コンクリート橋の劣化原因と長寿命化にするための対策方法

現在、わが国の道路橋(橋長2m以上)は約70万橋。その内、長さが15m以上の橋梁は15万7000以上という膨大な数に達しており、その多くが1955年から1973年にかけての高度経済成長期以降に建設されています。

橋梁の寿命は、一般に50年程度と言われています。この寿命50年の出所は、「減価償却資産の耐用年数等に関する大蔵省令(昭和43年)」等を引用したものと考えらます。それによれば、鉄筋コンクリートあるいは鉄骨鉄筋コンクリートの橋梁は60年、金属造のものは45年と規定されているからです。

しかし、本当に橋の寿命は50年と言えるのでしょうか?

橋の劣化の原因は、鋼橋の場合は鋼材の腐食や疲労損傷、コンクリート橋の場合はコンクリートの塩害やアルカリ骨材反応があり、設計・製作上の問題や環境条件によって様々です。

よって、一般的に言われている寿命50年については、あくまでも一般的な目安として考えておくべきです。

ここでは、橋梁の架け替えに関する実態調査の結果から、建設年代によって橋梁の寿命に違いがあること、そして、日本の橋梁は「高齢化」が急速に進んでいることを説明します。

また、コンクリート橋における劣化の原因を示し、長寿命化にするための対策方法について紹介します。

1.道路橋寿命の推定

下表は、道路橋の架け替えに関する実態調査結果から、橋梁が建設されてから架け替えられるまでの年数の期待値を架設年次別に推定したものです。

建設年代別の道路橋寿命の推定結果

架設年次

平均(年)

標準偏差(年)

1921~1930

40

10

1931~1940

40

10

1941~1950

30

10

1951~1960

60

20

1961~1970

70

20

1971~1980

70

20

1981~1990

100

30

1991~2000

100

30

2000~

100

30

(注)国土交通省国土技術政策総合研究所調べ

この推定結果から、物資が不足していた第二次大戦中から戦後にかけての橋梁の寿命が30~40年程度と短くなっており、1951年以降に建設された道路橋は、地震被害や損傷を経験して基準類が見直しされたことで、概ね50年以上の寿命がありことが分かります。また、近年建設された橋梁は、100年程度の寿命を有するものと推定されています。

2.日本の橋梁の高齢化

高度経済成長期から80年台にかけて日本では多くの橋梁が建設されました。国土交通省によると、長さ15m以上の橋梁は2011年時点では約15万7000橋あり、そのうち建設後50年以上が経過したものは約1万5000橋(全体の9%)、2021年には約4万4000橋(全体の28%)、そして2031年には約8万4000橋(全体の53%)と全橋梁数の半分を超えます。

(注)国土交通省資料から

建設後50年経過した橋梁の比率(長さ15m以上)

1980年代以降に建設された橋梁は、100年程度の寿命があることから健全性に問題が発生することは少ないと予想されますが、それ以前に建設された橋梁は老朽化による対策は必須となります。

3.コンクリート橋の劣化要因

道路橋には、一般的に鋼橋とコンクリート橋がありますが、ここではコンクリート橋について劣化の要因を示します。

(1)疲労損傷

道路橋では2002年に疲労設計指針が出されるまで、疲労に関する照査は必要ないとされてきました。しかし、現在の道路事情は設計当時とは大きく異なり、想定していなかった交通量の多さや大型トラックの普及により、橋梁が受けるダメージは相当大きくなっています。これにより、鉄筋コンクリート床版のコンクリート部分にひび割れが発生し、進展するとコンクリートの剥落が発生する危険性があります。

(2)塩害

塩害とは、コンクリート中に浸透した塩化物イオンによる鋼材の腐食を言います。コンクリート表面に付着した塩分が、塩化物イオンとして徐々に内部に浸透するとコンクリート内部に設置した鉄筋を腐食させます。

塩害によるコンクリートの劣化現象は、鉄筋に沿ったひび割れや剥離・剥落そして鉄筋露出などを起こします。

わが国には実に多様な塩害があります。代表的なものを下記に示します。

①海砂によるもの

海砂は洗浄してコンクリート材料として使用することになっていますが、使用され始めた初期は、洗浄方法なども確立しておらず、塩分がかなりの量含まれていたようです。

②飛来塩分によるもの

海から飛来する塩分で、昔は沿岸部のコンクリートに重大な影響を与えるとは必ずしも考えられていませんでした。

③融雪剤によるもの

融雪剤は冬季の凍結路面に散布されるもので、一般的に塩化カルシウムや岩塩が使用されています。現在これによる塩害が顕在化しつつあります。

④海水によるもの

東京湾横断道路などの海中構造物は、塩害の全てがあるといってよいでしょう。

塩害に対する対策や補修方法として、コンクリート内部の鋼材の腐食進行を抑制する目的で、コンクリートの表面処理、鋼材の電気防食や防錆処理、そしてコンクリートの断面修復が検討されます。

(3)アルカリ骨材反応

アルカリ骨材反応とは、コンクリート中の高pH環境で、骨材に含まれるシリカが反応して生じたアルカリシリカゲルが膨張し、コンクリートにひび割れが生じる現象を言います。

アルカリ骨材反応によるコンクリート橋の劣化は、疲労や塩害と比べてまだ研究段階にある項目も多く、大きな課題と考えられています。研究の初期段階においては、コンクリートの表面にひび割れが発生しても、構造物の安全性に与える影響は極めて小さく、無視できる程度であると考えられてきました。

しかし、アルカリ骨材反応の進行によって大きな膨張がコンクリート構造物に生じた場合、コンクリート強度の著しい低下やコンクリート内部において鉄筋の破断が発生する事例が報告されました。この鉄筋破断の問題は、コンクリートと鉄筋が一体となって挙動するという、鉄筋コンクリート構造物の耐荷性状の基本的な枠組みを脅かすものであり、アルカリ骨材反応により劣化した構造物の安全性を根本的に再検討する必要が生じました。

アルカリ骨材反応の補修工法の要求性能を以下に示します。

  1. コンクリート中への水分の浸入を低減する工法
  2. アルカリシリカゲルの膨張性を消失させる工法
  3. 外部拘束により膨張を物理的に抑制する工法

上記①~③の各要求性能に該当する補修工法は、構造物の劣化状況に応じて選択する必要があります。

4.まとめ

橋梁は国やその町のシンボルだけではなく、社会経済や我々の生活を支える生命線です。よって、長く安全に機能し続けなければなりません。

橋梁の寿命は、一般に50年程度と言われていますが、劣化の原因は設計・製作上の問題や環境条件によって様々であり、適切な維持管理が必要になっています。

国土交通省では、インフラ長寿命化計画を平成26年に策定し、橋梁も対象施設として計画的に点検・診断、修繕・更新等を実施することになりました。