コンクリート打ちっぱなしの建物は、コンクリート表面に塗装やタイルを施さないことで、コンクリートの重厚感や素材感を前面に押し出します。
デザイナーズ住宅などで採用されることが多く、通常の住宅と比べて現代的でおしゃれな雰囲気を持つのが特徴です。
さらにコンクリート住宅は、木造住宅と比べて遮音性が高く、外からの音が入りにくいため、静かな空間で暮らしたい人に向いています。
もともと外部への音漏れが少ないため、さらに軽く防音工事を加えてやれば、楽器なども近隣住民の方々に気兼ねすることなく演奏することができるでしょう。
しかしそんなコンクリート打ちっぱなしの建物も経年による表面の汚れなどで補修が必要になるケースもあります。
この記事でわかること
1. コンクリートの打ちっぱなしで補修が必要になる状況とは
打ちっぱなしコンクリートの建造物は、柔らかい生コンクリートを木材で組み立てた型枠に流し込んで作ります。
固まったことを確認し型枠を外すと、コンクリート面が現れます。
この固まったコンクリート面に手を加えず、打ち上がったままの状態の仕上げが「打放し(打ちっぱなし)コンクリート素地仕上げ」となります。
固まったコンクリートに全く手を加えない状態で美しい仕上がりを実現するには、高度な技術と繊細な現場管理が必要となります。
しかし、細心の注意と高度な技術をもってしても、様々な不具合が発生してしまうのが現実です。
また、何も手を加えていない状態のコンクリートは、それ自体では耐久性や汚れ防止の機能はそれほど高くはありません。
このため、打ち上がったあとに最終的な仕上げ処理を施すことが必要となります。
打ちあがり直後に発生する不具合は主に次のようなものがあります。
豆板(ジャンカ)
コンクリート表面に砂利が露出して空洞が出来てしまう。
気泡(ピンホール)
コンクリート表面に空気が残存し小さな穴が出来てしまう。
コールドジョイント
数回にわけてコンクリートを流し込んだ場合、間隔を大きくあけると発生。コールドジョイント部分は一般に強度が低下すると言われています。
白華現象(はっかげんしょう)
正式には「エフロレッセンス」と呼ばれるもので、ひび割れなどから浸透した水分とコンクリート中の成分が反応し、表面に流れ出たものを言います。一旦付着したエフロレッセンスは、コンクリート表面に固着し、美観を大きく損ねてしまいます。
中性化(ちゅうせいか)
コンクリートは元々アルカリ性です。本来であれば、この特長のおかげでコンクリート内の鉄筋は錆びることはありません。
しかし、酸性雨や空気中の炭酸ガスに触れることで、コンクリート表面は次第に中性化し、ひいては鉄筋が錆びる原因となります。
錆汁(さびじる)
鉄筋が錆びてしまい、その錆が錆汁となってコンクリート表面に流下して表面に錆汁が染み付着した状態。
表面の剥離(ひょうめんのはくり)
中性化が進むなどして錆びた鉄筋は、膨張を始めます。その膨張圧によりコンクリートが破壊され、滑らかな表面が剥離し、ザラザラとした表面になってしまいます。
2. 整形補修と化粧補修
「打ちっぱなしコンクリートの補修」にはピンホールやジャンカといった穴を埋めるいわゆる「整形」を意味する補修と、その整形補修の痕跡や見た目に障る箇所をカムフラージュするためのいわゆる「化粧」を意味する補修の2つの区分けがあると言われております。
3. 基本的な補修の手順
斫り屋(はつりや)を要する整形
型枠の破裂・ズレによる大きな打設ミス ハンマードリルやカッターを要する補修は斫り屋さんに依頼することになります。
左官屋(さかんや)を要する整形
大きいジャンカや角周りの欠損など 左官コテや目地棒を要する補修は左官屋さんに依頼することになります。
誰でも出来る斫り・細部整形補修
タガネとハンマーで済むハツリ・塗装屋がするパテかいレベル乾燥後、サンドペーパー掛けるなど、ここまでが「整形」補修その後「化粧」補修として、部分化粧補修か全体化粧補修かを決定全体化粧補修の場合は色味の決定(白っぽくするか?黒っぽくするか?薄化粧?厚化粧?)
また、全体化粧補修の場合は模様をどうするか(粗め・細かめ?コントラスト比は?)保護材をどうするか(浸透性撥水材?造膜系シリコンクリア?)ピンホールを埋め、角を整えてサンドペーパーを掛ける事が良好な見た目を作る大切なステップになります。
この工程で手を抜くと完成度が落ちます。
5. コンクリート打ちっぱなしの補修はプロに任せたほうがいい
大きな設計ミスや大きい欠損の場合は斫り屋や左官屋に頼むことになります。
また、塗装でコンクリート打ちっぱなしの表面を再現するのも非常に高い技術が必要とされますので、規模に限らずまずはプロに相談するのが良いでしょう。
7. まとめ
コンクリート打ちっぱなしの建物は、劣化の損傷が比較的わかりやすいため、コンクリートの劣化状況をよく確認し、その状況に合わせた補修を行いましょう。