コンクリート中に含まれる空気には、3つの重要な役割があります。しかし、空気をただ入れるだけでは十分な効果を発揮することはありません。適切な量、適切な大きさなど様々な決まり事があります。
今回は、空気の役割と適切な空気についてご紹介します。
この記事でわかること
1. フレッシュコンクリート中の空気の三大役割
フレッシュコンクリートは、ユーザーから空気入れないプレーンコンクリートとしての指定がない限り、空気量が3~6%程度のコンクリートを製造し出荷しています。
コンクリート中には練混ぜ中に0.5~3%程度の巻き込み空気泡が含まれ、混和剤を用いることにより空気泡を連行させることも出来ます。
これらの空気泡からは作業性の改善・耐凍害性の向上・ブリーディングの減少等といった効果が得られます。
1-1. 作業性(ワーカビリティー)の改善
ワーカビリティーとはまだ固まらない状態にあるコンクリートの性質の一つで、
コンクリートの運搬や打設、締め固め、仕上げ等の作業工程の中で材料分離が
生じることなく出来る作業のし易さの程度のことです。コンクリートに空気が
混入されるとセメントペーストの体積が増し、空気がボールベアリングのような
役割を発揮するため流動性が向上し作業性(ワーカビリティー)が改善されます。
1-2. 凍結融解抵抗性の向上
小さい粒径の空気泡は、低温下でコンクリート中の水が凍結して膨張することに伴う圧力の増加(凍結圧)を吸収するため、セメントの水和生成物で構成されたコンクリートの組織の破壊を防ぎます。
1-3. ブリーディングの減少
フレッシュコンクリートの個体材料の沈降又は分離によって、練り混ぜ水の一部が遊離上昇し水が浮いてくる現象をブリーディングといいます。微小空気泡はコンクリートの単位水量の少なくすることができ、空気泡の浮力が、コンクリート材料の骨材の沈降を抑制してブリーディングを減少させることが出来ます。
2. コンクリートに含まれる空気の種類
コンクリートにはエントラップトエア、エントレインドエアと呼ばれる2つの空気があります。
2-1. エントラップトエア
エントラップトエアとは、混和剤を用いなくてもコンクリートのミキサで練混ぜ中に自然に巻き込まれる気泡で、コンクリート中には1mm以上で大径の0.5~3%程度含まれます。気泡径が比較的大きくて不定形であるため、耐凍害性やワーカビリティーの改善への期待は出来ません。
2-2. エントレインドエア
エントレインドエアとは、AE剤などを使うことによりコンクリート中につくられた微細で独立した気泡です。混和剤の種類によって異なりますが、一般的な大きさは25~250μm程度です。耐凍害性やワーカビリティーの改善に効果があります。空気量が同じでも気泡の大きさが小さく、気泡同士の間隔が小さい場合には、その効果が大きくなります。
3. 空気泡の連行方法と測定方法
3-1. 連行方法
空気の連行方法は、AE剤をコンクリートの練り混ぜの際に添加することです。しかし、空気量はAE剤の使用量に応じて常に一定と言う訳には行きません。セメント・骨材・混和材料の種類・品質・使用量やスランプの大小などの配合条件であったり、ミキサ形式や練混時間・温度などの製造条件と言った多く条件に影響されます。
3-2. 測定方法
試験方法としては、空気量測定器を用い容器にコンクリートをいっぱいに詰めて密閉し圧縮を加えて測ります。空気量の試験方法は、JIS A 1128:2005「フレッシュコンクリートの空気量の圧力による試験方法-空気室圧力方法」に
より測定器及び試験方法について定められています。
4. まとめ
水セメント比を小さくすることはコンクリートの強度を高める上で効果がありますが、耐凍害性については空気の量が大きく影響します。ただし、空気量はいくらでも良いというわけではありません。空気量が2%以下しかないと耐凍害性の改善効果はほとんどなく、また6%以上になると強度低下や乾燥収縮が大きくなります。そのため、空気量には適正な量があります。コンクリートの使用目的に応じて適正な空気量の配合設計が重要になります。