寒中コンクリートの基礎知識|定義・配合・処置についてまとめ

生コンクリートが時間の経過に伴って硬化していく工程は、まずセメントと水で出来たペーストが、細骨材や粗骨材の周辺で水和と呼ばれる化学反応を起こします。

この化学反応によって出来た生成物が、細骨材、粗骨材どうしを接着するバインダーの役目をすることでコンクリートは強固な物質に変化し、水和反応が継続するかぎり強度も少しずつ伸びていくのです。

ではこの時、低温の環境下ではどうなるのでしょうか。

実は水和反応に必要な水が凍ってしまい、十分な反応を継続させることが出来ない為、コンクリートに強度低下などの不具合が発生してしまい、最悪の場合、コンクリート内部に出来た氷の膨張圧によりコンクリートが破壊されてしまうこともあるのです。

この様にコンクリート打設後の養生期間中にコンクリートが凍結する可能性のある場合に使用されるコンクリートを「寒中コンクリート」と呼びます。

ここでは寒中コンクリートの期間の定義や配合(調合)、処置などについて土木の分野と建築の分野を個別に解説して行きます。

1. 寒中コンクリート期間の定義

寒中コンクリートの期間については土木分野と建築分野の定義が異なることから、地域によって期間が違う場合がありますので注意が必要です。

(1) 土木分野

日平均気温が、4℃以下になることが予想される時期

日平均気温は、各地区の気象庁から最新の気象データを入手することが出来ます。

(2) 建築分野

下記①、②のいずれかが該当する期間を基準とし、期間の開始日、終了日は、該当する旬の初めまたは終わりの日とします。

① 打ち込み日を含む旬の日平均気温が4℃以下の期間
② コンクリートの打込み後91日までの積算温度M91が、840°D・Dを下回る期間

ここに出てくる旬とは、1ヶ月を上旬(1日~10日)、中旬(11日~20日)、下旬(21日~31日)に区切って考える方法です。

こちらの旬気温も、各地区の気象庁から最新の気象データを入手することが出来ます。

積算温度とは、以下の式により求めた値です。

ここに、Mn : 積算温度 (°D・D)

Z : 材齢 (日)

θZ : 材齢Z日における日平均気温または日平均コンクリート温度 (℃)

計算例として環境温度が平均気温が-2℃で3日間の積算温度は、(-2+10)×3よりMnは24(°D・D)となります。

2.  寒中コンクリートの配合(調合)

寒中コンクリートの調合(配合)の決定方法については土木分野と建築分野では、考え方が異なります。

(1) 土木分野

土木では、寒中コンクリートで調合管理強度(呼び強度)のランクを上げるという方法はあまり取られません。

代わりにセメントの種類を高炉セメントB種から普通ポルトランドセメントや早強ポルトランドセメントに変更したり、促進タイプの混和剤に変更するという対策を取ります。

(2) 建築分野

建築での、調合管理強度は以下の式によって算出される値となります。

Fm = Fq+28Sn

ここに、Fm : 調合管理強度 (N/㎜2)

Fq : 品質基準強度 (N/㎜2)

28Sn : 構造体強度補正値 (N/㎜2)

ここで、それぞれの語句について説明しておきましょう。

Fm (調合管理強度) : 構造計算に必要とされる強度に気温などによる補正値を加えた強度で、JISでは呼び強度と呼ばれます。

Fc (設計基準強度) : 構造設計時に考慮しなければならない圧縮強度を意味します。

Fd (耐久設計基準強度) : 構造物や部材の共用期間に応ずる耐久性を確保する為に必要となる圧縮強度を意味します。

Fq (品質基準強度) : 構造物や部材の要求品質を得る為に必要とする圧縮強度のことで、設計基準強度もしくは、耐久設計基準強度のうち大きい方の値とします。

Fmを定める方法には以下の2つの方法があります。

①コンクリートの打込みから材齢28日までの予想平均気温によって定める方法
②積算温度をもとに定める方法

これらの方法については、次項で詳しく解説していきます。

3. 寒中コンクリートの処置について

寒中コンクリートの処置について土木分野と建築分野では、内容的にほぼ同一です。異なる内容の部分は個別に記載します。

4. 寒中コンクリートの材料

① セメント

普通ポルトランドセメントまたは早強ポルトランドセメントを標準とします。

② 混和剤

AE剤、AE減水剤、高性能AE減水剤を使用しなければなりません。

条件によっては耐寒促進剤を使用することも可能です。

5. 寒中コンクリートの製造・運搬

① 材料の加熱

材料の加熱は水の過熱を標準とします。 ただし必要に応じて粗骨材、細骨材の加熱を行います。

セメントはいかなる方法によっても加熱してはいけません。

②コンクリート温度

(1) 土木分野

打ち込み時のコンクリート温度は5℃から20℃の範囲とします。

(2) 建築分野

荷卸し時のコンクリート温度は10℃から20℃の範囲とします。

6. 寒中コンクリートの初期養生

(1) 土木分野

厳しい気象作用を受けるコンクリートは、初期凍害を防止できる強度が得られるまでコンクリート温度を5℃以上に保ち、さらに2日間は0℃以上に保たなければなりません。

初期凍害を防ぐために養生終了時に必要となる圧縮強度を、表-1に示します。

 

