高性能AE減水剤添加量の過多状況

コンクリートに硬化不良が発生すると、その部分のコンクリートは脆く手で触ったらポロポロと剥がれ落ちてしまう場合があります。これは強さが全くなく、構造物の耐久性に係わる問題とされています。

硬化不良を起こす原因はいくつか考えられますが、ここでは代表的な原因とされている型枠の種類及び凍害、混和剤、ドライアウト現象について説明したいと思います。

Basilisk
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1. コンクリートの硬化とは

コンクリートは、使用する材料のセメントに水を加えて練り混ぜると、水和反応を起こし徐々に流動性が失われていきます。流動性が失われるということは硬くなるということですが、この時点ではまだ強度は発現されていません。この状態を凝結と呼び、終結するまでにはセメントの種類、気温、施工条件にもよりますが、およそ1日程度必要になります。

凝結が終了すると強度が発現して、時間の経過と伴に増進し始めます。この状態がコンクリートの硬化と呼んでいます。

2. 型枠が及ぼす硬化不良について

硬化不良は、使用する型枠の種類によって発生することが主な原因となっています。ここで、型枠とは「せき板」と「支保工」があり、せき板の種類が硬化不良の原因となっています。せき板は流し込んだコンクリートが流出しないように留めて置く板のことで、硬化後所定の強度が発現するまでそのまま置いておきます。また、支保工はそのせき板を支える支柱になります。

せき板の種類には、合板、製材、金属製パネル、床型枠用鋼製デッキプレート、透水型枠、プラスチック型枠などがあり、硬化不良に影響を及ぼす危険性があるのが木製の合板と製材です。

木製のせき板を使用した場合、木材に含まれる硬化阻害成分のリグニン(有機物)や糖類などがコンクリートのアルカリ性と反応し、セメントの水和反応を阻害するため、硬化不良が起こるとされています。

ただし、これは直射日光を長時間当てることでリグニンの抽出量が増加するため、ブルーシートなどを被せて保護するか、屋内で保存するなど直射日光を当てないことで防止することができます。また、コーティングしたせき板を使用するという選択肢もあります。

このせき板による硬化不良は、通常内部にまでは発生せず、表面部に起きる現象ですが、鉄骨や鉄筋の箇所にまで達している場合もあるので、注意が必要です。

硬化不良が発生した場合の補修は、変色程度の軽微なものであれば、そのままでも硬化することが期待できますが、手で触って剥がれる場合は補修が必要になります。補修に関しては、不良箇所をチッピングやブラッシングなどで除去して、その箇所を上塗りする方法などがあります。

3. 凍害が及ぼす硬化不良について

コンクリートは、硬化した後に凍害を受けるとひび割れなど耐久性に問題が生じますが、凝結の段階で凍害を受けると硬化不良が発生します。これは、コンクリート中の水分が凍結してしまうと、セメントとの反応が妨げられるからです。

この初期に受ける凍害は、その後の硬化が期待できないため、一度凍害を受けたコンクリートは強度の増進も見込めません。

冬期間での施工は、適切な養生または、混和剤を耐寒促進剤に変更するなど適切な養生計画とコンクリートの配合を検討することが重要になります。

4. 混和剤による硬化不良について

夏期など高温時に施工する場合、スランプロスが大きくなるため混和剤を遅延形タイプに変更する場合があります。また、高強度コンクリート、高流動コンクリートに使用される混和剤は通常、高性能AE減水剤使用します。

双方どちらの混和剤も使用する添加量は配合や気温によって変化します。ただ、遅延剤は、標準添加量から3~4倍の量を使用しない限り硬化不良を起こすことはありません。これは、現実的に製造者側がそこまでの量を使用することは考えにくいので、設備的な故障がない限り発生することはないです。

しかし、高性能AE減水剤は所要のスランプまたはスランプフローを得るために添加量が過多になると分離状態になります。この場合、分離状態のコンクリートを型枠内へ打込むと、粗骨材は下に沈み表面には余分な混和剤が泡状のように溜まって硬化不良になる場合があります。気温による添加量の変化を十分に把握することが重要になります。

高性能AE減水剤添加量の過多状況

 

高性能AE減水剤は、一般的に使用されているAE減水剤よりもコンクリートの流動性時間を長く保持する性能を持っています。しかし、使用量が過多になると凝結時間も遅れるので注意が必要です。

5. ドライアウト現象について

ドライアウト現象は、特にモルタルなどで発生する現象で、セメント硬化不良の一つです。これは、既存のコンクリートの上にモルタルを塗ると水分が既存のコンクリートに吸水され蒸発することで、凝結が正常にできなくなる状態のことです。また、夏期の炎天下で直射日光を浴びたり、強風にさらされたりする場合も同様な現象が起きるので注意が必要です。

防止対策は、事前に散水をし急激な水分の吸水を防ぎます。また、打込み後は炎天下や強風時も含めてシート養生などで水分の蒸発を防ぎます。

6. まとめ

コンクリートの硬化不良について、代表的な原因を説明してきました。また、他にも考えられるケースでは、前日に降った雨や雪解けの水が型枠内に残ったまま除去せずに打ち込んで、部分的に分離状態となり硬化不良になることなどがあります。

コンクリートが硬化不良を起こす原因は、適切な施工計画のもと、製造者側と施工者側が材料の品質管理を徹底することで防止することができると考えます。

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