マンションのひび割れのリスクと修繕について解説

マンションの壁や窓、バルコニー部分などを見渡すと、コンクリート面にひび割れが発生しているのを見つけることがあるかと思います。

ひび割れ、というと構造的な欠陥があるのではないか?建物の強度低下してしまうのでは?と心配をされる方もいるかもしれませんが、すべてのひび割れが建物にとって危険なものというわけではありません。

この記事では、コンクリートに生じるひび割れの種類と原因、危険なひび割れの見分け方や修繕の方法について紹介します。

1. マンションの構造はどのようなものがあるか?

建築物の構造の種類には、木造、鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造などがあります。

それぞれの構造にはメリット・デメリットがあり、建物の用途と階数、建築コストなどを総合的に判断して設計者が種類を決定します。

木造建築は耐火性と法令の関係から、一般的には2~3階建ての建物が主流で、稀に4階建てに使用されることがあるようです。

よって、4階建て以上のいわゆるマンション建築は鉄骨造、鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造で建てられています。

1-1. S造(鉄骨造)

鉄骨造は、コンクリート製の基礎の上に鉄骨の骨組を組み上げた構造で、建物自体を軽量化できたり現場での作業工程を減らせることで工期が短くできるなどのメリットがあります。

一方、建物内部の壁をパネル材で仕切るため防音・遮音性が悪いなどのデメリットがあり、分譲マンションではほとんど鉄骨造は採用しません。

1-2. RC造(鉄筋コンクリート造)

コンクリートの内部を鉄筋で補強することで、引張り力に弱いコンクリートの弱点を補った構造で、マンションなどの高層建築に最も多く用いられている建築手法です。

耐震性や耐久性に富み、耐用年数が長いというメリットがあります。

デザインの自由度も高く、また内部の間仕切りもコンクリートで作ることができますので防音性や耐火性、断熱性にも優れています。

1-3. SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)

SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)は、RC造(鉄筋コンクリート造)に鉄骨を組み合わせた構造で、あらかじめ組み上げた鉄骨の骨組みの周りを鉄筋コンクリ―トで補強する工法です。

柱や梁が変形に強くなるため耐震性が非常に高い構造で、以前は高層建築を中心に用いられてきました。

しかし、RC造に比べ工程が複雑化するため工期が長くなり、建築コストも高くなるというデメリットがあります。現在はRC造の技術が発達したため高層建築でもRC造で建てられることが多くなっています。

2. コンクリートのひび割れの種類

ここからは、コンクリートに発生するひび割れの種類と原因について、主なものを紹介します。

2-1. 乾燥収縮によるひび割れ

コンクリート表面が乾燥して収縮することで発生するひび割れで、コンクリートに見られるひび割れのうちかなりの割合は乾燥収縮によるものと言えます。

コンクリートを打ち込んだ後間もない時期(2~3か月程度)に発生することが多く、横長の部材では縦方向に直線状のひび割れが発生し、壁などの開口部では開口の隅から放射状に発生します。

コンクリート中の余剰な水分が抜けるまでには2~3年かかると言われており、発生時は幅の小さいひび割れも時間の経過とともに拡大するケースがあります。

2-2. 温度変化によるひび割れ

コンクリートは温度変化で伸縮するため、その際の変形を鉄筋や地面、柱や梁などで拘束されると自由に伸び縮みすることができずひび割れを生じます。コンクリートの熱膨張係数は約10×10-6/℃で、長さ10mのコンクリートの壁部材は、30℃の温度変化を受けると約3㎜伸縮します。

2-3. コールドジョイント

コンクリートを型枠に打ち込む際に、先に打ち込まれたコンクリートと後に打ち込まれた層が一体化しなかった場合、硬化した後にその部分が打ち継ぎ跡となって残ります。この部分はコールドジョイントと呼ばれ、乾燥収縮などのひび割れの起点となったり水密性が低いため漏水の原因になったりします。

コールドジョイントは一般的には、施工時の締固め作業が不十分な場合に発生します。

2-4. 鉄筋の発錆によるひび割れ

コンクリートのアルカリ性が空気中の炭酸ガスによって徐々に中性化されると、コンクリートが鉄筋を錆から守る保護膜が弱くなり、鉄筋に錆が生じます。鉄筋は錆によって膨張するため内部からコンクリートを押し割りひび割れが発生します。

