恐らく誰もが耳にしたことがあるモルタル。最近では「モルタル片が落下した。」や「モルタルが剥がれて車に当たった。」といったニュースも多いです。
でも、映像を見てもコンクリートと何が違うのかと疑問に思う人も多いのではないでしょうか。ましてや報道では「セメント片が」など間違った用語も出てきたりするので、ますますややこしいです。
今回は身近なところで役立っているのになかなか地味な存在「モルタル」について解説したいと思います。
この記事でわかること
1. モルタルって何?
冒頭でもお話ししましたが、そもそもモルタルって何なのか?コンクリートとは何が違うのか?仕事で使用されている方や日曜大工をされている方はご存知かもしれませんが、分からない方が多いかと思います。
私の友人に、モルタルについて知っているか尋ねたら、「何かを混ぜて塗っているやつ」と返されました。間違いではないけど正解からは少し遠いような答えです。
さっそくモルタルの中身や作り方を分かりやすく説明していきましょう。
1-1. モルタルは何で作られる?
モルタルの原材料は何かというと、主に3つの材料からできています。
・セメント
石灰系の粉末で、水と交わると時間とともに硬化する性質を持っています。そのため保存する場合、湿気に注意が必要です。
セメントは粉末状なのですから、ニュースでたまに使用される「セメント片」という言葉は正確には間違いですね。
・細骨材
砂の事です。生コンやモルタルにおいて、骨材とは砂、砂利、砕石の総称です。細骨材は粒径の小さな骨材の事を呼びます。砂利や砕石の事は粗骨材と呼びます。
・水
説明するまでもなく普通の水の事ですが、コンクリートやモルタルを作るには不可欠な材料の一つです。DIYなどご家庭でモルタルを作る際には水道水で全く問題ありません。
1-2. モルタルとコンクリートの違い
モルタルとコンクリートの違いについて一言で言ってしまうと、粗骨材(石)が入っているか入っていないかです。コンクリートがセメント・水・細骨材・粗骨材を主原料とするのに対して、モルタルはセメント・水・細骨材で構成されます。
性状はコンクリートに比べて流動性があり、作業がしやすい特徴があります。しかし、耐久性の面でコンクリートに劣ることや、伸縮を起こしやすい事もありモルタルのみで構造物を造ることはほとんどありません。
1-3. モルタルの配合
モルタルがどのようなものなのか何となく分かって頂けたかと思いますが、次にモルタルの配合(各材料の設計値)について触れておこうと思います。
コンクリートには配合設計の一般的な手順が決まっており、参考資料も多いのですがモルタルの場合はどうなのでしょうか?
実はモルタルに関しては明確な配合設計の基準は存在しないのです。
生コンにはJIS規格が存在しますが、モルタルにはJIS規格が存在せず強度に関しても明確な基準はありません。
用途によっては設計条件等で一定の強度が必要とされる例外も存在します。では勘に頼って材料をただ混ぜれば良いかというとそうではないのです。
施工性や性状、仕上がりを考えるとある程度モルタルの配合も決まってきます。配合の決め方には容積で考える方法と質量で考える方法があります。
容積法 セメント1に対して砂を1.5~3の割合にして水を適量加えます。
質量法 セメント1に対して砂を2~3の割合にして水を適量加えます。
水の量によって出来上がるモルタルの硬さも変わりますが、施工性や作業性に見合った水の量に調整すれば良いでしょう。また用途によってはセメントと砂の比率も変わりますが、上記の割合を一つの目安と考えて問題はないと思います。
2. モルタルの作り方
モルタルには生コンプラントで製造する方法と作業現場で製造する方法があります。
●生コンプラントで製造する方法
~メリット~
生コンの製造設備を使うため、練り混ぜが完全で安定した品質を確保できます。モルタルの使用量が多い場合、現場練りでは製造回数が増えるところを一度で大量製造できます。
~デメリット~
生コンプラントが現場から遠い場合、運搬途中で性状が変化する可能性があります。大量製造のため、ニーズに合わせての微調整が困難な場合があります。製造コストは現場練りと比較すると割高になります。
●現場練りで製造する場合
~メリット~
