経済界(雑誌)2019年9月号(№1121)

北の大地の幕開け・北海道時代
欧米工科大学との戦略的提携が生む産業用ドローンの価値ある潜在力

今年5月、會澤高圧コンクリートは米MITの航空宇宙ベンチャーTFTと提携、長距離・大容量の産業用ドローンの共同開発に着手した。「欧米の最先端の研究を自社技術と融合し、時代の先手を取る新しい価値ある事業を生み出す」と語る會澤祥弘社長に、同社のドローン事業の将来戦略について伺った。

欧米の工科大学との提携で産業用ドローンを共同開発

「総合コンクリートメーカーとして、コンクリートの材料技術を極める姿勢は今後も変わらない。しかし今は勃興するテクノロジーが業界の垣根を破壊し、新たなビジネスモデルをどんどん生み出す時代。社内での技術開発をベースにしながらも外部とのオープンイノベーションを仕掛けていかないと。産業用ドローン開発もその一つです」

そう未来を見据えるのは、新たな技術や製法・製品を生み出すチャレンジでコンクリート業界をけん引する會澤高圧コンクリートの會澤祥弘社長。1935年に北海道静内で創業した同社は、100ニュートンを超える高強度コンクリートの開発や硬化時間を制御できるpMpコンクリートの開発などで存在感を示してきた。

近年は市場拡大が見込まれる産業用ドローンに着目し、新規参入。欧米の工科大学やスタートアップ企業と連携し、同社の独自技術を融合する形で共同開発を進めている。

「ドローンは『新しい作業ができる』といった概念だけが先行しているが、これまでコンクリート系インフラのメンテナンスに使える産業用ドローンはなかった。現に飛行時間15分程度、最大積載容量数キログラムの一般的な機体では、施工はおろか、重い機械を積むこともできない。また、人間が機体を1対1でマニュアル操作しなければならず、生産性が高いわけでもない。そこで、ジェネレーターをエンジンで駆動させて大きな推力と長時間の航行を可能にするハイブリッドドローンの技術に着目したのです」

今年5月に、米マサチューセッツ工科大学(MIT)発の航空宇宙ベンチャー、トップフライトテクノロジーズ(TFT)と提携、今夏をめどに長距離・大容量の産業用ドローンを共同開発し、コンクリート系インフラの監視や維持・補修等のサービス事業に乗り出す計画だ。

「高性能ライダーや4Kカメラなどの情報収集機器を搭載し、およそ10キログラムの荷物を運びながら1時間以上の連続の目視外飛行ができる。どうしてもやりたかったコンクリートの自己治癒材料の機械化施工への道を開く」

遠隔地のコンクリート構造物に液状の補修剤をドローンが自動で塗布して回る、いわば空飛ぶ施工ロボットの開発だ。

この「自己治癒マテリアル」は、ひび割れなどのコンクリートの損傷をバクテリアの代謝機能によってコンクリート自体が自動修復する機能のこと。蘭デルフト工科大学のバイオベンチャー、バジリスク・コントラクティングと提携して実用化を目指しており、年内にも国内での量産体制が整うところまで来た。

前述のとおり、コンクリート系インフラのメンテナンス需要は世の中に数多あるものの、実際に施工できる製品が少なくブルーオーシャンとなっている。同社の産業用ドローンはこの需要に応え、市場の先手を取る一手となる。これ以外にも、地上のデータを収集して付加価値の高い情報として提供する「地理情報システム」サービスの提供、大規模送電線網の目視外での自動監視、後述する大規模農地のモニタリングや農薬散布など、會澤社長はドローン活用の多様な可能性を模索している。

「北海道は農と共に生きる」道内の精密農業を支援

もう一つ、同社は農業が主産業である北海道の地場企業として、「精密農業」支援にも重きを置いている。

精密農業とは、持続可能な農業の実現に向けて2000年ごろに産まれた概念で、ITの活用で圃場の生育状態を観察・分析・制御し、作物の高品質化、低農薬化、省エネ化、安定的な収穫等につなげる管理手法。人の勘や経験に頼って行う従来型の農業から脱却し、水田の状態を機械で数値化して管理する。

「農業基盤はコンクリートでできている」と會澤社長が話すとおり、同社は水田の水管理に欠かせない落口枡でも業界トップのシェアを持つ。高品質な作物を育てるには、水田の状態や作物の育成状況を24時間・365日観察・管理しなければならない。例えばモグラがあぜ道に穴を掘って水が抜け、それに気づかなければ水田は干上がってしまう。この水位管理も産業用ドローンでできるという。

「現在はドローンから指令を出し、バルブの開け閉めをする製品の開発も進めている。これをネットワーク化すれば、人が田圃まで行かなくても、スマートフォンで田圃の状態を見て、どのバルブの開閉をするという判断ができる。水位管理だけでなく、農薬散布、灌漑用水用の点群データの収集等も可能になる。弊社の技術を使って北海道の地場産業である農業を支援したい」

コンクリート系インフラのメンテナンスや精密農業の支援にとどまらず、同社のドローン事業は業界をまたぎ、新しい価値ある事業を生むポテンシャルを秘めている。

経済界 9月号

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