コンクリートの耐寒剤(耐寒促進剤)の基礎知識と使用時の注意

現在コンクリート用の化学混和剤には多くの種類が存在し、その用途や性能によって使い分けられています。今回はその中で、寒冷地の冬期施工で主に使用される耐寒剤(耐寒促進剤)について説明したいと思います。

1. コンクリートの耐寒剤(耐寒促進剤)とは

コンクリートの初期硬化は温度による影響が大きく、低温時には硬化や強度の発現は遅くなります。コンクリートが初期凍害を起こした場合、その後適切な養生を行ったとしても長期強度の増進は期待できず、構造体に要求される性能や耐久性に問題が生じる可能性があるとされています。そのため、コンクリートが凍結する前に所要の強度※(一般的には5.0N/mm2)を確保することが重要です。

コンクリートの圧縮強度が5.0N/mm2以上に達すると初期凍害を受けることが少なくなるとされています。耐寒促進剤はセメントと水の水和反応を促進することで冬期や低温時に打設したコンクリートの初期強度を確保し、初期凍害を防止するために使用されます。

後に詳細を説明しますが、「耐寒」という言葉からコンクリートの凍結防止と考えられることがありますが、正確には「不凍」ではなく「凍結温度の降下」なので「コンクリートの凍結予防」といったイメージでとらえた方が良いかもしれません。

1-1. コンクリートの耐寒促進剤の種類

耐寒促進剤の働きは先に説明した通りですが、耐寒促進剤はその成分によって2つのタイプに分けられます。

まずタイプⅠは耐寒促進の成分のみならず、減水剤の効果と空気を連行する効果も併せ持つJIS A 6204 のAE減水剤促進形(Ⅰ種)に適合するものです。

タイプⅡは耐寒促進の成分のみで構成され、JIS A 6204 の硬化促進剤に適合するものです。

~特徴~

・タイプⅠ プラントで添加されることがほとんどで、「耐寒剤」と呼ばれるものはこちらになります。

・タイプⅡ プラント、現場のどちらでも添加できますが、減水効果や空気を連行する効果を持っていないため、コンクリート用化学混和剤と併用することが多いようです。

製品によっても異なりますが、耐寒促進剤の使用量はセメント100kgに対して3~5ℓ前後が一般的で、タイプに関わらず単位水量の一部に置換して配合計算を行います。

1-2. コンクリートの耐寒促進剤の成分

コンクリートの凍結温度を降下させるという点のみに限定すると、効果を得られる物質はいくつかあるのですが、実際に使用するとコンクリートに重大な問題を引き起こす可能性があります。

  1. 塩化カルシウム・塩化ナトリウム・塩化カリウム~塩化物が長期強度の発現に影響したり、鉄筋コンクリート中の鉄筋を劣化させる可能性があります。また、ナトリウムなどのアルカリ塩がアルカリ骨材反応に影響するとされています。
  2. 尿素~無塩・無アルカリで水溶性が高く、硬化促進の効果は優れますがコンクリート中の水酸化カルシウムの炭酸化を促進させ、アンモニアを発生させます。
  3. エチレングリコール~骨材の粘土質鉱物が溶け出し、セメントペーストと骨材の付着が弱くなることでコンクリートの強度低下を生じる可能性があります。

このように効果とその副作用を考慮すると、成分として使用できる物質は限られてきます。過去には塩化物を主成分とする耐寒促進剤が使用されたこともありましたが、やはり鋼材の腐食による構造物の劣化が問題となりました。

現在の日本では塩化物量やアルカリ量の規制により塩化物が主成分のものが使用されることはほぼありません。研究や開発が進み、市販されている無アルカリ・無塩化タイプの耐寒促進剤の主成分は亜硝酸カルシウムや硝酸カルシウムが多いとされています。

2. コンクリートの耐寒促進剤の働き

ここでは耐寒促進剤が実際にコンクリート中でどのように作用し、どのような効果を得られるのかを説明します。

2-1. 凍結温度と不凍水

通常、水は0℃で凍り始めますが、一般的なコンクリート中の水はセメントの成分などが含まれているためにおよそ-1℃で凍るとされています。それに対して耐寒促進剤を使用したコンクリートの場合は、凍結温度の降下作用により-2℃~-4℃程度になるとされています。この効果のおかげでコンクリートが凍結するまでの時間を延長できるので、その間に所要の強度が発現すれば初期凍害の防止に大きく役立つのです。

また、普通AEコンクリートを練上り直後に凍らせ、-5~-10℃まで温度を低下させた実験の結果、コンクリート中の水は20~25%程度が不凍結であるのに対して、耐寒促進剤を使用したコンクリートの場合は60~80%が不凍結であったことが明らかになっています。これは通常では多くの水が凍結してしまう環境下でも、耐寒促進剤の効果により不凍結の水がセメントと水和反応によって強度を増進させることを意味します。

