生コンクリートの出荷量は日本全国でどのくらい?

皆さんが今いる家、マンション、会社のビル、学校や駅などの建築物にはすべて、どこかしらにコンクリートが使われています。

周りを見渡すと目に入る電柱も、橋も、道端に立つ看板だって、土台にコンクリートが使われているのです。

こんなにも(意外と)身近なコンクリートですが、これらは生コンクリートを製造する工場から工事現場に配達され、型枠の中に流し込まれることで色々なコンクリート構造物に形を変えていきます。

この記事ではこのようなコンクリート構造物の“もと”になる生コンクリートが、日本全国でどのくらいの量使われているかについてご紹介します。

1. 2016年度の生コンクリート総出荷量

2017年の4月に、全国生コンクリート工業組合連合会が発表した2016年度の生コンクリート出荷量は、日本全国で8,391万立方メートルでした。

数字だけではぱっとイメージがしにくいかと思います。では、このような際にいつも基準に使われる東京ドームで例えて見ましょう。

東京ドームシティのHPによると、東京ドーム1杯分の容量は124万立方メートルだそうです。よって、2016年度の生コンクリートの総出荷量は東京ドーム67杯分ということになります。

あれ?意外と少ないかな・・・?と思われるかもしれませんが、皆さんが街中で目にするミキサー車の台数にすると、延べ2,100万台! 山手線の内側全部に、1.3mの高さで流し込める位の量になります。

と、このように膨大な量の2016年度の年間生コンクリート出荷量ですが、これでも前年度より3.6%減少しており、ピークだった1990年度以降でもっとも低い水準だったようです。

1-1. 日本全国にどれくらいの工場数があるの?

生コンクリートというのは読んで字の通り“生もの”で、まだ固まらずに型枠に流し込める状態のうちに工事現場に配達しなければならないことから運搬時間に制限が設けられています。

よって、生コンクリートを製造する工場というのは、よほどの離島などを除いてそれこそ日本全国津々浦々どんなところにでもあるといっても過言ではありません。

2017年の3月末の時点では、全国でおよそ3,300余りの生コンクリート製造工場があるようです。

1-2. 需要先別の出荷比率

さて、そんな2016年度の生コンクリート出荷ですが、どのような用途にどれくらいの割合で使われているのでしょうか。

経済産業省の統計によると、鉄道・道路や港湾・空港、道路などの土木向けの出荷量がおよそ全体の36%、住宅やマンション、ビル、学校や庁舎などの建築向けが64%となっています。

いずれの用途も前年に比べ出荷量は減少しているのですが、土木分野の中でも予算を工事として消化しやすい道路向けと建築分野の住宅需要向けは減少の幅が比較的小さく、需要を下支えしている構図になっているようです。

1-3. 2017年度の需要見込みと推移は

それでは、2017年度の需要の見込みはどの程度なのでしょうか?

全国生コンクリート工業組合連合会では、2017年度の出荷量を8,115万立方メートルと見込んでいます。1990年度以降最低だった2016年より更に減少してしまいますね・・・

しかし、経済産業省の最新の概況では2017年4月~6月期の出荷量は前年同期比で3.3%の増加をしています。

2. 生コンクリートの出荷量は何で決まる?

このように、生コンクリートの全国的な出荷量は土木や建築分野での需要によって決まりますが、なぜ2016年度の出荷量は過去最低となってしまったのでしょうか。

また、製造工場単位での出荷量というのはどのような要因で決まるのでしょうか。少し深く掘り下げて解説します。

2-1. ピークの1990年度と過去最低だった2016年度の違い

生コンクリートの出荷量は、平成はじめの1990年度(平成2年)に約1億9800万立方メートルを記録し、過去最高となっています。この年代は皆さんご存知の通りバブル経済の真っ只中、建設投資額も非常に高い水準でした。

生コンクリートの出荷量は建設投資額に比例した動きを示し、バブル崩壊とともに減少の道のりをたどります。

リーマンショック後の2010年度に一度過去最低となった後、東日本大震災の復興需要により一旦増加をしましたが、再び2014年度から減少を始めてしまいました。

最近では建設投資額の減少に加えて、建設労働者の不足により建設工事に遅れが出るという問題が全国的に見られたことによって2016年度の生コンクリート出荷量は過去最低、2017年度もそれを下回る見通しが出されています。