コンクリートに何らかの原因でひび割れが生じ、外部から水や酸素が浸透して鉄筋に接触することでも鉄筋の錆は生じます。

2-5. 凍結によるひび割れ

寒冷地ではコンクリートに浸透した水分が凍結と融解を繰り返すことで凍結膨張圧によってコンクリート中に微細なひび割れを生じさせます。

凍結融解のサイクルが繰り返され微細なひび割れが発達することで、徐々にひび割れは拡大し、それとともに表面の剥離なども生じさせます。

3. マンションのひび割れとは?種類と症状

マンションで最もよく見られるひび割れは窓枠などの開口部まわりの放射状ひび割れです。

このひび割れはコンクリートの乾燥収縮が原因で、収縮による引張応力が開口部で縦・横の両方向に働くため斜め方向に発生するものです。

開口部は鉄筋で補強されているため、この種のひび割れが原因で建物の強度低下を引き起こすことはありません。

建物の強度低下や耐久性の面で危険が疑われるひび割れの特徴は、

  • ひび割れから茶色の錆汁や白い変色物(エフロレッセンス)が垂れている
  • 柱や梁に発生した遠くからも目立つようなひび割れ
  • バルコニー床に、建物と平行に発生したひび割れ

これらのひび割れを見つけた場合は、マンションの管理会社に連絡し点検をしてもらうのが良いでしょう。

4. マンションのひび割れのリスク

鉄筋コンクリートや鉄骨鉄筋コンクリートで造られた建物は、適切な維持管理や修繕を行っていくことで60年~70年、最近の建物であれば100年以上の耐用年数があります。

維持管理が行き届いていないマンションは、建設後30年や40年を過ぎた頃から老朽化が急速に進んでいくことがあります。

そうすると当初計画より修繕費がかさんでしまったり、外壁部分に目立つひび割れがある場合などは中古資産価値の低下に繋がる可能性もあります。

5. マンションのひび割れの補修工法

マンションの外壁部などにひび割れが生じた場合、どのような修繕を行うのでしょうか?

ここではひび割れ幅に応じた補修工法を紹介します。

①ひび割れ被覆工法

ひび割れ被覆工法は、一般にひび割れ幅が0.2mm以下の微細なひび割れの処置に用いられます。ひび割れ上に追従性に優れた被覆材や防水材料、目地材などを塗布や貼り付けをする工法です。

②ひび割れ注入工法

ひび割れ注入工法は、注射器状の治具やグリースポンプなどを使いひび割れ内にエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂系接着剤やセメント系補修材を注入することでひび割れを閉塞する工法です。

適用できるひび割れ幅が0.2mm~1.0mmと広く、注入する材料も多様であるためコンクリート構造物全般のひび割れ補修工法として最も普及しています。

③充てん工法

充てん工法は、ひび割れ幅が1.0mm以上などの比較的大きなひび割れの補修に適しています。コンクリートをひび割れに沿ってV型やU型断面にカットし、そこに補修材を充てんさせる工法です。

温度変化や振動によるひび割れ幅の挙動の大小によって充填材料を使い分けます。

ひび割れ幅が大きくなると、ひび割れ内部に水が浸入することで鉄筋に錆が発生している可能性もあります。そのような際は、腐食した鉄筋の奥までコンクリートを除去し、鉄筋の錆を落としてから、鉄筋を防錆処理した後補修材で断面を修復します。

マンションには専有部分と共有部分があります。専有部分はマンションの壁や内部仕切り壁などの事で「住居空間」のことを指します。この専有部分にひび割れなどが発生した場合、基本的には補修の責任は部屋の所有者にあります。

一方住民が共有で使う部分は「共有部分」といい、共有部分の修繕責任は、マンションの管理組合がもちます。

専有部分の補修に関しては、築年数が浅い場合には建築会社のアフター保証の適用になる可能性がありますので、まずは管理会社に問合せるのが良いでしょう。

6. まとめ

コンクリートのひび割れには様々な原因がありますが、マンションの外壁や表面に見られるひび割れは乾燥収縮によるものがほとんどです。

乾燥収縮が原因のひび割れで幅が大きくない(0.3mm以下程度)のであればすぐに建物の劣化や何らかの問題を引き起こすことはありません。

しかし、ひび割れから錆汁やエフロレッセンスが発生している場合は要注意です。

管理会社や信頼できる調査機関に調査を依頼するのが良いでしょう。

ひび割れに対して応急処置として補修材を塗ったり、防水シールを貼り付けたりする方法もありますが、あくまで一時的な対応と考え、早めにきちんとした対応をとりましょう。