ポーラスコンクリートと聞いてイメージするものといえば、和菓子のひとつである雷おこし、また、コンクリートの不具合で生ずるジャンカ(豆板)をイメージされる方がいるかと思います。ここでは、ポーラスコンクリートはどういうコンクリートなのかを説明したいと思います。
この記事でわかること
1. ポーラスコンクリートとは?
ポーラスコンクリートは、通常のコンクリートとは違い、極端に細骨材を減らして製造するコンクリート、または、細骨材を使用しないで、セメント、水、粗骨材だけで製造する多孔質のコンクリートのことをいいます。ポーラスコンクリートは、空隙が多く、保水力を有しているため、植物の生育や微生物の棲息が可能であり、環境に配慮したコンクリート構造物の製作が可能といわれています。
1-1. ポーラスコンクリートの使用用途
ポーラスコンクリートの使用用途としては、水質浄化コンクリート、緑化コンクリート、透水コンクリート、舗装コンクリートなどの用途があります。それぞれの用途について説明します。
①水質浄化コンクリート
川や池など水質汚濁に対して自然の浄化能力があります。しかし、これらの水域をコンクリートの護岸を設置することにより、自然の浄化能力が失われることが指摘され、生態系保全の意味からもコンクリートは使うべきではないと声がありました。そこで、ポーラスコンクリートを使用することによって、微生物の棲みかを確保し、自然の浄化能力を保全する目的で開発されたのが、水質浄化コンクリートです。
②緑化コンクリート
ポーラスコンクリートはセメント・骨材・水の組合せでさまざまな空隙を設けることができます。この空隙に植物の育成に必要な土壌や肥料、場合によっては保水材や種子を充填します。植物は空隙部分に根をおろしていき、土壌中と同じように育成して緑化が可能となります。緑化コンクリートは、河川の護岸、道路のり面の防災と環境保全などに使用されています。
③透水コンクリート
透水コンクリートは、浸透と集水に区別することができます。浸透とは雨水を地下に浸透させるためのものであり、桝、管、側溝などの製品があります。集水とは地面に浸透した雨水や地下の透水層を通って浸入してくる地下水などを集水し、排水するためのものであり、管などの製品があります。
④舗装コンクリート
ポーラスコンクリート舗装は、連続した空隙を形成するポーラスコンクリートを用いることによって、排水機能や透水機能、自動車の騒音低減機能などの環境負荷低減性能をもたすことができます。ポーラスコンクリート舗装は水を透すことで舗装路面の水溜り防止や舗装内への雨水の一時貯留による洪水対策などに有効であるといわれ、また、保水性も有しているため、ヒートアイランド現象対策にも有効です。
2. ポーラスコンクリートの製造方法
次にポーラスコンクリートの製造方法について、配合設計、練混ぜ、打込みおよび成形方法について説明します。
ポーラスコンクリートの使用材料は主にセメント、粗骨材、水となりますが、状況によって混和材料や細骨材(硅砂)を使用することもあります。また、ポーラスコンクリートでは、用途、目的に合わせて適切な大きさの粗骨材の選定が必要になります。
2-1. ポーラスコンクリートの配合条件例
ポーラスコンクリートの配合については用途別によって要求性能があり、その要求性能を満足する配合にしなければなりません。用途別の要求性能、配合条件例については下表に示します。
※:Vm/Vg=モルタル・粗骨材体積比
2-2. ポーラスコンクリートの練混ぜ
ポーラスコンクリートの練混ぜは一般に用いられているコンクリートミキサ(二軸強制練りミキサ、パン型強制ミキサなど)を使用します。目標とする良好なポーラスコンクリートを得るためには水量調整がポイントとなってきます。
水量が多すぎると成形(振動)時にペーストまたはモルタルが流れ出し、ダレが生じてしまいます。また、水量が少なすぎると振動をかけても粗骨材表面にコーティングしたペーストまたはモルタル同士の接着が不十分となるため強度低下などを招き、良好なポーラスコンクリートになりません。一般的な練混ぜの手順は下記の通りです。
①ミキサ内にセメント、粗骨材、必要に応じて細骨材、混和材を投入し約30秒間空練りを行います。
②空練りを行ったあと、水を投入していきます。ただし、水の投入はペーストまたはモルタルの性状が粗骨材の表面水の影響を大きく受けるため、最初は少なめに投入しポーラスコンクリートの状態を見ながら徐々に追加していきます。
③ポーラスコンクリートの適量の水量は、ミキサ内の粗骨材にコーティングしているペーストまたはモルタルの表面が水によって一部光始めた時が目安となります。
④良好なポーラスコンクリートの状態は、成形(振動)後にペーストまたはモルタル分が流れ落ちずにポーラスコンクリートの表面が多少光りだしている、または全面にわたり光りだしていれば、良好といえます。
⑤練混ぜ上の注意点
練混ぜ上の注意点として、粗骨材が極端に乾燥している場合には粗骨材とペーストまたはモルタルの付着が悪くなるため、先に粗骨材と適量の水のみをミキサに投入し、ミキサの羽根を攪拌させながら粗骨材をほぼ表乾状態にする必要があります。
2-3. ポーラスコンクリートの打込みおよび成形方法
打込みおよび成形方法は、ポーラスコンクリートは振動させることによって10~20%程沈下しますので、振動をかける前にあらかじめ余盛りをしておく必要があります。締固めには製作するものにもよりますが、コテ付のバイブレーターやタンパ、プレートコンパクタなどを使用します。
また、製品工場ではテーブルバイブレーターでの製造も行っています。なお、振動時間は圧縮強度、透水係数に与える影響が大きいので、要求性能を満たす振動時間を事前に試験製造などで決定する必要があります。
3. まとめ
今回、ポーラスコンクリートについて、用途、製造方法などを説明させていただきました。ポーラスコンクリートの圧縮強度は、空隙を持つというその構造から普通コンクリートに比べて低くなります。
ポーラスコンクリートの圧縮強度に影響を及ぼす要因は主に空隙率になりますが、粗骨材を結合するペーストまたはモルタルの強度、粗骨材の粒径もひとつの要因になります。
圧縮強度を向上させたい場合、
- 「ペーストまたはモルタルの強度を上げるため混和材を使用する」
- 「粗骨材の粒径を小さくする」
- 「ペースト粗骨材比またはモルタル粗骨材比を大きくする(空隙率を小さくする)」
- 「振動時間を長くする」
などによって、圧縮強度を向上することができます。しかし、強度ばかりを追求してしまうと逆に透水係数が小さくなってしまい、透水性に問題が生じてきます。
ポーラスコンクリートは強度を向上させれば、透水係数は減少し、また、透水係数を向上させれば、強度が低下してしまい、強度、透水係数両方を向上させることは大変困難だといえます。