住宅のコンクリート基礎にはどんな種類があるか?

住宅では、上部構造に木質構造や軽量鉄骨構造などの材料を使用します。しかし下部構造である基礎にはほとんどの場合、コンクリートによって基礎を構築することが大半です。

ここでは、コンクリート基礎について整理し、どのようなポイントがあるのか整理してみましょう。

Basilisk
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1. 住宅基礎の種類とは?

一般的な住宅の基礎の種類は、

  • べた基礎
  • 布基礎
  • 独立基礎

の大きく3つがあります。一概に言えませんが、小規模な住宅では、近年ベタ基礎が普及していると思われます。

1-1. べた基礎

ベタ基礎は、柱・土台の受け部から床の下まで連続的なコンクリート構造を構築する基礎形式です。柱の下部は120~200mm程度の幅および一定の高さをもった基礎梁、床下には厚さ150~200mm程度のコンクリートスラブを構築します。これらの構造により、一体で強固な基礎構造となるほか、防湿効果なども得られます。

住宅を支える地盤に対しては大きな底面積で受けることになるため、地盤側に負担される荷重は3つの基礎の中で最も小さくなります。

メリットばかりと思われがちですが、使用するコンクリートや鉄筋などの材料が増え、根堀による排土量が多くなることが大半のため、一般的にコストは布基礎より高くなります。

ベタ基礎のイメージ図

ベタ基礎のイメージ図

1-2. 布基礎

布基礎は、柱・土台下に逆T字型の基礎を連続して構築する基礎形式です。ベタ基礎に比較して基礎としての構造は強固とは言えませんが、主に戸建住宅のような荷重の小さい建築物で採用されます。

地盤に対しては、ベタ基礎より小さな底面積で受けることになることから、地盤側に負担される荷重はベタ基礎より大きくなるものの、連続的に基礎を構築することから、経済的な基礎形式としてよく採用されています。

ベタ基礎よりシンプルな構造になる分、コストメリットがあります。

布基礎のイメージ図

布基礎のイメージ図

1-3. 独立基礎

ベタ基礎、布基礎は連続的に基礎を接続する構造である一方で、独立基礎は、その名の通り、連続的に構築するのではなく、「単体で独立して基礎とする」構造です。

独立基礎は、荷重を集約して地盤に負担させる考え方で基礎を設計することから、木質構造や軽量鉄骨構造などの小規模建築物よりも、鉄筋コンクリート造や重量鉄骨造の中・大規模建築物の基礎として多く採用されています。

地盤に対しては、当然、上記のような建築規模による採用の実態もありますが、仮に小規模建築物で採用したことを想定すると、荷重を集約し、小さな面積で受けることになることから地盤側に負担される荷重は3つの中で最も大きくなることが一般的です。

2. 建築基準法と基礎種類の関係

建築基準法と基礎種類については、建築基準法施工令38条と、告示第1347号に明示されています。以下に該当部分を引用します。

●建築基準法施行令38条

3 建築物の基礎の構造は、建築物の構造、形態及び地盤の状況を考慮して 国土交通大臣が定めた構造方法 を用いるものとしなければならない。この場合において、 高さ13メートル又は延べ面積3,000平方メートルを超える建築物で、当該建築物に作用する荷重が 最下階の床面積1平方メートルにつき100キロニュートンを超えるものにあっては、 基礎の底部(基礎ぐいを使用する場合にあっては、当該基礎ぐいの先端) を良好な地盤に達することとしなければならない。 ……………

国土交通省:基礎立ち上がり等の耐久性関連事項について

 

●告示第1347号

建築物の基礎の構造方法及び構造計算の基準を定める件

第1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第38条第3項に規定する建築物の基礎の構造は、 次の各号のいずれかに該当する場合を除き、地盤の長期に生ずる力に対する 許容応力度 (改良された地盤にあっては、改良後の許容応力度とする。以下同じ。) が20kN/㎡未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造と、 20kN/㎡以上30kN/㎡未満の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造又はべた基礎と、 30kN/㎡以上の場合にあっては基礎ぐいを用いた構造、べた基礎又は布基礎としなければならない。

国土交通省:評価方法基準

上記の2つから、建築基準法と告示に定める「最低限満たすべき基礎構造」としては以下のような表の表現となります。

地盤の長期に生ずる力に対する許容応力度

基礎構造

20kN/㎡未満

基礎ぐい

20kN/㎡以上30kN/㎡未満

基礎ぐい、べた基礎

30kN/㎡以上

基礎ぐい、べた基礎、布基礎

尚、ここで「基礎ぐい」と表現される基礎形式は、杭と基礎を完全に結合させ、基礎の一部として杭を考える基礎形式を指し、ビルやマンションなどの中・大規模建築物で地盤が軟弱な時によく用いられる基礎形式です。

3. 地盤が弱い場合の補強方法と基礎の選定

地盤が弱い(許容応力度が確保できない)場合には、何らかの対策を行う必要があります。戸建住宅では、「布基礎+地盤改良」、または「ベタ基礎+地盤改良」として採用されることが一般的です。以下に戸建住宅で採用されている地盤改良工法をいくつか紹介します。

3-1. 表層改良

セメント系固化材を現地盤に粉体のまま混ぜて混合撹拌し、転圧することで改良地盤を形成する工法です。表層から2m程度の軟弱地盤の地盤改良として採用されます。

施工は油圧ショベルと振動ローラーで行います。

表層改良工法を採用する場合の注意点としては、地盤条件にかなりの制約があります。具体的には、安定した地盤が不均一な場合、傾斜がある場合、地下水位が改良底面より浅部に存在する場合は採用できません。また腐植土などの固化不良が懸念される地盤などでは事前に配合試験を行うなどして、所定の強度が得られる配合設定を確認の上、採用する必要があります。

