コンクリート剥落の原因と剥落検査、修理、防止方法まとめ

コンクリート構造物は経年劣化によって様々な症状が発生します。特に高度経済成長期に建設されたコンクリート構造物は数も相当なものですが、近年それらの構造物の劣化が著しく多くの問題を抱えています。今回はその問題の中から「コンクリートの剥落」について取り上げ、その防止策について考えたいと思います。

1. コンクリートの剥落とは

コンクリートは建設材料として耐久性も高く、比較的寿命も長い事から多くの構造物に利用されてきました。しかし、半永久と考えられていたコンクリートも現在では寿命があることや、使用環境によって経年劣化が生じることが明らかになっています。特に高度経済成長期に建設された構造物は経年劣化によりコンクリート内部でひび割れが発生していたり、施工が不十分な状態であったなどの理由から徐々に劣化が進んできました。

この劣化は初期段階では内部で個々に発生しますが応力や振動により個々の欠陥部分がやがて連続し、コンクリート本体と表面部の付着力が弱くなり最終的には一体性を失います。この状態は「浮き」と呼ばれ、何らかのはずみで「浮き」がコンクリートから離れます。元のコンクリートから離れたり落ちる状態が「剥離」「剥落」と呼ばれます。

1-1. コンクリート剥落の事例

コンクリートの剥落が実際に起こった場合、最悪の場合には人命に関わる大きな問題となります。コンクリートの剥落は全国で報告されており、以下に実際に起こった事例を挙げます。

・事例1:北海道札幌市の鉄道高架橋からのコンクリート剥落

平成27年6月、JR北海道の高架下にコンクリート片が落ちていると通報がありました。この場所は高架下を駐車場として利用しており、管理会社の写真がコンクリート片を発見したものです。落下高さは約7mでコンクリート片は2個、最大重量は4kgを超えていたとの事です。幸いにケガ人や物損は無く、剥落箇所を点検した結果それ以外の剥落の可能性は無いことが確認されました。

・事例2:名古屋市北区の名古屋高速道路からのコンクリート剥落

平成26年2月、名古屋高速道路の壁高欄からコンクリート片が落下し、下の国道を走行中の救急車に接触、屋根にへこみと傷がつく事例が報告されました。コンクリート片の大きさは事例1と比べると小さかったようですが、車の屋根をへこませる威力だったことから人間に当たっていたら大惨事になった事でしょう。その後、名古屋高速道路公社は残りの破片を処理しメッシュネットで対策をとりましたが、原因としてコンクリートの劣化を挙げています。

事例3:名神高速道路からのコンクリート剥落

平成18年11月、名神高速道路の高架下の駐車場にコンクリート片が落下し、男性が頭部を負傷したと報告されました。コンクリート片が落下時にどのような状態であったかは不明とされていますが、現場周辺のコンクリート片は14個で総重量は110gとされています。これほどの重量ですが、高さ約5mから落下したコンクリート片によって男性は全治8日のケガを負いました。西日本高速道路株式会社は点検を実施し、コンクリートの劣化が確認された箇所については人の出入りを禁止する対策をとりました。

これらの事例からも、コンクリートの剥落がどれほど危険なものなのか想像することができます。特に事例3のようにそれほどの重量でないコンクリート片も、落下する高さによっては相当な威力を持ちます。

2. コンクリート剥落の原因

先に挙げた事例ではいずれもコンクリートの劣化と報告されていますが、コンクリートの劣化と考えられる原因はいくつかあります。その代表的なものには以下のようなものがあります。

2-1. 中性化

コンクリートは水とセメントの反応によって強アルカリ性を保っています。このアルカリ性は鉄筋コンクリートの鉄筋表面に膜を作り、鉄筋の腐食を防いでいます。しかしコンクリートにひび割れが生じ、そこから二酸化炭素が侵入するとコンクリート中の水酸化カルシウムと反応し炭酸化します。これによって鉄筋表面の膜が破壊されると鉄筋の腐食(錆の発生)が起こり鉄筋の体積が膨張します。この膨張圧はひび割れを進行させたりコンクリートの剥離を誘発します。