表-1  初期凍害を防ぐために養生終了時に必要となる圧縮強度

 

解説) この表の見方は、例としてコンクリートの表面が水で飽和される頻度が高く断面の大きさが普通の場合、このコンクリートの初期凍害を防ぐ為には、12N/㎜2の圧縮強度が確保されるまで継続養生が必要であるという結果が得られます。

(2) 建築分野

打込み後のコンクリートは、断熱養生または過熱養生による初期養生を行い、圧縮強度5.0N/㎜2が得られるまで凍結しないようにしなければなりません。 ただし、軽微な凍結期には被覆養生とすることが出来ます。

表-2に圧縮強度5.0N/㎜2が得られる積算温度を示します。

 

表-2  圧縮強度5.0N/㎜2が得られる積算温度

 

解説) この表の見方は、例として普通ポルトランドセメントを使用して、Fm 30で打込んだ場合、5.0N/㎜2を確保するための積算温度は40(°D・D)の養生が必要という結果になります。

これを3日の養生期間で得るとすると、40÷3-10=3.3となり平均3.3℃の養生温度を確保する必要があります。

7. 所定の圧縮強度を得る為の養生期間

寒中コンクリートにおいては、目標とする所定の強度を得る為に、どの位の温度で養生期間がどれ位必要であるかを事前に計画する必要があります。

ここからは、土木分野と建築分野に分け解説して行きます。

(1) 土木分野

土木分野では、型枠を取り外した直後からの構造物が水で飽和される頻度別、養生温度別、セメント別に決められています。

表-3は、所要の圧縮強度を得る養生期間の目安を水セメント比が55%の場合の標準的な値として示したもので、水セメント比がこれと異なる場合は、適時増減します。

表-3  所要の圧縮強度を得る養生期間の目安

 

 

解説) この表の見方は、例として普通ポルトランドセメントを使用し水セメント比が55%のコンクリートを打設した時、コンクリートの表面が水で飽和される頻度が低い場合は、養生温度を5℃で4日、10℃では3日の養生を行うことで所要の圧縮強度を得ることができるという結果になります。

(2) 建築分野

建築分野では、二つの方法があります。

① コンクリートの打込みから材齢28日までの予想平均気温によって定める方法

この方法は、コンクリートの打込みから材齢91日までに得られる積算温度が840°D・D以上の場合に適用されます。

表-4に予想平均気温による構造体強度補正値28Snの標準値を示します。

表-4  予想平均気温による構造体強度補正値28Snの標準値

 

 

解説) この表の見方は、普通ポルトランドセメントを使用したコンクリートの打込みから材齢28日までの予想平均気温が5.8℃だった場合は構造体強度補正値は6N/㎜2が必要となり、例としてFqが27とした場合のFmは27+6で33を使用するという結果になります。

② 積算温度をもとに定める方法

この方法は、積算温度に応じたコンクリート強度の増進過程が既知の場合に適用されます。

コンクリートの打込み時期や養生方法を考慮しながら、養生期間中の予想温度や構造体コンクリートの温度履歴を予測し、計画したFc及び構造体コンクリート強度を確保する材齢までに得られる積算温度を求めます。

表-5に、Fc を確保できる積算温度の下限値の標準値を示します。

表-5  Fc を確保できる積算温度の下限値の標準値

 

 

解説) この表の見方は普通ポルトランドセメント使用でFc 27の場合、Fm 33で打込んだコンクリートは、積算温度で270°D・D以上の養生を行うことでFcを満足することが出来るという結果になります。

例として材齢21日で満足する為の計画を立てた場合、270÷21-10≒2.9という結果から21日間平均3℃の養生が必要となります。

表-6に構造体コンクリート強度を保証する材齢までの積算温度による構造体強度補正値28Snの標準値示します。

表-6  構造体コンクリート強度を保証する材齢までの積算温度による構造体強度補正値28Snの標準値

 

 

*呼び強度39は40で算定

解説) この表の見方は、普通ポルトランドセメント使用でFq 27の場合の構造体強度補正値を保証するまでの積算温度は、構造体強度補正値を3N/㎜2(Fm 30)とした場合

840°D・D以上、構造体強度補正値を6N/㎜2(Fm 33)とした場合、530°D・D以上、構造体補正値を9N/㎜2(Fm 36)とした場合、360°D・D以上の積算温度となるように養生が必要であるという結果になります。

8.  まとめ

ここまで寒中コンクリートの期間の定義や配合(調合)、処置などについて解説してきましたが、土木と建築で多少考え方が違う部分があるため内容について混同しないように注意が必要です。

特に建築分野については多数の表がある為、今回は表ごとに解説を設けていますので、養生計画にご活用下さい。

もっと詳細をという方は、土木学会発行「コンクリート標準示方書」及び日本建築学会発行「寒中コンクリート施工指針・同解説」を参照して下さい。