生コンクリートは略して「生コン」と呼ばれています。生コンは、日本工業規格(JIS)でレディーミクストコンクリート(Ready-mixed Concrete)と呼ばれており、レディーミクストの意味は「既に練り混ぜを完了している」という意味です。

ここでは、生コンクリートの製造方法及び品質管理の主な規格についてご紹介します。

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1. 生コンクリートの規格とは

生コンクリートの製品規格は、JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」の規定に従って、適合した製造方法及び品質管理を行っています。また、製品に対するJISマークの表示を維持する為、国に登録された民間の第三者機関である登録認証機関により、3年以内に1回定期のJIS認証維持審査を受けています。

2. 生コンクリートのJIS規格の種類

JIS A 5308「レディーミクストコンクリート」には、生コンの原材料及び製造方法、品質の試験方法などの規格が規定されています。

2-1  基本

レディーミクストコンクリート JIS A 5308

レディーミクストコンクリートは「整備されたコンクリート製造設備をもつ工場にて製造し、運搬車により工事現場にフレッシュな状態で配達され、荷卸しをするまで」のことを指します。

2-2  使用する材料

生コンクリートの一般的な使用材料は、セメント、水、細骨材(砂、砕砂)、粗骨材(砂利、砕石)、混和材料になります。これらの材料を体積で比較すると、最も多いのが粗骨材、次に細骨材、セメント、水、混和材料の順になります。

① セメント

セメントのJIS規格は、

  • JIS R 5210「ポルトランドセメント」
  • JIS R 5211「高炉セメント」
  • JIS R 5212「シリカセメント」
  • JIS R 5213「フライアッシュセメント」
  • JIS R 5214「エコセメント」

があります。

ポルトランドセメントには、普通、早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩などの種類があり、その中でも普通ポルトランドセメントは幅広い用途に使用できることから国内全体使用量の約7割を占めています。

混合セメントの種類には、高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメントがあり、これらのセメントはポルトランドセメントに各種の混合材を混ぜて作ります。

エコセメントは2002年に制定され、都市ごみ焼却灰や汚泥等を主原料として再資源化することで、廃棄物処理負荷の低減に繋がる新しいセメントです。また、性能も普通ポルトランドセメントとほぼ同等です。

② 砕石及び砕砂

コンクリート用砕石及び砕砂の規格は、「JIS A 5005」に規定しています。

砕石及び砕砂は、砂や砂利とは異なり天然の岩石を砕いて人工的に粒度や粒形を調整して製造します。

③ 化学混和剤

コンクリート用化学混和剤の規格は、「JIS A 6204」に規定しています。

AE剤、高性能減水剤、硬化促進剤、減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤について規定しており、主として界面活性作用によりコンクリートのワーカビリィティー、強度、耐久性などの諸性質を改善するために使用します。

2-3  製造設備

生コンクリートを製造するために使用する設備は、各材料の貯蔵設備、計量設備、練り混ぜ設備及び運搬車になります。

① 材料貯蔵設備

セメント、骨材、混和剤の貯蔵設備は、種類別及び区分別に貯蔵し管理しなければなりません。セメントは風化防止のため、気密性・防湿性のあるサイロに貯蔵し、骨材は雨や異物の混入を防止できるサイロやストックヤードに貯蔵します。また、混和剤は沈降・分離を防止できる攪拌機を備えたタンクに貯蔵します。

② 材料計量設備

セメント、骨材、水、混和材料は、それぞれ別々の計量器によって計量しなければなりません。ただし、水はあらかじめ計量してある混和剤と一緒に累加計量ができます。

③ 練り混ぜミキサ

コンクリートの練り混ぜミキサは、「JIS A 8603-2」又は「JIS A 5308」の規定に適合した固定ミキサを使用します。ミキサの種類は、重力式ミキサ、強制練りミキサがあり強制練りにはさらに、水平一軸形、水平二軸形、パン形があります。

④ 運搬車

生コンクリートの運搬車をトラックアジテータといいます。トラックアジテータは運搬中にも練り混ぜたコンクリートを十分均一に保持し、材料の分離を起こさず、荷卸し地点で完全に排出できる性能を備えてなければなりません。また、スランプ2.5㎝の舗装コンクリートを運搬する場合のみダンプトラックを使用できます。

