生コンクリートの運搬時間と品質の変化をわかりやすく解説!

皆さんが街中で目にするミキサー車。このミキサー車は背中の大きなタンク(ドラム)の中に、まだ固まっていないドロドロの状態のコンクリート、生コンクリートを積んで工事現場を目指し走っています。

ドロドロの生コンクリートは、いつ固まってカチカチの石のように変化するのでしょうか?

実は生コンクリートは時間とともに次第に軟らかさを失い、コンクリート工場で練り混ぜられてから3~5時間後には、こわばってスコップなどが刺さらない位の固さになります。

そうなってしまっては作業ができないので、工事現場で品質を保った生コンクリートが使用できるように運搬時間や使用時間に規定が設けられています。

この記事では、時間の経過とともに生コンクリートに現れる品質変化について、また生コンクリートの運搬時間や使用時間の規定について解説していきます。

(この記事中の各種規定は、平成29年11月時点のものです)

1. 運搬時間と生コンクリートの品質変化

先ほどお話したように、生コンクリートは時間が経つとともにこわばり始め、やがて作業不能な固さになるという品質変化を生じます。実は、それだけでなく生コンクリートの中に含まれる空気の量も変化していきます。

この章では、生コンクリートの品質変化と実際工事現場で使用する際の影響について少し掘り下げてお話します。

1-1. スランプ値の変化

コンクリートの軟らかさは、“スランプ値”という値で表し、単位はcmです。この値が大きいほど軟らかく流れやすい生コンクリート、と言えます。

時間が経過した生コンクリートはスランプ値が低下し、軟らかさを失っていきます。

特に暑い時期には運搬によるスランプ値の低下が大きく、コンクリートの温度が30℃、スランプ値が18cm程度の生コンクリートを1~1.5時間運搬すると、スランプ値は6cm程度低下する場合もあるようです。

1-2. 空気量の変化

運搬時間によるスランプ値の変化とともに、生コンクリート中の空気量も変化します。

生コンクリートに空気が入っているの?という方もいらっしゃるかもしれませんが、体積のおよそ3~6%程度の空気が生コンクリートには含まれているのです。

この空気には色々な効果があるのですが、一番の効果は「作業のしやすさ」というものに関わってきます。

これはアイスクリームとソフトクリームをイメージしてもらえると分かりやすいのですが、空気が多く含まれるソフトクリームはアイスクリームに比べてなめらかで、スプーンやヘラですくいやすいですよね?

生コンクリートも空気を含むことでなめらかで流れやすくなり、スコップやコテでの作業もしやすくなります。

この空気量も、運搬時間が長くなることで徐々に少なくなり、生コンクリートのなめらかさも失われて作業がしにくくなっていきます。

1-3. 大きく品質の変化した生コンを使用すると・・・

生コンクリートは、一般的に工事現場で作り上げたいものをかたどった型枠の中に流し込んで固められます。

その型枠の中にはコンクリートを補強する鉄筋も一緒に入っていて、生コンクリートが所定のスランプ値を下回っていると鉄筋に邪魔されて型枠の隅々まで行き渡ることができません。

こうしてスランプや空気量が低下したコンクリートを流し込むと、ジャンカと呼ばれる充填不良や、流し込んだコンクリートの層が一体化しない部分であるコールドジョイントといった不良を生じてしまいます。

2. 生コンクリートの運搬・使用時間の規定は?

コンクリート構造物にそのような不良を生じないために、各種の規格や基準類で生コンクリートの運搬時間や使用時間に規定を設けています。

2-1. JIS(日本工業規格) JIS A 5308の規定

まず、日本工業規格 JIS A 5308 レディーミクストコンクリートの規定です。

JIS A 5308(2014改正)の8.4 b)には、以下のように書かれています。

「レディーミクストコンクリートの運搬時間は,生産者が練混ぜを開始してから運搬車が荷卸し地点に到着するまでの時間とし,その時間は 1.5 時間以内とする。ただし,購入者と協議のうえ,運搬時間の限度を変更することができる。」

生コンクリートのJIS規格は、生産者が遵守する規格です。このため責任範囲は生コンクリートを荷卸しするまでで、練り混ぜを開始してから1.5時間以内に荷卸し地点に到着することとされています。