一度に製造する量を調整でき、作業工程に合わせて新鮮なモルタルを確保できます。気象条件等に合わせてモルタルの状態を微調整することが可能です。製造コストは生コンプラントで製造するより割安になります。
~デメリット~
生コンプラントで製造するものと比べ、練り混ぜ性能が不十分の場合に品質が安定しない可能性があります。使用都度モルタルを製造する必要があるので、使用量が多い場合は時間と労力を要します。材料を適切な状態で確保する必要があるため、スペースと物置などの設備が必要です。
どちらの方法にもメリットとデメリットがあるので、使用量や用途によって作業に適した製造方法を選択することも大切です。
3. モルタルの用途
これまで、モルタルが出来上がるまでを説明してきました。ここからは出来上がったモルタルの用途を紹介したいと思います。
モルタルの用途と言っても、大規模な工事現場・補修・DIYまでかなり幅広くなってしまいますので、ここでは例をいくつかピックアップして紹介します。
・目地としての使用
ブロックやレンガを積み上げたり敷き詰める時に目地として使用したり、空洞を埋める目的で使用します。DIYの外構としてはレンガが最も人気があるとも言われているようで、ご家庭で使用される用途としては上位に入るのではないでしょうか。
・接合材としての使用
壁や床などにタイルを貼り付ける時に接合材(接着剤)として使用します。
タイルもDIYではレンガに次いで人気が高く、外構に使用する事も多いようです。下地のコンクリートを綺麗に掃除した後、硬めのモルタル(バサバサと感じる程度)を敷き詰め、その上にタイルを乗せて上から叩いて貼っていく方法があります。
・補修材としてのモルタル
コンクリートが欠けたりひび割れが発生したときに、補修材として使用する方法があります。
大規模の補修が必要な場合や構造物によってはその原因を特定する必要があるため、専門家による検査の後、症状に応じた特殊なモルタルを使用します。
自宅の外壁などに発生した軽度のひび割れの場合は、自分で補修できる事もあります。
・吹付工としてのモルタル
崖や法面をコンクリートやモルタルで覆う工法を吹付工と呼びます。施工時にある程度の安定性が確保できる場合、崖面に対して施工します。
温度変化や水の浸透を遮断し、施工性も良いので多くの実績を残しています。トンネルの覆工にも使われ、吹付工用の特殊なモルタルを使用します。
4. DIYのすすめ
建設作業や工事において使用される事が多かったモルタルですが、近年ではDIYも浸透してきており、以前と比べるとご家庭で使用する機会も徐々に増えてきています。
例えばガーデニングにおいてアーチを固定する際に、ブロックとモルタルを使って基礎にする方法。この場合には使用量がそれほど多くは無いので、ご紹介した配合の各材料をバケツで1杯ずつ計量すると便利です。難しそうに見えてコツをつかんでしまうと意外と簡単で力も必要ありませんし、業者に頼むよりも割安に自分の好みのレイアウトに作ることも可能です。
また、近年では大型のホームセンターでも専門のコーナーが設けられ、使いやすい用具も揃っています。少しだけモルタルを使いたいけど材料ごとに買い揃えると余ってしまう場合には、既に砂とセメントが混ぜ合わさった状態で梱包されているプレミックスタイプの製品も市販されています。
こちらは袋から材料を容器に移し、少しずつ水を加えて練り混ぜるだけでモルタルが出来上がるので便利です。
最後に、モルタルの硬さの目安として覚えておくと役に立つかもしれない表現です。
「バサバサ」「耳たぶ位」「ソフトクリーム位」これは言葉のイメージ通り、硬さを表現する時に使われる言葉です。硬い、普通、軟らかいと言われるよりもイメージしやすいかと思います。
5. まとめ
近年需要が高まりつつあるという点から、終盤はモルタルそのものではなくDIY目線での紹介をさせていただきました。本来はモルタルとは何かというテーマで執筆するつもりでしたが、あまりにも用途が広く、その中でDIYは欠かせないと考えたからです。
改めて考えると、それだけモルタルというものが身近なものなのだと私自身も驚いたほどです。
決して建築材料の主役にはならないのですが、名脇役としてインフラ整備や建設工事を支えているモルタル。この記事を目にされた方にはモルタルというものが身近な存在であるという事を理解して頂ければ幸いです。