3. 試験方法

JISでは、それぞれ各材料やフレッシュコンクリートの品質を検査するための試験方法が規定されています。

3-1.  材料

生コンクリートの配合設計に必要な各原材料の物性値を把握するための試験方法の規格を以下に示します。

① セメント

セメントの密度、粉末度、凝結、安定性、強さ試験及びフロー試験の物理試験方法は「JIS R 5201」に、風化の程度を知る指標の強熱減量、コンクリートの耐久性に係わるアルカリ量や塩化物イオン濃度などの化学分析試験方法は「JIS R 5202」に規定しています。

② 骨材

骨材の試験項目には多くの試験があります。代表的な試験は、骨材の粒度を確認するふい分け試験「JIS A 1102」、骨材の密度と吸水率を確認する試験「JIS A 1109(細骨材)」、「JIS A 1110(粗骨材)」、骨材の単位容積質量及び実積率を確認する試験「JIS A 1104」、骨材の微粉末の量を確認する微粒分量試験「JIS A 1103」などがあります。

③ 水

練り混ぜ水の試験方法は「JIS A 5308 附属書C」に規定されており、上水道水、上水道水以外の水、回収水の3区分に分かれています。

上水道水は、特に試験を行わなくても使用が可能です。また、一般的に使用されている上水道水以外の水には、河川水、湖沼水、井戸水、地下水、工業用水などの種類があり、試験項目は懸濁物質の量、溶解性蒸発残留物の量、塩化物イオンの量、セメントの凝結時間の差、モルタルの圧縮強さの比があります。

回収水は、工場の練り混ぜミキサや運搬車から排出された洗い水から骨材を取り除いたもので、上澄水とスラッジ水に分かれます。

④ 混和材料

混和材料の試験方法はコンクリート用フライアッシュ「JIS A 6201」、膨張材「JIS A 6202」、化学混和剤「JIS A 6204」、防せい剤「JIS A 6205」、高炉スラグ微粉末「JIS A 6206」、シリカフューム「JIS A 6207」があります。

また、通常の生コンクリートに必ず使用されている化学混和剤の試験項目には、減水率、ブリーディング量の比と差、凝結時間の差、経時変化量、圧縮強度比、長さ変化比、凍結融解に対する抵抗性、塩化物イオン量、全アルカリ量があります。

3-2.  生コンクリートの品質検査

生コンクリートの品質検査は、品質確認用のため製造後に工場で行う「工程検査」と購入者に対して品質の確認及び保証をするため荷卸し時に行う「製品検査」があります。

① スランプ

スランプとは、生コンクリートの軟らかさの程度を表しており、スランプ値が大きい程、流動性があり軟らかいコンクリートになります。管理値は「JIS A 5308」に、試験方法は「JIS A 1101」に規定しています。

② 空気量

生コンクリートには、強制的に空気を入れています。空気は、通常生コンクリートの体積に対し3~6%入っており、空気を入れることで生コンクリートの作業性を改善し、硬化後の耐久性(耐凍害性等)も向上させます。管理値は「JIS A 5308」に、試験方法は「JIS A 1128」に規定しています。

③ コンクリート温度

コンクリート温度の測定は「JIS A 5308」には購入者と生産者との協議事項となっています。しかし、施工現場での受入れ試験では必ずスランプ試験、空気量試験と合わせてコンクリート温度も測定しています。管理値は建築、土木分野で多少異なり、JISでは、測定方法を「JIS A 1156」に規定しています。

④ 塩化物含有量

コンクリート中に塩化物が多く含まれていると、コンクリート構造物中の鉄筋に致命的なダメージを与え腐食を進行させてしまいます。塩化物は、セメント、水、砂、混和材料に含まれているため、塩化物総量として「JIS A 5308」に管理値が規定されています。また、試験方法は「JIS A 1144」に規定されていますが、測定が迅速性に乏しく検査が容易に行えないため「JIS A 5308」では、精度が確認された第三者機関の塩化物測定器を用いてもよいとなっています。

4.  まとめ

生コンクリートのJIS規格には、使用材料、製造方法、品質検査など試験項目が多種多様です。コンクリートは硬化後に不具合が生じても費用を含め多大な負担が発生します。そうした不具合を発生させないためにも、製造工場は生コンクリートの段階で所要の性能を有するよう徹底した品質管理を実施しなければなりません。

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