コンクリート中の鉄筋も車も錆びる?凍結防止剤による塩害の基礎知識

冬期に道路が凍結するような寒冷地では、冬期に道路の凍結を防止しスリップ事故を抑制するために凍結防止剤が散布されます。

しかしこの凍結防止剤に含まれる塩化物は車や道路、コンクリート構造物への悪影響があることも知られています。ここでは凍結防止剤による影響とその対策について説明します。

1. 凍結防止剤の成分

凍結防止剤は水の凍結温度を低下させることで凍結を防ぎます。使用される成分は「塩化カルシウム」、「塩化ナトリウム」、「塩化マグネシウム」などの塩化物で、その中でも最も多く使用されるものは「塩化カルシウム」とされています。

これらの塩化物は凍結防止の面では高い効果を発揮しますが、デメリットとして後に紹介するような鉄の腐食やコンクリート、自動車への悪影響も問題となっており、近年は無塩タイプの凍結防止剤も使用されてきています。

2. 凍結防止剤によるコンクリートの塩害

凍結防止剤に使用される塩化物によるコンクリートへのダメージは塩害と呼ばれ、放置するとコンクリートに重大な損傷を及ぼし、構造物の寿命を短くします。ここでは主に3つの影響を紹介します。

2-1. 鉄筋の腐食

コンクリート構造物の中の鉄筋は高いアルカリ性で保護され、表面に安定した被膜を作ることで腐食が起こらない状態を保っています。

しかしコンクリート表面にひび割れが生じると、そこから塩化物イオンを含んだ水分が侵入します。ある程度の塩化物イオン濃度を越えると、鉄筋表面の膜を破壊し腐食(錆び)することで鉄筋を膨張させ、その圧力でコンクリートを破壊しさらにひび割れを促進したり、コンクリートの剥離や剥落を引き起こします。

この症状を引き起こす水分が凍結防止剤によって解けた氷や雪に由来するものであった場合、その塩化物イオン濃度は非常に高いものであり鉄筋の腐食は著しいものとなります。

鉄筋の腐食はコンクリートを押し割り破壊するだけではなく、鉄筋の断面積を減少させて耐力を低下させます。耐力の低下した鉄筋は最悪破断し、構造物の性能に大変大きな影響を及ぼします。

高速道路の運営会社であるNEXCOでは、現在日本各地の高速道路で大規模な補修工事を行っていますが、特に橋梁の劣化については凍結防止剤によってもたらされる塩化物も大きな原因として挙げられています。

2-2. 凍害の促進

凍害とは、コンクリート中の水分が凍結し体積が膨張するときの膨張圧によってコンクリートにひび割れを生じたり破壊したりする現象で、初期状態としてはコンクリート表面がフレーク状に剥離するスケーリングという現象で現れます。

※コンクリートの凍害について、詳しくは当サイト内の記事「凍結融解作用によるコンクリートのひび割れ」をご覧ください。

凍結融解作用によるコンクリートのひび割れ

凍結防止剤の影響で、高い塩化物イオン濃度の水分がコンクリートに浸透すると、スケーリングを促進させることがあります。

コンクリート中の空隙に高い塩化物イオン濃度の水分がたまった場合、浸透圧の作用により、周囲の水分は塩化物イオン濃度の高い部分に引き寄せられます。それにより凍結時の膨張圧が高まり、より凍害の被害が進行しやすい事が知られています。

2-3. アルカリ骨材反応の促進

凍結防止剤に含まれるアルカリ分によって影響を受けると考えられるものの一つに、アルカリ骨材反応が挙げられます。アルカリ骨材反応はコンクリート中の反応性骨材とアルカリ分が反応する現象です。反応によって骨材の周囲に生じたゲルが吸水膨張することでコンクリートの組織を破壊し、構造物の耐力を低下させ大きなダメージを与えます。

※アルカリ骨材反応のメカニズムについては、こちらの記事もご覧ください

アルカリシリカ反応によるコンクリートのひび割れ

アルカリ骨材反応の問題は、症状が明らかになった時点ではすでに症状が内部で進行している可能性がある点です。ある程度メカニズムの解明が進んでいる現在でも完全に反応を抑え込む補修方法などが確立されていない部分もあり、症状を発生させないことが重要になります。凍結防止剤の塩化ナトリウムもアルカリ骨材反応を促進させることが知られていますので、凍結防止剤を含んだ水分をコンクリート内部に侵入させないことが重要です。

