ポンプ車の圧送計算

コンクリート構造物を施工する際に生コンクリートを現場内で運搬する方法は様々ですが、大規模な構造物や作業所内で生コンクリートの運搬距離が長い場合などではコンクリートポンプ車(以下ポンプ車と呼ぶ)を使用することが多いかと思われます。ポンプ車を使用するとコンクリートの打込み効率も上がり大変便利なのですが、事前に十分な施工計画を立てることやポンプ車の能力を計算する必要があります。今回はポンプ車の圧送能力の計算について説明します。

表現としてポンプ車による圧送は現場内の運搬に含まれるため、本文中では圧送と運搬を同じ意味で使用します。

1. ポンプ車とは

ポンプ車は生コン車が荷卸しした生コンクリートにポンプで圧力をかけることで、離れた作業箇所まで生コンクリートを運搬する機能(圧送機能)を持った作業車です。ポンプ車の大きさや種類、能力によって運搬距離も変わりますが、日本建築学会 建築工事標準仕様書・同解説(以下JASS5)によると運搬可能距離は水平方向で500mまで、垂直方向では120mまでとされています。※

ポンプ車による施工が主流となる前は、現場内をバケットや一輪車などで生コンクリートを運搬していたので、そのことを考えるとポンプ車の登場で施工の効率は格段に上がったと言えます。またポンプ車による施工では生コンクリートにある程度の軟らかさが求められるため、それまでよりも単位水量と単位セメント量が多い配合が使用されるようになりました。

※圧送業者によると一般的なポンプ車であれば水平方向の圧送可能距離は100m程度となります。条件によっては圧送可能ですがそれ以上の距離であれば、運搬距離が長くなればなるほど生コンクリートの打設量は極端に減少するとの事です。配管専用車など特殊な場合は紹介した以上の能力を有する場合もあります。

2. 生コンクリートの圧送計算

ポンプ車の能力(圧送可能距離)について軽く触れましたが、どのような条件のもとでも上記した距離の運搬が可能かと言うとそうではありません。配管の径や長さ、高低差などの条件によって異なります。また使用する生コンクリートの配合によってもポンプ圧送時の負荷が異なります。

そのため、施工計画においてどの程度の能力を有するポンプ車を選定するかが大変重要となります。ここでは生コンクリートの圧送時にかかる負荷の計算方法を紹介します。

なお、土木学会 コンクリート標準示方書(土木学会示方書)及び、日本建築学会 建築工事標準仕様書 5 鉄筋コンクリート工事(JASS5)ではいずれも、計算で求めた最大圧送負荷に対して、1.25倍以上の吐出圧力を必要としています。

2-1. 土木学会示方書による方法

まず土木学会示方書による計算方法を紹介します。

この方法は生コンクリートの圧送に用いる各種の輸送管および輸送方向を水平換算距離として算出する方法です。

表 水平換算係数 (土木学会示方書)

上の表は計算に用いる換算係数の一覧表です。

例えば125Aの垂直管が5mであれば、5m×4(換算係数)で水平管20mとして換算していきます。輸送管の配置状況に応じてこのように換算した数値を合計していくと全ての輸送管を水平距離に換算した数値が得られます。

ここで得られた水平換算距離に管内圧力損失をかけると最大圧送負荷が算出されます。

求められるポンプの性能は最大圧送負荷の1.25倍ですので、最大圧送負荷×1.25がポンプ車に必要な最低限の能力ということになります。

管内圧力損失は参考となるデータがいくつか存在しますが、ここでは土木学会示方書によるグラフを紹介します。

吐出量と管内圧力損失との関係(普通コンクリートの場合) 土木学会示方書より

 

