軽量コンクリートの種類とメリット・デメリットを解説

一般的に使用されている普通コンクリートの単位容積質量は2.3t/m3程度ですが、確かに建設材料の中では重い部類に入るでしょう。そんな重いコンクリートを軽くしたものに軽量コンクリートがあります。

軽量コンクリートとは、一般に比べて単位容積質量の小さなコンクリートの総称です。

では、軽量コンクリートはどのような特徴を持ち、どういう構造物に使用されるのでしょうか。ここでは、その種類や品質、そして採用する場合のメリットとデメリットについて説明します。

Basilisk
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1.軽量コンクリートの種類

軽量コンクリートは、普通骨材より軽い骨材を用いた軽量骨材コンクリートと、多量の気泡を混入した軽量気泡コンクリート(発砲コンクリート)に大別されます。

(1)軽量骨材コンクリート

軽量骨材コンクリートとは、構成材料である砂利や砂を密度の小さい(軽い)ものとしたコンクリートで、軽量骨材の種類としては天然軽量骨材と人工軽量骨材が代表として上げられます。

天然軽量骨材は主として火山の噴火に伴って噴出した軽石や火山礫などで,人工軽量骨材は,頁 (けつ) 岩を高温で焼いて膨張させるとか,フライアッシュを造粒して焼成,あるいは蛭 (ひる) 石を加熱膨張させることによって得られます。

現在、わが国で使用されている軽量骨材は、殆どが膨張頁岩系の人工軽量骨材です。この膨張頁岩系の人工軽量骨材が採用される理由は、JIS A 5002(構造用軽量コンクリート骨材)に規定されている品質基準に適合しており、天然軽量骨材より非常に管理がしやすいためです。なお、建築学会における軽量コンクリートの仕様は、骨材の一部、または全部に人工軽量骨材を用いることを限定としています。

(2)軽量気泡コンクリート(発砲コンクリート)

軽量気泡コンクリートとは、発泡剤で多孔質化したコンクリートのことをいい、ALC(Autoclaved Lightweight Concrete)とも呼ばれています。

ALCは工場において、石灰質材料とけい酸質材料を微粉末にして水と混ぜ、発泡剤を添加し気泡をつくり、固まった後に高温・高圧蒸気釜(オートクレーブ)で採熱養生して硬化させて製作します。その特徴は、気泡などの空隙部分が全容積の80%を占めるため、比重が0.5と非常に軽い材料になります。

ALCの代表的な製品としてALCパネルがありますが、非常に軽い材料であるため強度が小さく、主として鉄骨ALC構造の非耐力壁として使用されます。

2.軽量骨材コンクリートの品質

建築工事標準仕様書・同解説 JASS5(日本建築学会2009年版)を参考に、人工軽量骨材を使用した軽量コンクリートの品質をまとめました。

(1)軽量コンクリートの単位容積質量

人工軽量骨材を使用した軽量コンクリートの重さについて、普通コンクリートと比較をしてみました。

表―1コンクリートの単位容積質量比較

コンクリートの種類

気乾単位容積資料の範囲 (t/m3)

軽量コンクリート1種

1.8~2.1

軽量コンクリート2種

1.4~1.8

普通コンクリート

2.3~2.4

 

人工軽量骨材を使用した軽量コンクリートの種類には1種と2種がありますが、粗骨材の全てに人工軽量粗骨材を使用し、細骨材のすべてに普通細骨材を用いるものを軽量コンクリート1種、粗骨材の全てに軽量粗骨材を使用し、細骨材の一部または全てに軽量細骨材を使用しているものを軽量コンクリート2種として区別されています。

普通コンクリートとの比較において、1種で約10~20%、2種で約20~40%の質量低減が可能となります。

(2)軽量コンクリートの設計基準強度

設計基準強度は1種で36N/mm2以下、2種で27N/mm2以下で、1種においては、普通コンクリートの設計基準強度と同等の値となっています。既往の実験結果によると、軽量コンクリート1種の圧縮強度の上限は、60~70N/mm2程度発現するようですが、強度以外の諸性能や施工上の技術的問題についての情報が少ないため、上限値が設けられています。

(3)軽量コンクリートのスランプおよび空気量

軽量コンクリートのスランプは21cm以下、空気量は5.0%を標準としており、普通コンクリートより若干大きい値となっています。

スランプにおいては、単位容積質量が小さいことで、施工時に細部まで確実に充填するためには、普通コンクリートより大きく(軟らかく)する必要があること、そして、人工軽量骨材は粒形が良く、粗骨材の最大寸法も小さいため、スランプを普通コンクリートより若干大きくしても、材料分離が生じないことが理由としてあげられます。

空気量が5.0%と規定されている理由は、人工軽量骨材は内部に空隙を多く含み、含水量が多くなっているため、凍結時の膨張圧が大きくなる傾向にあり、同一の空気量では普通コンクリートに比べて凍結融解抵抗性が劣るためです。よって、普通コンクリートの4.5%より若干大きくしています。

3. 軽量コンクリートのメリット

①建物を軽くすることができ、建築のトータルコストの低減が可能となる。

軽量コンクリートを使用することで、建物の重量が軽くなると地震力や基礎への負担が減り、建築のトータルコストを低減することが可能となります。

②断熱性が優れている。

熱伝導率は普通コンクリートの約1/2。よって、断熱性が高く冷暖房費の節約に繋がります。

③自己養生の効果が期待できる。

軽量骨材中に含まれている水分が、長期間にわたってコンクリートの水和に寄与します。このため、養生が困難な構造物でも所定の強度が発現しやくなります。

4. 軽量コンクリートのデメリット

①製造できる生コン工場が限定される。

設備上の問題から、軽量コンクリートを製造できる生コン工場が限定されるため、生コン車の運搬可能範囲において製造可能な工場を予め調査する必要があります。

②施工時のコンクリートポンプ圧送に注意を要する。

コンクリートポンプ車用いて打設する場合、人工軽量骨材が圧力により吸水しやすいため、スランプ低下や輸送管内での閉塞が生じる場合があります。よって、骨材の事前吸水や単位セメント量および細骨材率の配合修正、施工面ではポンプ車の適正な選定が必要になります。

③許容応力度が普通コンクリートより小さい。

軽量コンクリートは軽いという特徴から、地震力に対して有利に思えますが、構造体を設計する際、弱点があることを忘れてはいけません。その一つが許容応力度です。軽量コンクリートは、普通コンクリートに比べてせん断許容応力度が0.9倍しか採用することができません。鉄筋コンクリート造においては、せん断破壊は最も注意すべき破壊形式なので、せん断許容応力度が低減されると設計時に神経質にならざるを得ないのではないでしょうか。

また、スラブ配筋では、普通コンクリートの場合と比べて、鉄筋の最低ピッチに違いがあることにも注意を要します。

5. 軽量コンクリートの種類とメリット・デメリット

軽量コンクリートは,輸送費の軽減,軽量化に伴うトータルコストの節約,高層化が可能になるための土地の節約などを考えると、総合的な建築の効率化に役立つといわれています。しかし、軽量コンクリートは、柱や梁などの構造部材に使用することは可能ですが、構造上の様々な制約や施工上のデメリットもあることから、採用には十分な検討が必要と考えます。

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