3-2. 柱状改良

セメント系固化材と水を混ぜたスラリーを現地盤に注入し、混合撹拌して円形柱状の改良体を形成する工法です。概ね8m程度までの軟弱地盤の地盤改良として採用されます。

施工は専用の回転撹拌翼のついた施工機で行います。

柱状改良工法を採用する場合の注意点としては、こちらも表層改良同様に地盤条件にかなりの制約があります。傾斜がある場合、地下水が流動しており安定していない地盤では採用できません。

また腐植土などの固化不良が懸念される地盤などでは事前に配合試験を行うなどして、所定の強度が得られる配合設定を確認の上、採用する必要があります。

また、対策品ではない一般の固化材を使用した場合には六価クロムが溶出し、土壌汚染の可能性もあります。

3-3. 既成杭(鋼管、コンクリートパイル等)による改良

工場生産品である鋼管またはコンクリートパイルを使用して地盤改良をする工法です。鋼管材料はストレート型と先端拡大翼付き型の2種類に大きく分けられ、一般的に回転圧入により施工が行われます。

またコンクリートパイルの場合は、円形、三角や四角などを含む多角形、H型などの異形などの様々な材料があり、施工は回転を伴わない圧入のみで行われることが一般的です。改良長は最小で2m程度で、最大改良長は改良体の径および継手形式により決まります。

既製杭を採用する場合の注意点としは、前2項の工法に比較すると地盤条件による制約は少ないものの、材料搬入および機械搬入の面で制約がある場合の対応範囲が狭くなることです。事前に改良業者に下見をして貰うなどの対応が必要です。

また、高止まり発生時には、改良材の残材を産業廃棄物として現場で合法的に処理する必要があります。

3-4. その他改良工法

列挙したこれらの改良工法では、改良体のみで支持力を得て改良するという考え方が主です。しかし、改良体周辺部の未改良地盤も含めた双方で支持力を確保する考え方で第三者認証を受けているのもあります。

近年、改良材には様々な材料がでてきており、木材や廃プラスチック、砕石の現場圧密成型による改良工法なども存在します。

4. 住宅基礎のコンクリートに必要な条件

前述の様に基礎の形式および地盤が悪いときの改良工法がある中で、住宅基礎でつかうコンクリートはどのような仕様になるのでしょうか?。

日本建築学会発行「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事2015(以下JASS5と略)」に基づいて整理してみましょう。

4-1. 計画供用期間

「JASS5 29節 住宅基礎用コンクリート 29.3品質」によると、「計画供用期間」とは、「中性化による影響で鉄筋が腐食し、コンクリートが破壊されることに対し、大規模な補修が必要のない期間」を想定しています。

4-2. 住宅基礎が該当する計画供用期間の区分

同解説の中には「大規模ではない木造住宅や軽量鉄骨造住宅は、多くの場合30年~60年程度で建て替えられる」ことから、住宅基礎用コンクリートの計画供用期間の級は「短期(30年)または標準(65年)」となると記されています。

4-3. 選ぶべきコンクリート強度の仕様とポイント

「JASS5 3.4設計基準強度および耐久設計基準強度」に基づくと、計画供用期間の級に基づいたコンクリートの耐久設計基準強度は短期(30年)であれば18N/mm2 標準(65年)であれば24N/mm2に該当します。

しかし、「JASS5 29.6製造・運搬打ち込み」にはコンクリートの呼び強度は24以上とするあり、これらから総合すると、住宅基礎用コンクリートにおいては、計画供用期間が短期であっても、24N/m㎡以上の呼び強度でコンクリートが採用することが必要であると言えます。

また、これらのことから総合すると、一般的な住宅で一般的な環境であれば65年程度の耐久性は見込めることが示唆されます。

尚、耐久性についてはコンクリート強度以外にも中性化に関係した劣化因子やかぶり厚さなどの設定によって大きく変化するものなので、合わせて注目しておきたいところです。

5. 基礎の重要度とポイント

住宅の基礎はすべての荷重を受け、地盤へと伝達する非常に重要な部分です。基礎で障害が発生することを想定した場合、以下の2つのリスクが考えられます。

5-1. 基礎の不良による建物のリスク

基礎の施工不良や性能不足により障害発生した場合、クラックの発生などが考えられます。これらのクラックは、進行の度合いにより最悪の場合、基礎性能が担保されず、建物倒壊などの危険性が発生します。

5-2. 地盤の沈下によるリスク

地盤の支持力が不足したり、不同沈下が発生すると、住宅に傾きが生じます。

一律に沈下する場合は、配管などの設備不良の発生などが考えられますが、一方向への傾きが生じると、人間の感覚器との乖離が生じ、肩こりやめまいなどの体調不良が生じる他、建具の立て付けが狂うなどの障害が発生します。

一般に瑕疵に問われる傾斜角(傾きの度合い)は6/1000(1mで6mmの傾斜)と言われております。

6. まとめ

本ページでは基礎の種類と法令、改良の種類と施工のポイントについて整理しました。

戸建住宅において、ベタ基礎は近年、最も一般的な基礎となってきていますが、決してベタ基礎だから高性能という訳ではありません。状況と性能をみて布基礎を選択することも悪くはないでしょう。

また、形式以外にも基礎を構成する基本材料であるコンクリートの仕様あるいはその他の仕様にも注意しなければなりません。地盤が軟弱なときの改良も様々な工法があります。地盤条件と各候補のメリット・デメリットを理解して選択することがよりよい基礎を作るコツです。

新築計画では間取りなどの仕様も大事ですが、基礎は家を支えるまさに「礎(いしずえ)」です。ここにも十分な注意を払って選択したいものです。

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