耐寒促進剤はかつて防凍剤と呼ばれていましたが、凍結点の降下よりも硬化促進が重要であることが研究によって明らかになり現在の名称に至っています。

2-2. 耐寒促進剤と強度

耐寒促進剤を使用したコンクリートが低温環境下でも強度を増進させるのは前述の通りですが、実際の強度の発現はどのような経過をたどるか説明します。

まずは初期凍害に必要な圧縮強度5.0N/mm2を確保するのに要する積算温度ですが、耐寒促進剤を使用した場合、同じ水セメント比の普通AEコンクリートと比較して1~2割ほど、少ない積算温度となります。

その後の強度の増進においても耐寒促進剤を使用した場合は早強性が見られ、特にタイプⅠに関してはその後の強度増進も期待できます。

構造物の寸法や規模にもよりますが、住宅の基礎など部材が小さくコンクリートの打ち込み後に温度低下の条件が厳しい場合や大がかりな採暖養生が困難なケースでは、軽微な被覆養生でも所要の強度を確保することができるので、耐寒促進剤の効果が発揮されます。

2-3. 初期凍害の防止

耐寒促進剤を使用する一番の目的はやはり初期凍害の防止であると思います。打設後の養生が重要であるのは当然ですが、ここでは初期凍害の防止という点について、目安となる計算を紹介します。

・圧縮強度5.0N/mm2を得る積算温度 SD=α・N+β

SD=α・N+β

W/C

α

β

40%

-0.8

23.8

50%

-1.4

33.5

60%

-2.1

45.5

 

・コンクリートの凍結温度 FT=α’・N+β’

FT=α’・N+β’

α’

-0.075

β’

-1.5

 

計算式中のNは混和剤濃度で、セメント100kgあたりの混和剤使用量X(ℓ)と水セメント比の関係より N=X/(W/C)×100 で求められます。

使用する配合や耐寒促進剤の使用量によって前後は考えられますが、初期凍害の可能性がある場合の施工計画や養生計画を検討する際の参考にしていただければと思います。

また使用する製品によっても異なりますが、凍結防止を保障する条件として、打込みからある一定時間までは0℃以上を確保することなどが求められます。この一定時間の温度が非常に重要であり、軽微な養生(被覆養生やシート養生)が必要とされます。メーカー推奨の条件を必ず確認してください。

気象条件(日平均気温の目安)

最低使用量 (ℓ/C=100kg)

コンクリートの配合条件

W/C(%)

空気量(%)

平均-2.5℃以上

3

55以下

5程度

(最低外気温-5℃)

平均-2.5℃

4

50以下

5程度

(最低外気温-10℃)

平均-5℃

4

45以下

5程度

(最低外気温-15℃)

 

(日本建築学会 寒中コンクリート施工指針・同解説 より)

5. 使用時における注意

これまで耐寒促進剤の効果や特性を説明してきました。適切に使用すればメリットとなりますが、その特性を理解せずに使用したり誤った方法で使用すると大きな事故や問題が生じます。以下にいくつかの注意点をまとめます。

  • ロダン系混和剤を使用したコンクリートに硝酸・亜硝酸塩系の耐寒促進剤は絶対に使用してはいけません。~シアンガスが発生する可能性があります。シアンガスは低温でも中毒を起こす可能性があり、人体に重大な影響が出る可能性があります。
  • 耐寒促進剤自体の特性により、凝結・硬化が早まります。そのため、施工に時間がかかる場合や予想気温よりも実際の気温が高い場合には想定よりもスランプロスが大きくなり、作業効率が悪くなる可能性があります。
    気温を考慮し適切な使用量で生コンクリートを製造する事や、打込みに要する時間に見合った数量の生コンクリートを手配することが望ましいでしょう。
  • 耐寒促進剤は他の化学混和剤と比較して使用量が多く、単価も高い混和剤です。施工状況や作業工程と経済性を総合的に検討することが必要です。

6. まとめ

耐寒促進剤に関して特に寒冷地では多くの実績があり、冬期や寒冷期の作業工程短縮や生コンクリートの品質確保の面で素晴らしいパフォーマンスを発揮しています。本文中でも説明した通り耐寒促進剤はその単価が比較的高価でありながら使用量も多くなるため結果的に材料費は増加します。しかし採暖に火気を使用するリスクやコストを考慮すると、メリットがデメリットを上回ると考えられます。

また、ごく稀にではありますが耐寒促進剤を使用したにも関わらず、軽微な凍結を起こしたという事例があります。耐寒促進剤を使用した場合は軽微な被覆養生などで凍結を防止できるのですが、シートの被覆が不十分な箇所が強風などの影響で外気に曝されるとコンクリートの温度は急激に低下し、構造体の一部で初期凍害を受ける可能性が生じます。このことから打込み後から一定時間の温度条件(養生条件)が重要である事がわかります。

ここまで耐寒促進剤のメカニズム、使用方法、メリット、デメリットを説明しました。耐寒促進剤そのものはその特性を理解すると扱いも容易であり、一般的な化学混和剤と大きな違いはありません。使用に関して不明な点や、気象条件や養生計画などに疑問がある場合、ぜひ生コンメーカーや混和剤メーカーなどに確認してください。