいな状態ですが、年月とともに表面に色々な変色が現れてきます。

これらの変色の中には、コンクリートの劣化を示す危険なサインもあるため注意が必要です。

この記事では、コンクリート表面の変色現象を分類し、危険な兆候となるサインについて解説していきます。

Basilisk
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1. 滲み出たものによるコンクリートの変色

コンクリート表面の変色現象は大きく分けると3種類があり、コンクリート内部の物質が水の移動とともに表面に滲み出したもの、外部からの付着物によるもの、火災など高熱を受けたことによる変色が挙げられます。

この章では、まず内部物質の溶出による変色をご紹介します。

1-1.  エフロレッセンス(白華)

エフロレッセンス(白華)は、コンクリート中のアルカリ分である水酸化カルシウムが内部に浸透した水によって溶け出し、空気中の二酸化炭素と反応してコンクリート表面で乾燥して固まることで生じる白い変色です。

このエフロレッセンス自体がコンクリートの強度を損なったり、環境に問題を引き起こすことはありません。

しかし、ひび割れ部分からエフロレッセンスが生じている場合は、ひび割れに水が浸透している証拠ですので、放置すると内部の鉄筋腐食や寒冷地では凍害による劣化が進行する可能性があります。

1-2.  錆汁

コンクリートのひび割れ部分や表面に褐色や赤茶色の変色が滲み出したもので、原因としてはコンクリートに使用された骨材(砂利・砂)に含まれた鉄分や、工事の際にコンクリートに紛れた金属類の腐食によるものと、鉄筋などの鋼材の腐食によるものが考えられます。

この錆汁自体がコンクリートの強度などに悪影響を与えることはありませんが、内部の鋼材腐食による錆汁の場合は、鋼材の性能低下による構造体全体の耐久性低下も考えられますので注意が必要でしょう。

骨材や金属類の腐食によるものは、下の写真のように一点からの錆垂れ状に変色が見られます。

錆汁の発生している元の部分をハンマー等で小破壊すると、錆の原因となった骨材や金属類(釘や鉄筋の結束線など)が出てきますので、除去した上でセメント等の補修材で穴を塞いであげれば問題ありません。

ひび割れ部分から錆汁が多量に発生しているような場合は、内部の鉄筋などの鋼材が腐食していることが考えられますので注意が必要です。

内部の鉄筋の腐食状態を確認した上で、適切な補修が必要となります。

2.  カビ、苔によるコンクリートの変色

コンクリートは通常強いアルカリ性であり、植物やカビ・苔などは生育しにくい環境ですが、年月が経つと大気中の炭酸ガスによって徐々に表面からアルカリ性が失われていき(中性化)、カビや苔が繁殖しやすい状態になります。

カビや苔は湿気を好むため、雨だれが多く乾燥しにくい箇所や日陰に多く発生し、日光の良くあたる部分や水の留まりにくい平滑な表面にはあまり発生しません。

これらのカビ、苔の発生による変色はコンクリートの耐久性上は全く問題ありません。

3. 火災によるコンクリートの変色

コンクリートが火災に遭うなどして高い温度を受けると変色を生じ、その変色の色合いによってどの程度の温度に曝されたか推定ができます。

【コンクリート表面の変色と受熱温度の関係】

変色状況

温度範囲(℃)

表面にすすが付着

300未満

ピンク色

300~600

灰白色

600~950

淡黄色

950~1200

溶融する

1200以上

 

コンクリートは500℃程度まで加熱されると50%程度の強度低下が起こります。しかし、加熱後長期間経つと再使用できる程度まで強度は回復するため、表面にすすがついた状態~ピンク色の変色まではおおむね大きな問題ではないと考えられるでしょう。

しかし、ピンク色~灰白色、淡黄色の変色が見られる場合は、500℃以上の熱が加わった可能性があるため、コンクリートの強度低下や内部鉄筋の性能低下が疑われます。

4. コンクリート変色の清掃方法

4-1.  エフロレッセンス(白華)の清掃

炭酸カルシウムの結晶がコンクリート表面に付着している状態ですので、少量なら水をかけてサンドペーパーや硬めのタワシで擦ることで除去できます。

大きな面積で発生している場合は、酸性洗剤を薄めて吹き付け、ブラシ等で擦り落とすのがよいでしょう。

酸性洗剤を使用した場合は、コンクリートのアルカリ性が失われすぎないよう、清掃後は良く水で洗い流して下さい。

4-2.  カビ、苔の清掃

市販のカビ取り剤や苔除去剤を使用して清掃することでよく落ちます。

洗剤を使用したくない場合は、熱湯に重曹を溶かしたものや、木酢液も効果があるようですので、こちらを選択するのも良いでしょう。

5. まとめ

コンクリート表面の変色の原因には、内部物質によるものやカビ・苔による汚れ、火災によるものなどが代表的なものとして挙げられます。

表面の変色自体はコンクリートの強度や環境への影響はありませんが、ひび割れ部分からのエフロレッセンスや錆汁の発生には注意が必要です。

また、コンクリートが火災の影響を受けた場合、表面にすすが付着している程度なら強度上問題ありませんが、500℃以上の高温を受けた場合は強度上も耐久性上も問題となりますので、いずれにしても詳細な調査を受けることが必要です。

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