意外な廃棄物も再利用?リサイクル材料を活用したコンクリート混和材料

地球上で水の次に流通量が多いと言われる生コンクリート。

生コンクリートから造られる建造物は人々の暮らしを守り、経済を発展させる原動力になってきましたが、反面コンクリートに用いられるセメントを製造時に発生するCO2は、人為的排出量の約6%を占めると言われ、今後新興国・途上国を中心にセメント需要が伸び続けるとCO2の排出量も倍増していくと考えられています。

そんな中、様々な産業で発生する廃棄物をコンクリートの補強や組織を強固にするためにリサイクル材料として用いる試みが世界中で研究されています。

今回は、コンクリートに用いるリサイクル材料の最新事情を紹介します。

Basilisk
Basilisk

1.  魚粉がコンクリートを強固に?

アメリカ、ケンタッキー州エディビルではCarp-Creteと名付けられた鯉の魚粉を混和材として用いたコンクリートが使用されました。

鯉の魚粉は、鉛やヒ素、水銀などを含むフライアッシュのような従来の混和材料と比べて環境負荷が少ないだけではなく、コンクリートに混和することで一般的なコンクリートより強固になり、気象要素により容易に損傷を受けない兆候があると示唆されています。

このCarp-crete用の混和材料が上手くいけば鯉の需要はあらゆるサイズで増え、商業漁師の採算ラインに乗るであろうと予測されています。

コイを食用にする習慣のない北アメリカでは、在来の水生生物を圧迫するまでに繁殖し、大きな問題となっているようです。

侵略的外来生物を駆除しつつ、それをインフラ構造物を強固にすることに活用できればまさに一石二鳥と言ったところです。

2.  廃タイヤのリサイクル材料でコンクリートの爆裂防止

イギリスのシェフィールド大学の研究チームは、タイヤに一般的に埋め込まれている繊維強化材から抽出した繊維を使用し、コンクリートが火災によって爆裂的に破壊する現象を防ぐ技術を開発しました。

火災が発生した場合にコンクリート構造物を損傷または崩壊から保護するために、ポリプロピレン(PP)繊維を使用することは比較的よく知られた技術ですが、シェフィールド大学の研究は、これらの繊維が原材料から作られる必要はなく、代わりに使用済みタイヤから再生され得ることを初めて示したものです。

シェフィールド大学の土木・構造工学科の主筆であるShan-Shan Huang博士は、「これらのリサイクル繊維は、生産に多くのエネルギーと資源を必要とするPP繊維と同等の働きをすることを示した」と説明しています。

繊維は火災の熱により溶解し、コンクリート内に小さな空隙のネットワークを作ることでコンクリート内の水分を逃がしてコンクリートが爆発的に破壊することを防ぎます。

繊維をタイヤゴムから分離し、繊維をストランドに解く技術は、シェフィールド地元のイノベーティブ企業、Twincon社と共同で開発されました。

チームは今後コンクリートに対する繊維の混合比率や、異なる種類のコンクリートへの適用などの研究を進めていくとしています。

また、微細構造レベルで材料が熱にどのように反応するかについてさらに研究を進める予定です。

参考:sciencedaily

3.  電子部品由来のプラスチック廃棄物の活用

良質骨材の枯渇や途上国の経済発展などにより、骨材不足問題が全世界で深刻になっていることから、骨材の適切な代替品を環境面および経済面の両面から探すための研究が数多く行われています。

本研究では、そうした骨材の代替品として電子プラスチック廃棄物を原料とした骨材を開発し、砂と置換えた際の自己充填コンクリートの性状について報告したものです。

1.18~3mmのサイズの高衝撃ポリスチレン(HIPS)顆粒を細骨材の一部の代わりに使用することで、圧縮強度は低下する傾向が確認されましたが、自己充填コンクリートの密度を低減できるほか、細骨材との置換え率を増加させることで自己充填コンクリートの流動性能を高めることができました。

ポリスチレンを用いた骨材は、コンクリートの特性を改善し、軽量コンクリートのセメント充填材として一般的に適用されるため、オーストラリアではビルディングシステム技術(BST)と呼ばれています。

自己充填性能を持つ軽量コンクリートは、建設の容易さ、軽量、工事騒音の小ささ、火災および熱による爆裂の傾向が少ないこと、および施工の省人化などの利点が示唆されているため、今後活用の機会が増加すると見込まれる技術です。

軽量で骨材の代替品となるプラスチック廃棄物由来の材料は、今後コンクリートによる構造物建設が持続的に発展していくために不可欠な技術と言えるのではないでしょうか。

参考:buildings

3. まとめ

温室効果ガス排出量増加に伴う世界的な気温上昇や、プラスチック廃棄物による海洋汚染など、人間社会の発展と地球環境への影響の問題は表裏一体で、常について回る存在です。

野放図な開発と発展によって快適を享受してきた時代は終わり、限りある資源と環境への負荷を意識した持続可能な社会と開発を、皆が考え、行動することが今後必要であると考えられます。

我々コンクリート業界には、CO2排出量の抑制や廃棄物の減量、他業種からの廃棄物の受け入れや副産物を原料とした補強材料の開発などが期待されているのではないでしょうか。

新規CTA