例 時間当たりの吐出量が30(m3/h)で圧送する生コンクリートのスランプが12cm、使用する輸送管が100Aで水平換算距離が100mである場合

1m当りの管内圧力損失はグラフよりおおよそ0.02N/mm2と読み取れるので、求められるポンプ車の性能は

0.02×100×1.25=2.5N/mm2 となります。

2-2. JASS5による方法

次にJASS5による計算方法を紹介します。

この方法は各種輸送管の管内圧力損失およびコンクリートの自重による圧送負荷を算出する方法です。

圧送負荷の算定は

P=K(L+3B+2T+2F)W0H×10-3で計算されます。

P:コンクリートポンプに加わる圧送負荷 (N/mm2)
K:水平管の管内圧力損失 (N/mm2/m)
L:直管の長さ (m)
B:ベント管の長さ (m)
T:テーパ管の長さ (m)
F:フレキシブルホースの長さ (m)
W0:フレッシュコンクリートの単位容積質量(t/m3)に重力加速度(10m/s2)を乗じたもの(kN/m3)
H:圧送高さ (m)

水平管の管内圧力損失KはJASS5に示される値を用いて計算します。土木学会示方書による計算方法と同様に、配管の条件から各管の長さの合計値を計算式内の相当する箇所に代入すると圧送負荷(P)が算出されます。ポンプ車の選定は計算で得られた結果の1.25倍以上の最大理論吐出圧力を有するものとなります。

3. ポンプ圧送に関わる条件

圧送計算の方法として2つの方法を紹介しましたが、これらの計算結果はポンプ車の能力を判定するのに有効です。しかし配管やポンプ車の能力以外にも生コンクリートの圧送に大きく関わる条件がいくつかあります。ここでは生コンクリートの圧送に関わるその他の条件についていくつか説明します。

・距離によるスランプの低下

場内運搬としてポンプ圧送を行う場合、圧送に伴いスランプが低下することが知られています。土木学会示方書によると水平換算距離が50~150mでテーパ管を使用し100A以下の配管を接続した場合0.5~1㎝、水平換算距離が150~300mだと更に1㎝スランプが低下するとされています。

・気温によるスランプの低下

日平均気温が25℃を超える場合は距離によるスランプの低下に更に1㎝を加えます。

・ポンプ圧送による材料分離

ポンプ圧送において検討するべき点として、生コンクリートの材料分離抵抗性が挙げられます。材料分離抵抗性はコンクリートの粘性に由来し、配管内での閉塞に大きく関わります。セメント量が多いほど、細骨材中の微粒分量が多いほど粘性が増大し材料分離抵抗性は高まり、逆の場合は低下します。

シンダーコンクリートなど比較的セメント量が少ないコンクリートを圧送する際に、ポンプ車の能力は十分であるにも関わらず配管内で閉塞が起こったために施工が中断したという例を耳にすることがあります。使用する生コンクリートの配合と圧送する距離を事前に確認し、閉塞の可能性がある場合には配合を変更するか圧送条件を検討し直すことも重要です。

・粘性が高いコンクリート

一般的に粘性が高いコンクリートは材料分離抵抗性が高く、閉塞を起こしにくいとされています。しかし高強度コンクリートや高流動コンクリートの場合は特に粘性が強く圧送負荷も大きくなるため注意が必要です。

水セメント比45%以下のコンクリートになるとスランプが同じでも使用材料によって粘性が広範囲を示すため、圧力損失を計算によって求めることは困難とされています。JASS5ではこれらのコンクリートの圧力損失を求めるには、フレッシュコンクリートの塑性粘度との関係で評価するか圧送試験を実施することを推奨しています。

4. まとめ

ポンプ車の圧送計算とそれに関わる条件について説明しました。ポンプ圧送は打込まれるコンクリートの品質や施工効率を左右する重要な作業で「コンクリート圧送施工技能士」の国家検定試験も実施されており、ポンプ圧送が構造物の品質に大きく関わることが分かります。構造物に要求される耐久性や性能を確保するには、施工計画・適切なポンプ圧送・生コンクリートの品質管理それぞれが重要で、どれか一つが欠けても成立しないことは言うまでもありません。

コンクリート構造物の高層化や長寿命化が進み、施工技術も日々進歩し続けていくとともにポンプ圧送技術も同時に進化し続けています。高度経済成長期に造られた構造物の建て替えや都市の再開発なども進められており、ポンプ圧送の需要は続くとされています。ポンプ圧送は今後の日本のインフラ整備や建設工事を支える大きな役割を背負っているのです。