2-2. JASS5(2015年版) 日本建築学会の規定

JASS5とは、「建築工事標準仕様書・同解説 JASS5 鉄筋コンクリート工事」のことで、日本建築学会発行の建築工事の仕様書です。

こちらの2015年版には、コンクリートの使用時間の限度は(使用者の立場の基準なので、“使い終わるまで”です)、以下のように書かれています。

「コンクリートの練混ぜから打込み終了までの時間の限度は、外気温が25℃未満のときは120分、25℃以上のときは90分とする。ただし、凝結を遅らせる対策を講じた際は(後略)」

外気温が25℃未満のときは、生コンクリートが練混ぜ開始から1.5時間後に現場に着いても30分以内で使い切れば規定から外れませんが、25℃以上のときは練混ぜから1.5時間で現場に着いたらその時点で時間切れになってしまいますね・・・

2-3. コンクリート標準示方書(2012年版) 土木学会の規定

最後にコンクリート標準示方書、土木学会の規定にはどのように書かれているでしょうか。

「7.2 練混ぜから打終わりまでの時間

練り混ぜてから打ち終わるまでの時間は、外気温が25℃以下のときで2時間以内、25度を超えるときで1.5時間以内を標準とする」

先程のJASS5と同じに見えますね。

いや、ちょっと良く見て下さい。建築学会は25℃未満と25℃以上で分けていますが、土木学会は25℃以下と25℃を超える、で分けています。

しかもかたや建築学会は何分、で規定しているのに対して土木学会は何時間、で規定しています。

どうにもお互い片意地を張って、合わせないようにしているように見えて仕方ありません。なんとか統一してもらえないものでしょうか。

3. 運搬時間による品質変化への対応

このように運搬時間が長くなると品質変化が徐々に起こり、過度に品質変化したコンクリートを現場で使用すると構造物に不具合を生じる原因になってしまいます。

では、時間経過とともに起こる品質変化を小さくする方法はないのでしょうか。

また、品質の変化してしまったコンクリートはもう使えないのでしょうか?

3-1. 品質変化を小さくする方法

建築・土木両方の規定において、25℃を境にコンクリートの使用可能時間が分かれているように、コンクリートの品質変化に大きく影響を与えるものは温度です。

外気温によってコンクリート自体の温度が上がると、コンクリート中のセメントと水の反応(水和反応)の進行が早くなり、スランプの低下も早くなります。

このため、コンクリートの品質変化、特にスランプの変化を小さくするにはコンクリート温度を下げたり、温度上昇を防いだりすることが有効です。

具体的には、練り混ぜ時に冷却水を用いてコンクリート温度を下げる、ミキサー車のドラムに遮熱効果を持つカバーを巻くなどの対策が挙げられます。

また、コンクリートの練混ぜ時に使用する材料に「高性能AE減水剤」を選択することで、スランプの時間による低下を小さくすることができます。

3-2. 品質変化してしまった生コンの対処

では、現場でのトラブルや急激な気温上昇などで予想以上の品質変化、スランプの低下を起こしてしまったコンクリートはどうしたらよいのでしょうか?

そのまま用いて構造物の不具合を起こしてしまうと判断した場合は、そのコンクリートを廃棄して新たなコンクリートを注文する、という選択をするケースが多いかと思いますが、先に記載したJASS5ではスランプが低下したコンクリートの救済措置として、流動化剤(一時的にスランプを増大する薬剤)を添加しスランプを回復させて打ち込んでもよいとされています。

(決して現場で水を加えてコンクリートを軟らかくしてはいけません・・・)

ただし、この場合には事前に工事管理者と協議の上、承認を受けておく必要があります。

4. まとめ

ここまで生コンクリートの運搬時間と品質変化の関係、運搬や使用時間の規定についてまとめてきました。

  • コンクリートは時間とともにセメントと水の反応が進み、徐々に固まっていくこと
  • コンクリートのスランプの低下は、外気温が高いほど早く進むこと
  • スランプの変化を小さくするには、コンクリート温度の低下や高性能AE減水剤の使用が有効
  • 大きく品質の変化したコンクリートを使用すると、構造物の不具合の原因となる

生コンクリートは読んで字の通り“生もの”です。

“時間が経つと品質低下のおそれがありますので、お早めにご使用ください”