北海道建設新聞 2018年5月30日号

「コンクリひび自己治癒 バクテリアの代謝性質利用 炭酸カルシウム生成」

會澤高圧コンクリート(本社・苫小牧)は、コンクリートに配合された特殊なバクテリアの代謝性質を利用した「コンクリートのひび割れ自己治癒システム」を提案している。4月に発売した液体補修材のほか、今夏にも自己治癒型補修モルタルを市場投入。バクテリア混和型の自己治癒コンクリート材料の将来的な提案に向け、開発研究を進めている。

この技術は、オランダ・デルフト工科大のヘンドリック・M・ヨンカース準教授らが開発した。同大発のバイオベンチャー企業である、バジリスク・コントラクティングB.V.が販売。會澤高圧コンクリートが2017年に日本独占販売契約を結んだ。

技術の肝は、高いアルカリ耐性を持つ特殊なバクテリア。乾燥状態に置かれると胞子状の殻をまとい、200年の間休眠して生き続ける。水分との反応を契機に活性化し、酸素と栄養分を取り込んで個体数を増やしながら、炭酸カルシウムを生成する。

バクテリアは餌となる乳酸カルシウムと生分解性プラスチックからなる殻で覆い、1~2ミリのカプセル状にする。摩擦や水の影響を受けないカプセルに閉じ込められたバクテリアは、硬化するコンクリート内で休眠し続ける。

やがて、コンクリートにひび割れが発生すると、割れ目から浸透した水が、自然ともろくなった殻の内部に入り込んでバクテリアと反応。目覚めたバクテリアは酸素とカプセル内の餌を分解し、コンクリートと同成分である炭酸カルシウムを生成し、ひび割れを修復する。

さらに、生成過程で副産物として生まれる水と二酸化炭素がコンクリート内のセメント成分と反応し、さらなる炭酸カルシウムを作り出す。

アイザワ技術研究所の河田義郎研究員は「1次生成と、副産物による2次生成で炭酸カルシウムをつくり、加速度的にどんどんひび割れを詰めていくことが、他の技術にはないところ」と説く。

ひび割れ内に生まれた炭酸カルシウムは水密性を向上させ、空隙を減らして凍害やスケーリングを抑制。バクテリアが内部の酸素を消費するため、鉄筋腐食を抑える効果もある。

4月から販売している液体補修システム「ER7」は、バクテリアと餌を入れた液と反応促進剤の2剤で構成。床面に塗布・散布してその場で反応させる。1回の塗布で0.2~0.3ミリ、2~3回の塗布で最大0.6ミリのひび割れを修復する。

今夏発売予定の補修モルタル「MR3」は、バクテリアと餌が入ったカプセルを混ぜ込んだ。補修後の再劣化を抑制し、止水性能の回復や凍結融解抵抗性の向上に有効だ。

開発中の自己治癒コンクリート材料は、カプセルを生コンの練り混ぜ時に混入して使用する。すでに海外では、プレキャスト製の貯水タンクや現場打ち防火水槽で使われている。

バジリスク・コンストラクティングB.V.と共同で製品の調整を進めている。合わせて、効果の検証方法や構造物への適応の仕組みについても検討する。

ひび割れの自己修復技術の普及は、メンテナンスサイクルの低減と構造物の長寿命化につながる。床面向けのER7や壁面向けのMR3で市場の反応を探り、「JIS規格など一つ一つ問題をクリアしながら、新設構造物向けの自己治癒コンクリートの販売につなげたい」(河田研究員)と期待を寄せる。

北海道建設新聞

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