マンションの寿命に関わる4つの問題と寿命判断のチェックポイント

マンションの寿命は、あってないようなものです。建物構造上100年以上持たせることもやり方によっては可能であり、構造上の耐久性と法定耐用年数、実際の寿命がそれぞれ違います。ここではこれらを整理し、マンション寿命の疑問の解決ができたらと思います。

Basilisk
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1. マンションの寿命に起因する問題

一般的なマンションは、コンクリートでできているものが多く、そのコンクリートの寿命は100年を超えると言われています。鉄筋コンクリート造または鉄骨鉄筋コンクリート造の建築物にとって、寿命を大きく左右するのはコンクリートです。

国土交通省がまとめた「RC造(コンクリート)の寿命に係る既往の研究例」によると「鉄筋コンクリート造建物の物理的寿命を117年と推定」(飯塚裕(1979)「建築の維持管理」鹿島出版会)、「鉄筋コンクリート部材の効用持続年数として、一般建物(住宅も含まれる)の耐用年数は120年、外装仕上げにより延命し耐用年数は150年」(大蔵省主税局(1951)「固定資産の耐用年数の算定方式」)となっており、十分に100年は超える耐久性があるものと考えられています。

しかし、日本のマンションの多くが100年を待たずに取り壊されています。なぜマンションの寿命がコンクリートより短いのか?起因する問題別に整理してみました。

1-1. 構造上の問題

建物の構造上の問題としては、建設された時期が大きく関係します。地震大国の日本では、耐震性が大きな問題となってくるのです。1981年を境に旧耐震基準と新耐震基準によって建てられた基準が違います。1981年以前に建てられた建物は、大地震に対する耐力が現在の基準の建物より低いのです。

当然、耐震補強工事をすれば寿命が伸ばせるのでは?と考えますが、現実はそう簡単ではなく、耐震補強は倒壊を免れるという意味では耐力が上がりますが、それでマンションとしての価値が出るかは別の話です。また、外見的にも美観を保ち耐震補強工事をすることは難しく、築30年を過ぎたあたりから立て替えられている事例が多いのです。

1-2. 維持管理上の問題

近年建設されたマンションでは、管理組合や管理会社により長期的に修繕計画が作成されており、その費用の為の修繕積立などで費用確保をして実行しているケースがほとんどです。しかし、1960~70年代のマンションでは、修繕計画が作られておらず、修繕費用の確保もなく、老朽化を放置するしかない状態のマンションが多くあります。

また、古いマンションでは、間取りで収納や脱衣場、洗濯機の置き場がないなど現在の生活に合わない、天井が低い、床のスラブが薄く上下階からの物音が気になるなど、昔の生活と現在の生活の差による問題も出ています。

1-3. 経済上の問題

日本人の文化として、スクラップアンドビルドが良いとされ、古いものは取り壊し、新しくする方が価値の向上につながると思われています。古い建物のすべてが構造上や設備等の維持管理上の問題で取り壊されているわけではなく、堅牢で素晴らしい建物も多くあります。

ただ、そのような建物は立地条件が良く、求める人も多いので、取り壊して新しい建物にした方がより経済上のメリットが出るという観点から寿命を迎えるという例もあります。

1-4. 法定耐用年数

耐用年数=寿命ではありません。1998年の税制改正によって、マンション(鉄筋コンクリート造の建物)は法定耐用年数47年と設定されました。これは減価償却がゼロになる年数で、税制上の基準であり寿命とは基本的に関係ありません。

ただし、住宅ローンを組むときには注意が必要で、法定耐用年数の残りが少ないマンションだと金融機関により差があるようですが、借入期間の最長年数に制限が出る可能性があります。

2. マンションの実際の寿命とは?

