地震によるコンクリートのひび割れの特徴について解説

日本列島は太平洋プレート、北米プレート、ユーラシアプレート、フィリピン海プレートという4つの海洋プレートと大陸プレートが集まる世界的にも特殊な条件にあります。

このプレートが移動することで生じるひずみが蓄積し、その反動で引き起こされる地震が日本では非常に多く、このようなプレート境界型と言われる地震は数10年~数100年周期で繰り返し起こっています。

この記事では、そのような地震被害を受けたコンクリート構造物にはどのようなひび割れや損傷が生じるか、また地震被害によるひび割れとその他の原因によるひび割れの見分け方について解説します。

1. 地震によるコンクリートのひび割れの特徴

1-1. 地震による損傷のメカニズム

コンクリート構造物が地震による荷重を受けると、コンクリートは非常に引張力に弱い材料であるため、まず最初にコンクリート表面に引張りや曲げモーメントによるひび割れが生じてきます。

この状態でも、コンクリート内部には鉄筋が配置されていますので鉄筋が引張り力を受け持ち、建物が崩壊することはありません。

しかし、さらに荷重が増大するとコンクリート構造にとって危険なひび割れ(せん断ひび割れ)が生じ、最終的には内部の鉄筋や鋼材が降伏して崩壊に至ります。

1-2. 地震によるひび割れの例

では、地震によるコンクリート構造のひび割れの特徴と損傷の程度を、柱・梁・壁と窓からなる建築物を例に見ていきましょう。

①軽微な段階

柱、壁の損傷が軽微かもしくはほとんど損傷がないもの

 

②小破

柱・耐力壁の損傷は軽微だが、RC二次壁にせん断ひび割れが見られる。壁や柱に生じるX形のひび割れは地震被害の特徴。

 

③中破

柱や耐力壁にせん断ひび割れが見られる。RC二次壁・非構造体に大きな損傷が見られる。

 

2. 地震被害と間違えやすいひび割れ

次に、身の回りにある建築物のひび割れから、地震の荷重によるひび割れと間違えやすいものを挙げていきます。

実は、コンクリートに見られるひび割れの原因のほとんどは、コンクリート自体の乾燥収縮によるものです。

地震力などの外的な力によるひび割れは幅の大きいものが発生しますが、乾燥収縮が原因で生じるひび割れは比較的幅が小さいものが多く、おおむね0.3mm以下がほとんどです。

最終的にはひび割れの発生位置や形状などを総合して専門家に判断を委ねることになりますが、ひび割れ幅が0.3mm以下のものはまず構造的に問題ないと考えて良いでしょう。

2-1. 窓枠(開口部)まわりのひび割れ

マンションの窓枠や開口部の角から、斜め方向に伸びるひび割れは非常に良く見られますが、これらの原因はほぼコンクリートの乾燥収縮によるものです。

壁のコンクリート全体が収縮するときに、窓枠や開口部があると角の部分に縦・横方向の引張り力が集中するために斜め方向にひび割れが発生しやすくなります。

 

2-2. 基礎換気口周辺のひび割れ

住宅基礎の立上り部分には換気口が設けられていることが多いですが、この換気口の角の部分もひび割れの生じやすい箇所と言えます。

このひび割れも原因としては窓枠周りと同様で、乾燥収縮によるものが大半です。

0.4~0.5mm程度やそれ以上の比較的大きめの幅のひび割れが見られるようでしたら、外力による影響や基礎の沈下など、構造的な問題による可能性が考えられます。

 

2-3. 柱表面のひび割れ

コンクリート打ち放しの柱の表面に、幅の細いひび割れが網目状や横方法に複数見られることがありますが、このような細いひび割れも乾燥収縮によるものがほとんどです。

屋内の打ち放し柱などは雨がかりが無く表面が乾燥しやすいため、このようなひび割れが多く見られます。

しかし、柱の下部や梁との接合部に見られる横方向のひび割れは地震の影響によることが考えられます。

また、縦方向の鉄筋に沿った大きな幅のひび割れはアルカリ骨材反応によるひび割れが想定されるため要注意です。

3. 耐震基準の変遷

日本の耐震基準は、地震災害の歴史とともに変遷を遂げてきています。

時に大規模地震災害は人間の想定を超える力でコンクリート建物を損壊してきましたが、人々はその損失を糧としてより安全な耐震設計法へと発展させています。

ここでは、過去の大規模地震災害と耐震基準の変遷についてご紹介します。

・1924年(大正13年)市街地建築物法の大改正

前年の関東大震災による被害を受け、耐震規定が初めて盛り込まれた。

・1971年(昭和46年)建築基準法施行令の改正

1968年の十勝沖地震の被害をふまえ、鉄筋コンクリート造の柱のせん断補強筋の基準が強化された。

・1981年(昭和56年)建築基準法施行令の改正

1978年の宮城県沖地震を受け、耐震設計法が抜本的に見直され基準が大幅に改正された。

この改正された耐震基準は新耐震設計基準と呼ばれ、この基準の改正前後の建物を、「1981年昭和56年以前の耐震基準の建物」や「1981年昭和56年以降の新耐震基準による建物」といった表現がされるようになる。

この新耐震設計基準以降に建てられた構造物は、1995年の阪神・淡路大震災でも被害は少なかったとされる。

・1995年(平成7年) 建物の耐震改修に関する法律制定(耐震改修促進法)

1995年の阪神・淡路大震災の教訓により、に耐震改修促進法が施行され1981年以前の旧耐震基準で建築された建物には耐震診断が義務づけられた。

4. 耐震補強について

では、1981年以前の旧耐震基準で建築された建物や、耐震診断において耐震性能不足と判断された建物はどうなるのでしょうか?

そのまま使用すると危険なため取り壊しになるのでしょうか?

そのような判断をされた建物もありますが、当面の措置として補強を施した上で使用されている建物も多くあります。

補強部分が建物内部で外見上分からないものもありますが、外部に耐震強度の向上のため施された補強をいくつかご紹介します。

4-1. 鉄骨ブレース補強

建物内や外部に鉄骨を配置し、建物と一体化させることで耐震強度を向上させます。

建物内に鉄骨ブレースや耐震壁を増やす補強をすると、建物の動線や使い勝手が悪くなることがありますが、建物外部にブレースを配置することで、内部のスペースが犠牲にならず、また建物を使用しながら補強工事を同時に行う「いながら補強」が可能になります。

 

4-2.  外部ケーブル補強

こちらも外部に補強材を配置した補強方法ですが、建物内部も外側にも大きな補強材を取り付けるスペースが無いためにケーブルを用いた補強を行っています。

 

4-3.  外部フレーム補強

建物の外部に、コンクリートのフレームを増設した補強方法です。

外部に大きなスペースが必要になりますが、意匠性が高く建物の外観と良くなじむ仕上がりになっています。

5. まとめ

ここまで地震が原因のコンクリートのひび割れの特徴と、別な原因で生じたひび割れとの見分け方についてご紹介してきました。

皆さんの身近な建物やお住まいの家のコンクリートにも少なからずひび割れはあると思います。

これってまさか地震が原因? 建物が壊れてしまわないか?など不安に思われることもあるかもしれません。

そんな時はまずひび割れの幅を測ってみることをお勧めします。

ひび割れ幅が小さかったり(目安は0.3mm以下程度)、ひび割れ部分に段差やずれがなければまず乾燥収縮によるもので構造上問題ないでしょう。

もしひび割れ幅が大きいなど気になる点があれば、専門家に相談するのが良いでしょう。