2-2. アルカリシリカ反応

コンクリート中の骨材に特定物質(シリカ鉱物)が含まれている場合、コンクリートのアルカリ性と骨材中シリカ鉱物が反応することによって、アルカリシリカゲルが生成されます。ここに水が供給されるとアルカリシリカゲルが膨張し、その膨張圧でコンクリートにひび割れを発生させ、コンクリートに更に損傷を与えます。

2-3. 塩害

コンクリート中に侵入した塩化物イオンが鉄筋を腐食させる劣化です。中性化と同様に鉄筋が膨張することでひび割れやコンクリートの剥離を誘発します。一度補修しても更に年数がたつと再劣化する可能性があるとされています。

2-4. 凍害

寒冷地などのコンクリート構造物において、コンクリートに吸水性の高い骨材を使用していた場合などに、骨材中の水分が凍結し膨張することで発生します。凍結と融解を繰り返すとその膨張圧によってコンクリートが損傷し、ポップアウトやひび割れを生じます。

これらの他にも化学的要素や使用環境による劣化も存在しますが、いずれもコンクリートに発生したひび割れを放置すると損傷は悪化していき、更に各要因が複合要因となってコンクリートを更に劣化させる悪循環となります。コンクリートの劣化を少しでも食い止めるには点検と早めの対処が必要となり、結果的にコンクリートの剥落防止にもつながります。

3.コンクリートの剥落を防止するには

コンクリートの劣化の原因は上記した通りです。ひび割れがコンクリートの剥落を誘発するのでコンクリートのひび割れを抑制することはコンクリートの剥落を防止するうえで有効ですが、ここでは「コンクリートの剥落」そのものの対策や防止方法を紹介したいと思います。

3-1. 剥離の検査方法

コンクリートの浮きや剥離を防止するにはコンクリートの状態を知ることが必要になります。コンクリート構造物の状態を検査する方法として以下のようなものがあります。

・打音法

コンクリートをハンマーで軽くたたきその音でコンクリートの劣化を診断する方法です。高い音の場合その箇所は健全と判断し、低い音や鈍い音の箇所は浮きや剥離が生じていると判断します。

・赤外線法

コンクリートを赤外線カメラで撮影し、健全部と劣化部を判断する方法です。浮きが生じている部分は健全部と比較して温まりやすく冷めやすい性質を持つため、その差を利用して浮きを判断する非破壊・非接触の診断方法です。

・超音波法

コンクリートに超音波を当てその伝播時間や周波数の分布によりひび割れや空洞、浮きを測定する方法です。

・電磁波法

コンクリートの表面から内部に向けて電磁波を放射し、反射波を受信することでコンクリート内部の状態を検査する方法です。電気的性質の異なるものは反射波を受信するまでの時間も異なるため、この時間差を利用して健全部、空洞部、鉄筋部などを把握します。

3-2. 剥離の補修方法

コンクリート構造物を検査し浮きや剥離が確認された場合、被害が生じる前に対策を行う必要があります。浮きや剥離の補修として、損傷部に対してコンクリートの復元が必要となった場合は断面修復工法と呼ばれる工法で施工します。

断面修復工法は劣化したコンクリート部分を除去し、断面修復材でコンクリートの断面を復元します。補修材料としては、構造体コンクリートと同等以上の強度が必要とされ、躯体との付着強度も要求されます。更に補修後の耐久性も求められ、ポリマーセメント系の材料が使用されます。

補修範囲が広い場合には吹付工法、補修部位が大きく断面形成が必要な場合は型枠を使用した充填工法、補修範囲が狭い場合には左官工法で補修します。施工する際には構造体コンクリートに対してハツリ作業が必要となるため、少なからず構造物にダメージを与える可能性があり、修復にあたって慎重な設計や作業が求められます。