2-4. 対策

これまで凍結防止剤のコンクリートへの影響を紹介しましたが、これらに有効な対策について簡単に説明します。今回紹介した例は凍結防止剤を含んだ水分が外部から侵入することを要因としています。外部からの水分の侵入を防止するには以下の2点が有効です。

  1. 適切な施工でコンクリートの組織を緻密にすることやかぶり厚を十分に確保し、防水加工を施す。
  2. 竣工後に万が一ひび割れが生じてもすぐに補修を行い、外部からの水の浸入を防止する。

3. 凍結防止剤による車へのダメージ

ここからは寒冷地で問題となる凍結防止剤による車へのダメージについて紹介します。特に車は鉄製で塩化物による影響を大きく受けることが知られており、寒冷地にお住まいの方にとっては切実な悩みとなっています。

3-1. 実際に多く見られる車へのダメージ

・下回りの錆び~凍結防止剤は道路に散布されるため、道路に近い部分に錆びが発生しやすくなります。タイヤが融雪剤を巻き上げることでボディや足回りだけではなく、重要な部分にまで錆びが及ぶと高額な修理が必要となる場合もあります。また、錆びがひどい場合には年式が新しい車でも下取り査定が低くなることもあります。

・鉄粉の錆び~鉄粉は文字通り鉄の粉ですが、飛散して車のボディに付着しても最初は気付きにくいのが問題です。鉄粉が付着したままの状態で凍結防止剤と反応するとすぐに錆びが生じ、塗装を傷めたり錆びのシミの原因となります。

・水シミ~特に黒や紺色の車に目立つのが水シミです。凍結防止剤を含んだ水分がボディに付着すると、洗車しても取りにくい強力な水シミになって白く残ります。

3-2. 効果的な対策と洗車方法

車へのダメージに対しては凍結防止剤が散布されている道路を走行する以上、飛散した凍結防止剤を内部に浸透させないことと、洗い落とすことしかありません。ここでは有効な対策と洗車方法を紹介します。

・対策~コーティングや下回りの防錆

CMでもよく目にしますが、汚れをつきにくくするコーティングを施すことは凍結防止剤に対しても有効です。水洗いのみでも未施工の車と比較しても凍結防止剤によるダメージは小さく済む事が確認されています。コストは高くなりますが、効果が短期間のものと比べると長期間のものの方が効果は大きいようです。また、下回りの防錆も有効です。こちらもコストはかかりますが1年ごとに施工し直すことが理想のようです。

・洗車方法~こまめに洗車

凍結防止剤が付着するシーズンはこまめに洗車することが一番効果的です。下回り洗車は特に念入りに行うのが良いでしょう。寒冷地の冬期での洗車は洗車場かガソリンスタンドで行うことが多いと思われますので、下回り洗車も可能かと考えられます。凍結防止剤をよく洗い流すことが大事なので、夏場と比べてしっかり洗うことが必要です。

またタイヤのホイールは油が付いていると凍結防止剤が落ちにくいこともありますので念入りに洗うことをお勧めします。凍結防止剤を中和し汚れを落としやすくする効果もあるようなので、専門店で確認して鉄粉除去剤を使用する事も有効です。

4. まとめ

寒冷地で道路に凍結防止剤を散布する事は、冬期の交通事故を防止するうえでも必要不可欠ですが、今回紹介したように、コンクリートや道路を通行する車に対して塩害が生じることも忘れてはいけません。

コンクリート構造物の塩害を防ぐには、高い濃度の塩化物を含んだ水を内部に浸透させないことが重要で、それには防水効果を高めることや、ひび割れを初期の段階で補修して、水の通り道を作らないことが有効です。

特にひび割れに対して適切な処置を施す事は、塩害に対してだけではなく、コンクリートのアルカリ性を保護して鉄筋の錆を防ぎ、構造物を長持ちさせる上で重要です。

凍結防止剤が散布された道路を通行する車に関しては、凍結防止剤を内部に浸透させないように車体や下回りにコーティングを施すことや、こまめに洗車して塩分を落とすことで錆びを防ぐことができます。