コンクリートは、鋼材のように一定の条件のもとに製造されるものと違い、使用材料や混ぜ方法、そして製造してからの日数、温度、乾湿の程度などによって、硬化後の強度は異なってきます。よって、できたコンクリートの強度を知るためには、必ず試験を行わなければなりません。

コンクリート強度といえば一般的には圧縮強度のことを示しますが、その他にも引張強度や曲げ強度など、強度の指標は数種類あります。

ここでは、硬化したコンクリートの代表的な強度特性を説明し、その試験方法について紹介します。

Basilisk
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1. 硬化コンクリートとは?

生コンクリートが施工現場で型枠に打設され、適切な養生のもと、日数の経過とともに徐々に硬化していく過程のコンクリートのこと

この徐々に硬化していくことを「強度が発現過程にある」といいます。コンクリート構造物の設計や解析では、このコンクリート強度の値が必要条件となります。

2. 硬化コンクリートの強度特性

2-1. 圧縮強度と試験方法(JIS A 1108)

コンクリート工学において単に強度というと、圧縮強度のことをいいます。理由は、コンクリートは圧縮に強く引張に弱いため、鉄筋コンクリート部材においては圧縮材として設計されているためです。

圧縮強度は、コンクリートが圧縮力を受けて破壊するときの強さを応力度(N/mm2)で表した値で、圧縮強度試験では、破壊時の最大圧縮荷重Pmax(N)を供試体の断面積A(mm2)で除して求めます。

圧縮強度:

圧縮強度の関連記事:「コンクリートの圧縮強度試験について

2-2. 引張強度と試験方法(JIS A 1113)

引張強度は、圧縮方向と逆の方向(引張方向)へ荷重を加え、破壊するときの強さを応力度(N/mm2)で表した値で、圧縮強度の1/10~1/13程度となります。ただし、この割合は圧縮強度が高くなるにつれ小さくなります。

通常、コンクリートの引張強度は割裂引張試験により評価されています。

引張強度:

2-3. 曲げ強度と試験方法(JIS A 1106)

曲げ強度は、供試体の曲げ載荷試験において、供試体が曲げ破壊する時に生じる断面の引張縁応力度(N/mm2)の最大値で、通常、圧縮強度の1/5~1/8程度となります。コンクリートの舗装版やスラブ、舗装用平板ではこの曲げ強度が構造設計に利用されています。

曲げ強度試験方法には、中央点載荷方法と下図に示すような3等分点載荷方法の2通りの方法がありますが、後者の3等分点載荷方法が標準となっています。

曲げ強度:

2-4. せん断強度

供試体の断面に正反対の方向から平行な力を作用させ、せん断力を与えてその作用面ですべり破壊を生じさせようとするとき、すべり破壊に抵抗する最大応力度(N/mm2)で、通常、圧縮強度の1/4 ~1/7程度となります。

試験方法は、JISには規定されておらず、圧縮強度の値をもとに推定されているのが現状です。しかし、RC構造物の耐震改修時においてもせん断強度を考慮する必要があり、近年比較的簡単な設備でせん断強度を求める様々な方法が提案されていますが、曲げの影響を受ける為いずれの方法も真のせん断強度を求めることは難しいと言われています。

2-5. 支圧強度

支圧強度とは、コンクリートが局部的に圧縮荷重を受ける際、耐えられる最大圧縮荷重を荷重作用面積で除した値(N/mm2)をいいます。

支圧強度の検討が必要な構造上の部位は、ビルの基礎スラブや橋台の橋脚上面の支承部などが挙げられます。

支圧強度は、圧縮強度をもとに算出する方法が一般的であり、「道路橋示方書Ⅲコンクリート橋編」に詳細算定式が記載されています。

2-6. 付着強度と試験方法

付着強度とは、通常、コンクリートと鉄筋の付着力に関するもので、コンクリートに埋込んだ鉄筋の引抜き力又は押抜き力の最大値をコンクリートと鉄筋が接触する面積で除した値(N/mm2)を言います。

付着強度は、鉄筋の表面形状によって大きく異なり、異形鉄筋は丸鋼と比較すると極めて大きな値となります。試験方法は、建材試験センター規格や土木学会規準があります。

付着強度:

※コンクリート強度の単位詳細は「コンクリート強度の単位一覧」からご確認ください。

3. 硬化コンクリートの強度に影響を及ぼす要因

硬化コンクリートの強度に影響を及ぼす要因をまとめてみました。

(1)使用する材料の種類と品質

使用するセメントの種類や骨材の強度、また骨材の形状によっても、強度発現性は大きく変化します。

(2)コンクリートの練混ぜ時間及び練混ぜ方法

コンクリートミキサの仕様は、重力式、パン形、強制水平1軸形、強制水平2軸形など他にも沢山ありますが、均質なコンクリートが得られるまでの練混ぜ時間はミキサの仕様によってそれぞれ違いがあります。練混ぜ時間が短すぎると、十分に混練されず、強度の低下につながります。

そこで、ミキサ内で練り混ぜられたコンクリートの均質性を確認する為、「ミキサの練り混ぜ性能試験」を行い、その結果をもとに適正な練り混ぜ時間を決定するのです。

(3)配(調)合条件

配(調)合とは、コンクリートを製造するために用いられる各材料の使用量あるいは混合割合をいいます。また、コンクリートが所定の性能を有するように、各材料の使用量あるいは混合割合を定めることを配(調)合設計といいます。

コンクリート構造物に必要な強度を確保するために、セメント量と水の量の比率をもとに十分に検討された配(調)合設計に従い製造することが重要です。

(4)材齢および養生方法

コンクリート強度の増進は、水とセメントの水和反応に起因します。よって、一般的に材齢が長いほど、また、湿潤養生期間が長いほど強度は高くなります。

養生期間の温度もコンクリート強度に影響を与えます。一般的に、養生温度が気温程度の範囲では、材齢28日までの強度は養生温度が高いほど大きくなりますが、長期の強度増進は、材齢初期の養生温度が低いほど大きくなるといわれています。このように養生温度と強度の関係は複雑です。

要するに、湿潤養生期間をできるだけ長くとり、養生温度も適切に管理することが重要です。

なお、プレキャスト製品の場合は、工場において採熱養生(蒸気養生など)を採用することで、規定のコンクリート強度を早期に発現させ、出荷材齢の短縮を図っています。

最後に

コンクリート構造物の設計や解析では、強度の値が必要条件であることから、その強度の種類と試験方法について紹介しました。特に圧縮強度は、コンクリートの強度特性の代表する指標であり、強度に影響を及ぼす様々な要因について把握しておくことが重要です。

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