施工後の再劣化要因にも配慮する必要があり、下地のコンクリートに劣化要因が存在する場合もあるので劣化部分のみならず構造体全体を調査し、必要に応じて鉄筋の防食や他のコンクリート補修工法と併用して行うケースもあります。また断面修復工法自体の技術開発も進められており、断面修復工法そのものに鉄筋の防錆効果を持たせるなどの技術も提案されています。

調査から補修の流れは以下のようになります。

 

4. 建設段階におけるコンクリートの剥落防止

前項では浮きなどの症状が出た母材に対して剥落を防止するという観点から補修について説明しました。一方、影響度の大きな構造物に対しては建設段階から剥落防止対策を考慮するものも増えてきています。ここでは繊維補強コンクリートを紹介します。

繊維補強コンクリートにはメッシュ状の連続繊維シートをコンクリート打設前の型枠に設置し、コンクリートの表面に効果を持たせる工法や、短繊維をコンクリートに混入することでかぶりコンクリートに効果を持たせる工法があり、それぞれ「連続繊維補強コンクリート」「短繊維補強コンクリート」と呼ばれます。

繊維には炭素繊維やポリプロピレン繊維、アラミド繊維、ビニロン繊維があり、比較的強度が高い合成繊維が使用されます。連続繊維補強コンクリートは織物状やシート状にした繊維を使用します。補強する方向と繊維の方向が揃うように部材表面に貼り付けて補強効果を得るのですが、シートの密度や枚数を変更することで補強の度合いを調整することが可能です。

一方で短繊維コンクリートは短く切った繊維を製造段階のコンクリートに混入するため、施工時に作業が不要であり、繊維の方向も一方向に揃いにくく全方向への補強が可能というメリットがありますが、連続繊維補強コンクリートのように指定方向に対しての補強では効率が低いとも言えます。どちらの方法もコストはかかりますが、構造物の重要度や補強の箇所、目的に応じて、適する補強方法を選択することが必要です。

繊維補強コンクリートは、コンクリートの靭性(粘り)を高めることで大きな変形能力を生み出します。プレストレストコンクリートもひび割れ抑制に有効とされていますが、想定以上の応力やひずみによってひび割れが生じる可能性があります。

繊維補強コンクリートは発生した微細なひび割れの開口幅をそれ以上に広げず、ひび割れの界面を繊維がつなぐことで剥落が起こらない構造になっています。これらの繊維は現在も研究が進められており、剥落防止のみならず、耐火性や耐久性にも効果が期待され、今後多くの分野での活用も期待されています。

5. まとめ

コンクリートの剥落防止は施工時に適切な施工や対策となる工法を施す事と、経年劣化によって発生したひび割れなどの症状をそれ以上悪化させないように補修する事が重要になってきます。施工に関しては良質な骨材を使用することや締固めを十分に行う事は構造物そのものの耐久性を高め、結果的にはコンクリートの剥離が発生する原因の抑制につながりますし、繊維補強などの工法はひび割れ発生後の剥落防止に効果的です。

しかし高度経済成長期に建設された構造物には建設段階で経年劣化に対する補強などの対策が施されていないものがほとんどであり、現在これらの構造物に対しては補修、補強、改修、もしくは建て替え工事が必要な時期に入っております。

構造物の重要度や生活への影響が大きなものに関しては建て替えという選択肢も出てきますが、コストの面からすべての構造物を建て替えることは不可能で今後も補修や改修を行って使用していくケースが増えていくと予想されます。

補修の工法としては紹介した以外にも、劣化や損傷が軽度な場合には取り壊しやハツリなどを行わずに接着剤でメッシュシートを貼り付け、上から被覆する工法なども実用化されています。構造物の調査方法や補修工事の技術は研究、開発が進められており、今後より低コストで信頼性の高い工法の開発が期待されます。

最後に、コンクリートの剥落は一度起こるとその周囲にも危険が潜んでおり、早急の対応が必要です。身近な構造物にもその可能性は存在し、大きな事故にもつながりかねません。剥落したコンクリートを発見した場合は構造物を管理する会社や管轄の官庁に報告することをお願いします。