コンクリート打ちっ放し住宅は、大空間の設計が可能なデザイン性や遮音性、耐火性、耐震性、風・水害にも強いという大きなメリットがある反面、デメリットとして『冬は寒く、夏は暑い』『冬の結露がひどい』など、住宅としては決して住みやすい環境とはいえない意見があるようです。
ここではコンクリート打ちっ放し壁の、冬季における寒さの原因と対策について解説して行きます。
この記事でわかること
1. コンクリート打ちっ放し住宅について
最近街並みを歩いていると、コンクリートの打ちっぱなしマンションや一戸建が良く目に入ってきます。
スタイリッシュでモダンなデザインに多くの人が憧れ、『いつかは自分も』と考えている人は多いのではないでしょうか。
また、幅広いデザイン性、大空間を設計することが可能なことや、遮音性、耐火性・風・水害にも強く、耐震性にも優れているという実績からも大きなメリットがあると言えます。
しかし、一方で実際に住んでいる人や専門家の話を聞くと『冬は寒い、夏は暑い』とか『冬の結露がひどい』などあまり良い声を聞くことができません。
なぜその様なことが起きてしまうのでしょうか?
ここでは、その原因の追究とともに、コンクリート打ちっ放し住宅に『すでに住んでいる人』と『これから建てようと考えている人』への寒さ対策に対するちょっとしたアドバイスをしてみましょう。
1-1. 寒さ対策へのアドバイス
コンクリート打ちっ放し住宅での寒さに対する対策は、大きく2つに分けることができます。
それは、「外断熱方法」と「内断熱方法」です。
外断熱とは、外壁を断熱材で覆い断熱効果を高める方法ですが、湿式工法と乾式工法があり、どちらも外壁の表面に加工を施します。
湿式工法とは、コンクリートに直接断熱材を接着する方法ですが、軽量で透湿性を持つ断熱材を使用しなければなりません。
コンクリート内を通過して室外に流れる水分が断熱材に直接触れるためその通り道で凍結による凍害が起きると、耐久性が低下する可能性があります。
乾式工法とは、コンクリートに支持金物を取り付けて外装材を設置する方法です。
水分を排出する為の通気層を設けることが可能で、外壁と躯体の間の雨水等を通気層で乾燥させることができ、寒冷地に向いています。
それに対し内断熱とは、壁の部屋側に断熱材を設けて寒さから守る方法です
2. コンクリート打ちっ放し壁の寒さ対策【すでに住んでいる場合】
あなたがすでにコンクリート打ちっ放し住宅に住んでいる場合、特に建設されてから時間が経過している構造物では断熱材が使用されていない場合がほとんどであり、もし使われていたとしても、すでに劣化していて性能を十分に発揮できていないことが多いと考えられます。
これらのことからも、対策にはかなり大掛かりな改修になることに対しては、覚悟が必要です。
また外断熱方法はコストの面からもかなり難しいといえます。
よって内断熱方法が現実的でしょう。
しかし内断熱は、壁が断熱層のすぐ外側にある為、日射や放射冷却などによる温度の変化を受けて熱損出を大きくすることがあり、室内の温度を安定させる為に必要以上のエネルギーを要することになります。
また換気が不十分な場合、暖房による温度差がある室内空間などでは温度差が大きくなり、結露やカビを発生させる為、十分な換気が必要となります。
内断熱の場合、断熱材の充填は比較的簡単に出来ますが、場所によって充填しづらい部分の充填量のばらつきによって断熱効果が発揮できないことがある為、信頼できる施工業者を選定することが重要です。
3. コンクリート打ちっ放し壁の寒さ対策【これから建てる場合】
これから建てようと考えている方には、外断熱方法をお勧めします。
外壁がコンクリートの打ちっ放しの場合、常に外環境にさらされている外壁のコンクリートは四季の温度変化、太陽光や雨、風による影響を受け劣化が早まります。
外壁を断熱材で覆うことで、コンクリート表面を保護し劣化の進行を防ぐことも出来ます。
また断熱材によって外気温を外側で防ぐことに合わせ、コンクリートの蓄熱性の高さが作用することで、室内の温度を保つことが可能となります。
合わせて二重窓にすることで、開口部の断熱効果を上げることも出来、結露防止にもなります。
暖房に石油ストーブなどの燃焼系の器具を使用することは、水分を発生させる為、避けたほうが良いでしょう。