マンションの実際の寿命は、一定ではなくそれぞれの物件によって判断しなければならないというのが、結論となります。

例えば、マンションの配管設備の寿命は、25年~30年と言われていますが、昔のマンションでは配管をコンクリートの中に埋め込んでしまっていることが多く、配管の取り換え工事が難しい例があります。

これらのマンションは、躯体の寿命を待つことなく建て替えとなることが多いようです。しかし近年では、スケルトン・インフィルという躯体と内部設備を分けて、最初から内部造作と配管等を必要に応じて変えられる設計のマンションも増えてきました。このようなマンションでは、設備の寿命がマンションの寿命とはならなくなっています。

また、鉄筋コンクリート造では使用している材料によって寿命に差が出てきます。劣化しにくい材料を使っているほど、その寿命は長くなるわけですが、高度経済成長時に建てられた建築物の中には、大量のコンクリートを消費したため、劣悪な品質の材料を使用している物件もあります。逆に最近では、コンクリートの質や施工技術の向上により寿命が伸びている調査もあります。

さらに、管理によってマンションの寿命が変わります。コンクリートにひび割れが発生すれば、その補修を行い劣化の進行を食い止めます。海岸部などの塩害が起こりうる立地であれば、塩害対策のコーティングをするなどして劣化防止を行います。このように定期的にメンテナンスをすれば、マンションの寿命は伸びるのです。逆にメンテナンスを怠ると劣化が進み寿命を短くしてしまいます。

3. マンションの寿命を判断するチェックポイント

それでは、どのようにマンションの寿命を判断すればよいのでしょうか?マンションそれぞれの寿命を判断する為のチェックポイントをまとめてみました。

3-1. 管理上のチェックポイント

まずは、修繕計画が作成されているか?その為の積立がされているか?これまでの修繕工事は計画通り行われているか?などを確認する必要があります。個別に見ていくと、水回りを中心に見ていくと良いでしょう。水漏れしていないか?カビや汚れがないか?水回りの修繕工事は特に費用が掛かるので、適切な時期に行われているかどうか確認する必要があります。

さらにドアや窓、収納扉などの開閉を見てみましょう。構造躯体にゆがみが出ていたり、建物が傾斜していたりするとこれらの建具に軋みが出てきます。床に丸い球を置いて転がらないかの確認をすることも重要でしょう。

3-2. 構造上のチェックポイント

一般的に構造別の耐久力は、S造(鉄骨造)<RC造(鉄筋コンクリート造)<SRC造(鉄骨鉄筋コンクリート造)という順で強いとされています。当然、一番強いSRC造の寿命が一番長くなりますが、その分だけ費用も高くなります。さらに、あまり知られていない工法としてPC造(プレストレストコンクリート造)というものがあります。

構造のくくりとしては、RC造に入るのですが、鉄筋コンクリートの梁や柱、床や壁に対して特殊な鋼材で緊張力を与える工法で、地震などに対する再現性(揺れても元に戻る力)が高く、建物寿命も長くなり、建物の価値を上げると言われています。

また、スケルトン・インフィルのマンションであると、メンテナンスや配管等の交換が簡単な為、それだけ寿命が伸びることになります。これらのことを確認は、必要でしょう。

3-3. 使用材料のチェックポイント

使用材料のチェックでは、コンクリートの水セメント比や単位水量、鉄筋に対するコンクリートかぶり厚さなどを確認したいポイントです。配管なども劣化に強い材料を使っているかをチェックしたいところです。

しかし、これらのことは設計図書や住宅性能評価書を見る必要があり、一般の方ではその良し悪しを判断することは難しく、専門家に診断を依頼することが良いでしょう。専門家とはどのような人?という疑問がわくともいますが、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会が公認している「ホームインスペクター(住宅診断士)」という資格を持った方にホームインスペクション(住宅診断)を依頼すると良いと思います。

費用相場は、5~10万円で、購入前に買付申込書を出して依頼すると他の人に買われる事がなくなります。このようなチェックを行うと安心できるでしょう。

3-4. 立地上のチェックポイント

立地や環境もマンションの劣化に大きな影響を及ぼします。沿岸部では、塩害を考慮した対策を取っているか?隣地の建物によっては、日当たりの良し悪しで湿気対策はどうなっているのか?古いマンションになると立地条件によって、住人が激減して維持管理が難しくなる例もあります。これらのことも確認しておいた方が良いと思います。

4. まとめ

最後にマンション寿命について整理すると、SRC造やRC造の耐用年数は47年ですが実際の寿命ではありません。マンション寿命は、維持管理状況、建物構造、使用材料、立地条件などにより大きく変わります。これらを高い水準で設計・施工し、住宅性能表示制度で75年~90年の寿命を認定されているマンションもあります。

住宅性能表示のないマンションでは、ホームインスペクションをして現在の状態の良し悪しを明確にする必要があります。マンションの寿命は、物件ごとに差が出ることを理解して、適切な判断により寿命を想定することが大切です。

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