コンクリートで放射線を遮蔽する技術と核シェルターへの技術応用

2011年3月に起こった東日本大震災とそれを原因とする福島第一原子力発電所の事故によって、大気中に多量の放射性物質が漏れ出して周辺の空間放射線量が高くなったことで、元の居住地に戻れない方や不自由を余儀なくされている方もいまだ多いかと思います。

また、その他の地域で直接の被害を受けなかった方も様々な形で放射線による健康被害ということについて考える機会になったのではないかと思います。

コンクリートはその物性によって放射線を遮り、透過する量を大きく低減させることができます。

この記事では、コンクリートを利用して放射線を遮蔽する技術について紹介します。

1. 放射線の種類と透過する力

日頃ニュースなどで耳にする放射線という言葉、これは高エネルギーを持つ物質粒子と高エネルギーの電磁波を総称するもので、アルファ線、ベータ線、中性子線、陽子線、重イオン線、中間子線などの粒子放射線とガンマ線とX線のような電磁放射線に分けられます。

それぞれの線は持つエネルギーや物性の違いによって物質を透過する力も違い、アルファ線などは紙一枚でも遮ることができます。

下の図で、放射線の種類と透過力の違いを紹介します。

 

2. ガンマ線、中性子線の遮蔽とコンクリート

実際に建築物の放射線遮蔽設計をする際には、中性子線、ガンマ線、X線を遮蔽の対象として考えます。

ガンマ線とX線は、発生源に違いがあるものの基本的には同じ電磁波であるため、両者は同一と考え遮蔽設計ではガンマ線(X線を含む)と中性子線の2つの放射線を対象とします。

アルファ線、ベータ線、陽子線、重イオン線などはそれ自体の透過力は小さく遮蔽の対象とは考えません。しかし、これらが消滅する際に中性子線やガンマ線を放出するため、結局中性子線とガンマ線は遮蔽の対象として考慮する必要があります。

ガンマ線を遮蔽する能力は、遮蔽体の密度と厚さに依存します。厚さが増せば増すほど遮蔽能力は高くなり、厚さが一定の場合は密度を高くするほど遮蔽能力は向上します。

中性子線を遮蔽するためには、原子番号の大きい元素や中程度の元素を含み、かつ水素のような軽い元素も存在する材料が望ましいとされています。

コンクリートは水素などの軽い元素から比較的原子番号の大きい元素までを含み、かつ比較的安価であるため、ガンマ線のみならず中性子線を遮蔽する材料として非常に有効であり多用されています。

3. コンクリートによる遮蔽効率を上げる技術

コンクリートはガンマ線や中性子線を遮蔽できる材料の中でも安価であるので、断面を大きくすればするほど遮蔽能力は向上します。

しかし、建築物の敷地に制限があって壁厚を大きくすると室内スペースが確保できなかったり、重量が増すことで基礎や地盤補強にコストがかかりすぎたりするケースがあります。

このような場合にはどんな手段がとられるのでしょうか?

3-1. 鋼板との組み合わせ

ガンマ線の遮蔽には、原子番号の大きい物質を使用することが有効です。

鉛の板は遮蔽材として非常に効果的ですが、重量や加工などに問題があり設置が簡易でないことや、有害性や地球環境への影響に懸念もあり、鉄製の鋼板をコンクリートと組み合わせて必要な断面寸法を補う方法が採られています。

この場合の鋼板の厚さは、放射線のエネルギーによりますが30~50cm程度の例が多く見られます。

3-2. 重量コンクリートの利用

遮蔽体の厚さが限られている場合、遮蔽体の密度を高くすることで遮蔽能力を向上させることができます。

コンクリートの場合は、コンクリート自体の密度を高くする=重量コンクリートとすることで遮蔽性能が高まります。

重量コンクリートにするには、使用する骨材(砂、砂利)を重量の高い特殊なものを用いて製造します。

一般的な砂・砂利の密度は2.5~2.7g/m3程度ですが、重量骨材であるバライト(重晶石)の密度は4.0~4.7 g/m3、磁鉄鉱は4.5~5.2 g/m3もあり、これらの骨材を使用することでコンクリートの密度は約1.5倍になります。

しかし、重量コンクリートは使用する骨材の入手が難しいことや安定した品質での供給が困難なことなどがあり、現在ではほとんど採用されていないようです。

3-3. その他の技術

その他の技術としては、鉛を多く含むブラウン管の廃ガラスに着目し、ガラスを粉砕して粒度調整したものを骨材として使用することで、放射線の遮蔽性能を高くしたコンクリートも開発されています。

4. 核シェルターのコンクリートについて

最近、北朝鮮のミサイル問題から日本でも非常用シェルターの需要が高まっているようです。

HPにシェルターの概要やカタログを載せている業者も多く、見てみるとシェルターを地下に建設するもので、コンクリートの壁厚20~30cmのものが見られました。

どの程度の放射線を想定しているかの詳細の情報はありませんでしたが、この位の壁厚があり地下であれば、ある程度の放射線量を遮蔽して透過量を低下させることはできるのではないかと思います。

簡易的なシェルターや屋外型のものなどは放射線自体の遮蔽というよりも、外気を正常化して取り込む換気装置を備え、外部の放射線量が問題ないレベルまで低下する2週間程度の期間シェルターの中で生存することを目的としているようです。

5. まとめ

ここまでコンクリートによる放射線の遮蔽技術をご紹介しました。

コンクリートは比較的安価でガンマ線や中性子線を遮蔽できる優れた放射線遮蔽材であり、密度を高くしたり様々な物質と組み合わせたり混和することでまだまだ遮蔽能力を向上させる余地もありそうです。