非燃焼系のエアコンやオイルヒーターで暖房するようにします。
最後に外断熱工法は、施工に慣れている業者が少なく、未だ確立された汎用工法が無いため、施工コストは内断熱と比較して高いのが現状です。
施工業者は、実績等を十分確認のうえ選定する必要があります。
4. コンクリート打ちっ放しの壁の特徴
ではなぜ、コンクリート打ちっ放し壁で建てた住宅に『冬は寒く、夏は暑い』『冬の結露がひどい』などの現象が起きてしまうのか、その原因について考えてみます。
① 室内の湿度が高くなる
コンクリートは、セメントと水の化学反応を利用して骨材と呼ばれる砂や砂利を固めているものですが、内部の余分な水分が完全に乾燥するまでには、一般的には2~3年、使ったコンクリートの配合や環境によっては5年以上かかることもあります。
よってこの期間は、木造住宅の室内と比較して コンクリート打ちっ放し住宅の室内湿度は非常に高くなってしまいます。
② 吸水性が高い
コンクリートは吸水性が高いことから、外壁が打ちっ放しで表面に何も処理をしていないと、雨水などの水分を内部に吸い込んでしまい、これがカビや汚れなどの原因となります。
また室内が打ちっ放しの場合、室内の水分を吸い、コンクリート壁の内部に溜め込み、やがては壁以外の室内のさまざまな部分にまでカビを発生させていくことになります。
カビが生えてしまった場合の対策を「コンクリート壁にコケやカビが生える原因と正しい清掃方法」こちらの記事で紹介しておりますので、参考にしてください。
③ 熱伝道率が高く保温性が高い
コンクリートは熱伝導率が高く保温性も高い性質を持った材料です。
ちなみにコンクリートの熱伝導率に対し、一般的な木造住宅の壁に使用されるサイディングボードは約22%、合板木材は約10%、レンガは約40%、タイルは約80%程度です。
熱伝導率が高いということは、夏季の外の高い温度だけではなく、冬季は冷気も吸収してコンクリート内部に蓄積するということになります。
更にコンクリートは保温性が高いことから、蓄積した熱や冷気がなかなか抜けていきません。
じつはこれが夏は暑く、冬は寒いといわれる大きな原因です。
コンクリート打ちっ放し壁の住宅での寒さ対策は、特に冬季の寒さが顕著な地域においては、現在のところ壁に断熱効果を持たせる方法以外は無いと言えます。
前段での説明のとおり壁断熱の方法には外断熱工法と内断熱工法の二通りがありますが、効果については外断熱が断然有利といえます。
5. コンクリート打ちっ放しの家はある程度覚悟が必要
もしあなたがデザインを優先したり、費用を安くする為に内外共に断熱材をどこにも設けることをしないと、『夏は暑い』『冬は寒い』環境で過ごすことをある程度覚悟しなければなりません。
昼間の外気温度は蓄熱作用の高いコンクリートに吸収され、なかなか放出されない為、夕方からの冷暖房付加が大きくなり、室内温度のコントロールも難しくなります。
したがって最低限、外又は内のどちらかの断熱工法を採用することが、快適に居住する秘訣です。
合わせて設計の段階で、空調の位置や部屋全体の空気の流れ、さらに遮光などにも気を配る必要があるでしょう。
コンクリート住宅の特徴を理解して万全な対策を!
ここまで、コンクリート打ちっ放し壁の冬季における寒さ対策について述べてきましたが、壁の材料としてコンクリートを使用した場合に寒さの原因となる、「湿度が高い」「吸水性が高い」「熱伝導率が高く保温性が高い」などは、コンクリートの壁を打ちっ放し使用にするのであれば、材料自身の特性であると割り切るしかありません。
しかしこれらも外断熱にすることで、デメリットを解消することが出来ます。
どうしても外観に打ちっ放し観をとこだわるのであれば、室内側のボードにクロスなどを施工し、断熱材を使用することである程度緩和することが可能です。
「コンクリート打ちっ放しの家はコストもかかり住みにくい」
ある面ではいえることかもしれません。
しかし、耐久性や耐火性、遮音性の向上、風・水害などには大変有利なことが実績からも立証されています。
また地震国である日本では耐震性に優れていることから、生命や財産を守ってくれるという一番のメリットを持っています。
コンクリート住宅は、外部を外断熱、内側を打ちっ放しなどの組み合わせなど、壁の断熱効果を高めることで、冬も暖かい快適な居住空間を楽しむことができるのです。