あなたの身近にあるコンクリートの基礎、柱、壁、床などを見渡すと、程度の大小はあれ少なからずひび割れした箇所が見つかるかと思います。
コンクリートは元来引っ張られる力に非常に弱いという特徴があるため、乾燥による収縮や、急激な温度変化などで比較的簡単にひび割れを生じてしまいます。
しかし、それらのひび割れが全てコンクリートの耐久性に有害なものでしょうか?
すぐに補修が必要なものなのでしょうか?
これらはひび割れの発生原因、発生している箇所、ひび割れの程度などを総合的に判断しなければわかりません。
その総合的な判断を下す専門家を擁する機関が、コンクリート診断・調査会社です。
コンクリートのひび割れや劣化の診断・調査を行う会社はどのように選ぶのが良いのでしょうか?
この記事でわかること
1. コンクリートの診断・調査を行う会社について
コンクリート診断・調査を行う会社は大きく3つに分類することができます。
- コンクリートや鋼構造物の診断・調査を専門に行う会社
- 建設コンサルタント(建設に関する計画・調査・設計を行う業者)調査・診断をおこなうもの
- マンションや住宅のリフォーム業者が調査・診断も行うもの
おおむね①、②の業者は官公庁やインフラ施設、店舗やマンションなど大規模施設の調査・診断を主に行い、住宅の調査や宅地の擁壁調査などは③の業者が行うことが多いです。
2. コンクリートの調査項目にはどのようなものがある?
2-1 非破壊による調査
コンクリートを傷めず、目視や打診、機材を用いて行う調査です。
・外観調査
建物のひび割れや劣化の状況を目視で観察し、ひび割れの幅や長さ、またコンクリート劣化の生じている範囲や面積を調査するほか、必要に応じてコンクリート表面をハンマーで軽く叩く打音検査などを行います。
・テストハンマーによる強度推定
コンクリートがどれくらいの強度を持つかは、コンクリート表面の硬さから、ある程度推定することができます。
シュミットハンマーと呼ばれる機材を使用して、コンクリート表面を打撃した際の反発度からコンクリートの強度を推定することができます。
・配筋調査
設計図面から鉄筋の配置状況を調査し、適切な設計がなされているか調査します。
・ひび割れ深さ、内部欠陥の調査
必要に応じ、ひび割れの深さやコンクリート内部の空隙などの欠陥の有無を超音波を用いた機材で調査します。
2-2 微破壊を必要とする調査
調査のため、コンクリートを最小限破壊して内部の鉄筋の状態を調査したり、コンクリートからサンプルを抜き出して行う調査です。
調査に際して微破壊を行った個所や、サンプルを取るために孔を開けた個所は、きちんと補修を行います。
・コンクリートコアの採取
コンクリートの強度を調べたり、コンクリートのアルカリ性がどの程度保たれているか、コンクリート中にどの程度の塩化物が含まれているか、または外部から浸透しているかなどを調査するために、コンクリートに5~10cm位の孔を開け、コンクリートのサンプルを取り出します。
アルカリ性の状態を検査する試験を中性化試験、塩化物の浸透量を検査する試験は塩化物イオン含有量試験と呼ばれます。
・鉄筋腐食度の調査
コンクリート表面を、エアーピック等で鉄筋が露出するまで微破壊し、直接目で見て鉄筋の腐食の程度を調査します。
また、コンクリートの一部を鉄筋が露出するまで微破壊し、鉄筋と調査機材の電極を接触させることで、広範囲の鉄筋の腐食度を電気的に調査できる“自然電位法”という調査方法もあります。
3. コンクリートの診断・調査会社の選び方
コンクリート診断・調査、調査を依頼する場合は、その会社が主にどのような建物の調査を行っているのかの情報をHPから得るのが良いでしょう。
インフラ構造物を専門にしている会社、マンション調査と修繕が専門の会社、主に住宅の調査とリフォームを行っている会社など様々で、専門外の調査を受けていないケースも多々あります。
また、実際調査を依頼したい建物のある地域に会社所在地があったり、営業所のある会社を選ぶとその後の調査がスムーズに進むと思います。
住宅や擁壁の調査であれば、調査と一緒にリフォームや修繕の提案や見積もりを行う会社もあります。
この場合、簡易な調査であれば見積もりも含めて無料で行う会社もありますので、有効に活用するのが良いでしょう。
4. まとめ
2016年の熊本地震、2018年の大阪府北部地震、2018年北海道厚真東部地震と大きな地震が続き、コンクリート建物や塀、擁壁のひび割れに対して心配をされている方が全国に数多くいるようです。
コンクリートのひび割れも全てが問題であるわけではありません。
有害なひび割れか、そうでないかを判断し、適切な処置を行うことでコンクリートはちゃんとあなたの生命と財産を守ってくれるでしょう。