社会基盤を成しているコンクリート

コンクリートは橋梁や高速道路、そしてマンションなど様々な構造物の建設材料として使われており、社会基盤を支える欠かすことのできない建設材料です。しかし、1970年前後から始まる高度経済成長期において、数多くのコンクリート構造物が建設されましたが、現在その劣化問題が深刻な社会問題の一つとなっています。

ここでは、まずコンクリートとはどのようなものなのかを説明し、社会基盤としてのコンクリートの歴史から、コンクリート構造物の劣化問題とその備えについて解説します。

1. コンクリートとはどんなもの?

コンクリートとは、セメント、水、砂、砂利(砕石)を練り混ぜて固めたものです。どこでも材料が手に入り、その場で自由な形にできるのが大きな特徴です。セメントは石灰石と粘土などを高温で焼くことでつくられますが,このセメントがあれば現地の水と砂,砕石でコンクリートをつくることができるのです。一見、コンクリートのイメージから自然と縁遠いと感じられるかもしれませんが、これらの材料は全て、自然界に存在しているものなのです。

一般的なコンクリートは、生コンクリート製造工場で作られます。固まらないように専用の車(アジデータ車)で施工現場まで運搬されます。ダムを建設する際は、施工現場まで運搬距離が長いため、建設現地でプラントを建てそこでコンクリートを作ることもあります。

コンクリートは、様々な形状にでき、圧縮力が大きく、すぐれた耐久性や耐火性を備えているといった特徴があります。しかし、引っ張りに対しては非常に弱いため、その弱点を鉄筋と組み合わせて使用することで補強します。これが、鉄筋コンクリートと呼ばれるもので、橋梁のような土木構造物やマンションのような建築構造物まで、様々な構造物で使われてます。

2. コンクリートの歴史

コンクリートの歴史は古く,最古だといわれているのがイスラエルのガリラヤ湖南で発掘されたイフタフで約9,000年前、中国の西安で発掘された遺跡が約5,000年前、そして最も有名なのが古代ローマ帝国で約2,000年前です。古代ローマ帝国時代では殆どの主要構造物にコンクリートが使われていましたが、このコンクリートはローマンコンクリートと呼ばれ、一度はお聞きになった方もいるかと思います。

その後,現在のコンクリートと呼べるものが登場するのは、イギリスで1824年。これはイギリス人ジョセフ・アスブディンによってポルトランドセメントの発明によって広がりました。

日本では、1865年の幕末に高価なフランス製のポルトランドセメントを輸入したのが最初とされ、現在にいたるまで150年しか経過しておらず、コンクリートは古くも新しい建設資材なのです。

コンクリートが国内で本格的に普及したのは、日本に初めて生コン工場が誕生した戦後復旧期の1949年(昭和24年)からです。そして、1953 年には生コンのJIS が制定され、1960 年には全自動生コンプラントが稼動し始めると高度経済成長期にと共に生コンの出荷量は大きく伸びていきました。

3. コンクリート構造物の危機(コンクリートクライシス)

1970年前後の高度経済成長期において、橋梁や高速道路そしてマンションなど数多くの構造物がコンクリートによって建設され、建設ラッシュが到来します。とにかく作らなければいけないものを無我夢中で作った時期です。当然、安価で使いやすいコンクリートが求められました。

1980年頃までは「コンクリートの寿命は、メンテナンスフリーで100年以上ある」と考えられていました。これが、半永久的な寿命をもつという、“コンクリート神話”と呼ばれるものです。

しかし、すぐにその神話が崩壊することになります。

骨材配合等の問題やかぶり厚さの問題、そして塩分を除去しない海砂の使用問題。ポンプ施工による“シャブコン”と呼ばれる「加水」により水セメント比が高い材料の使用などによって、全国各地で高度経済成長期に建設された構造物の早期劣化が次々と起こりました。

さらに、設計当時にはほとんど知られていなかった塩害やアルカリ骨材反応(ASR)といったコンクリートの劣化現象も明らかになりました。これらのことが要因で1984年4月にNHKの報道特集「コンクリートクライシス」が放送され、コンクリートの劣化の問題が社会問題へ発展したのです。

コンクリートの塩害やアルカリ骨材反応については、下記サイトで詳しく記載されていますので、参照してください。

“シャブコン”と呼ばれる不法加水について

高度経済成長期、「使いやすいコンクリート」とはどんなものだったのでしょうか。それは、「流動性のある軟らかいコンクリート」です。戦後に導入されたポンプ圧送工法は、巨大な構造物を短い時間でつくることを可能にしましたが、生コンクリートが軟らかいほど施工効率はさらに向上します。

コンクリートは、混ぜる水を増やせば増やすほど軟らかくなりますが、強度は下がり、クラックが発生しやすくなります。これが内部鉄筋の腐食につながります。コンクリート工事は、生コンをトラックアジデータで現場に運び、ポンプで型枠に流し込むという一連の工程をいいます。ポンプを効率よく作動させ、型枠に隙間なく流し込んでいくためには、コンクリートは軟らかい方が好都台なのです。

そこで、現場で生コンに水を加え、シャブシャブとした流動性のあるコンクリート(シャブコン)が、高度経済成長期においてはたびたび使われていました。

4. コンクリートクライシスへの備え

1945年以降の震災復興から1970年代の高度経済成長期にかけてつくられたコンクリート構造物は、当時の建設ラッシュやコンクリート技術者の未熟さ及び環境条件の悪化もあり、劣化が想像以上に進んでいます。

しかし現在、国・地方とも、財政状況はひっ迫しており、公共事業予算も大幅な削減を余儀なくされています。そのような社会情勢から、既存のコンクリート構造物を補修・補強しながら延命化させ有効利用していくこと、つまり適切なメンテナンス技術の確立が今求められています。

補修・補強工法の最新技術の代表的なものを以下に示します。

補修工法

  1. 表面塗装
  2. 断面修復+表面塗装
  3. 鉄筋の電気防食

補強方法

  1. 外ケーブル等による鋼材の追加
  2. RCやPCによる巻き立て
  3. FRPシート等の貼り付け
  4. FRPロープによる巻き立て

また、コンピューターによる構造物の劣化予測モデルや光ファイバセンサを用いたモニタリング等、メンテナンスの最新技術に関するシーズは相当数開発され、これからも開発されていくことと思います。これらシーズをどのように組み合わせ、ニーズにいかに合わせることができるかが今後の課題となるでしょう。

5. まとめ

コンクリートは,優れた強度・耐久性を持つ建設材料であり,橋梁,ダム,トンネル,高層建築物などの大型構造物から一般住宅,コンクリート製品まで,幅広いニーズに応え,社会基盤を支えています。そして、現在の我が国における財政状況から、今後は「建設の時代」から既存構造物の「維持管理の時代」へと移行すべき時期を迎えていると言っても過言ではないでしょう。