凍結融解作用によるコンクリートのひび割れ

コンクリートとひび割れは切っても切れない関係とも言えます。それはコンクリートの性質に由来します。コンクリートは弾性が少なく力が加わるとほとんど変形することなく破壊してしまう材料(ぜい性材料)であるからです。

ゴムのような弾性材料であればある程度までは力に応じて変形してくれるのですが、コンクリートの場合はそうはいきません。

破壊までは至らなくても力に耐えきれなかった部分には何らかの変化が生じます。その一つにひび割れが考えられます。ひび割れと一言で言っても、その原因やメカニズムはかなり複雑で現在でも研究が進行中です。多くの場合は複合要因(ひび割れが生じた原因が複数存在する)によるものですが、今回は凍結融解作用によるひび割れをピックアップしたいと思います。

Basilisk
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1. コンクリートの凍結融解作用

コンクリート構造物のひび割れや損傷の一つに凍結融解作用が挙げられます。凍結という言葉から寒冷地、特に東北地方より北部に位置する地域を連想されがちかと思いますが、気温が氷点下になる可能性がある地域では起こりうる現象です。

実際に四国地方の山間部では調査によって凍結融解作用による損傷も明らかになっておりますし、軽度なものも含めると九州地方でも発生の可能性が指摘されたこともあります。

1-1. メカニズム

凍結融解作用はコンクリート中の水分が凍結し体積が膨張することによって引き起こされます。体積が膨張する際にその圧力の逃げ場があればコンクリートに作用する圧力は緩和されます。しかし周囲が完全に拘束されている場合は圧力が直接コンクリートに作用します。この圧力が引張強度に達したときにコンクリートが耐え切れなくなりひび割れという形で発生します。

ひび割れが生じた箇所はコンクリート内部に水が浸透しやすくなっているため、外部から浸透した水分が次の凍結で更に大きな膨張圧を発生させ、ひび割れを拡大させたり損傷を起こす悪循環になります。

1-2. 凍結融解作用が発生する条件

メカニズムでも説明しましたが、コンクリート内部の水分が凍結しても一度だけでは大きな損傷には至りません。凍結と融解が繰り返されることで徐々に劣化が進行していきます。そのため、凍結融解作用によって引き起こされるひび割れはある程度条件が限定されます。

  • 凍結が起こる冬期から春期に多く発生します。
  • 凍結と融解が原因なので昼夜の温度差が大きいほど発生しやすくなります。
  • 寒冷地では南側に面しているコンクリートに発生することが多くなります。

2. 凍結融解による劣化の特徴

では凍結融解を受けたコンクリートにはどのような症状が現れるのでしょうか。

言葉で説明するだけでは分かりにくいので、イラストや写真を交えて説明します。

凍結融解による症状は最初に表面にひび割れが現れます。形状は構造物の天端では不規則な細かい亀甲状に発生します。
細かいひび割れが進行するとひび割れ幅が大きくなり、やがてスケーリング(表面ペーストがフレーク状に剥離すること)やポップアウト(骨材中の水分が膨張してコンクリートを破壊しクレーター状に落ちること)が生じます。

更に進行すると浮き(本体と表面との接着性が失われている状態)や剥離(劣化していた部分が衝撃等の原因で剥がれ落ちること)が生じます。

凍結融解によって剥離が生じた場合には内部の鉄筋や鋼材も腐食が発生している可能性があります。コンクリートの弱点で説明した通り、鉄筋にまで劣化が及んでいると構造物の強度が低下したり、性能、安全性にも問題が出てきます。

3. 対策

ここでは凍結融解作用に対する対策方法を説明します。

AE剤を用いて微細な連行空気を4~7%程度確保する

これは凍結融解作用に対する対策として恐らく最初に挙げられる方法です。微細な空気の粒は圧力を逃がすクッションのような役割をし(梱包に使用するプチプチシートのイメージです)コンクリートにかかる圧力を緩和します。

密実なコンクリートを使用する

メカニズムでも説明した通り、凍結融解作用が発生する条件の一つは水です。コンクリート中にわずかな空隙があると水が浸透しやすくなるため、水セメント比を小さくしたり適切な施工や養生を行うことで組織を緻密化し、水の通り道を無くすることも重要です。

良質な骨材を選定する

コンクリートの原材料である骨材ですが、吸水率の低いものや密度が大きなものを選ぶことも凍結融解作用に対する抵抗性を向上させます。吸水率が低く密度が大きな骨材とは骨材に空隙が少ないことを意味します。空隙が少ないという事は骨材が吸収する水量も小さくなるため、凍結した際の膨張もそれだけ小さくなります。

4. まとめ

本文中でも説明しましたが凍結融解作用によるひび割れが一度発生すると、そのひび割れから入り込んだ水が更なる凍結融解作用を招くという悪化の一途をたどります。

ひび割れの原因はさまざまで、目にしたひび割れが凍結融解作用によるものなのかを一度見ただけで断定するのは困難ですが、剥離やポップアウトなどの症状が出ている場合は凍結融解作用による損傷の可能性があります。

ひび割れを発見した段階ですぐに処置すれば進行を食い止められたり、コンクリートの寿命を伸ばすことが可能です。コンクリートも人間と同様、早期発見、早期治療が重要なのです。もしコンクリートに気になるひび割れを発見した場合は、専門家の診断をお勧めします。

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