2-2. 生コンクリート工場の生産能力

一方、生コンクリート工場自体の製造能力はどのように決まるのでしょうか。

一口に言ってしまうと、生コンを練り混ぜる混合機、ミキサーの容量によって決まります。

生コンの工場では、原材料の供給→材料の計量→ミキサーで練り混ぜ→車両への積み込みという工程で製造を行いますが、いくらミキサーが大きくても材料の供給や計量設備が小さければ能力を発揮できません。そこはミキサーの容量とバランスを取るように設計されています。

練り混ぜを行うミキサーの容量は、2回の練り混ぜでミキサー車1台分になるよう2.0~3.0立方メートルとしている工場が多いようですが、中には1回でミキサー車1台分を練り上げるような大きなミキサーを装備している工場もあるようです。

2-3. 運搬車両の数もネックになる

このように、生コン工場の生産能力はミキサーの容量によって決まり、一般的な工場で1時間あたり120立方メートル前後、大きな工場では200立方メートル位になります。

しかし、本当にこれだけの量が建設現場に届けることができるかというと・・・ 実際は運搬するミキサー車の台数次第です。

リーマンショック後に建設需要が落ち込んだ際にミキサー車の保有台数を減らしたことで、急に需要が増えても十分に運搬する車両が確保できないという状況が、ここ数年全国各地で見られています。

3. 生コンクリートの出荷量はこのまま減少傾向?

では、生コンクリートの出荷量は今後このまま減少傾向をたどるのでしょうか?

答えはYESです。

2020年開催の東京オリンピック関連の建設需要や、近年頻発する大型台風による被害の復興により、一時的な出荷量の増減はあるかと思いますが、傾向としては減少をたどると考えられます。

なぜなら今後日本は世界でいまだ経験した国のない少子高齢化と人口減少の道を辿っていくからです。

3-1. 建設作業者の不足

少子高齢化といえども、ビルを新しく建て替えたり住宅を建設する需要は今後もあります。

しかし、今後就業可能な若い世代が減る中で建設作業に就く人はますます減ることが予想されます。今でも建設会社の方とお話をすると、工事に関わるどのような業種でも職人さんが不足している、ということを聞きます。

この問題に対して、国(国土交通省)では、「建設現場における生産性を向上させ、魅力ある建設現場を目指す新しい取組」である i-Construction(アイ-コンストラクション) を進めることとし、コンクリート工事の分野においても生産性向上を目的とした検討を始めました。

3-2.  コンクリート製品化の推進

国交省i-Constructionの第5回コンクリート生産性向上検討協議会では、コンクリート工の生産性を高める取り組みの1つとして、生コンクリートを工事現場に運搬して型枠に流し込む手法ではなく、工場で製造されたコンクリート製品:プレキャスト製品を利用して工事現場で組み立てを行う工法を拡大する方針を示しました。

プレキャスト製品を組み立てる工法は、現場条件によりコストの点でメリット・デメリットの両面がありますが、工事に際し現場で型枠を作る職人を必要としなかったり、天候に左右されることが少なく工期の短縮が図れたりとこれからの時代に非常にマッチしています。

このような国の政策により、コンクリート工事は生コンクリートを現場に運搬して流し込む「現場打ち」から「プレキャスト製品の組み立て」へと年々転換を進めていくでしょう。

4. まとめ

生コンクリートの国内出荷量は、バブル期の1990年度をピークに減少をたどり、2016年度には1990年度のおよそ4割まで減りました。

そして今後も、人口減による建設投資の減少により出荷量は減っていくと考えられます。

しかし、お先真っ暗というわけではありません。

建設に携わる職人さんが減っても、運搬するドライバーが減っても、コンクリートはプレキャスト製品というに形に姿を変え、ちゃんと世の中に残っていきます。

なぜなら、コンクリートは産業革命以降最も安価に大量生産できる建設材料として発展し、いまでは世界中に普及をしているからです。

コンクリートは今後も皆さんの暮らしを守る役割を果たしていきます。

2,000年も前のローマ帝国の時代から人々の暮らしを支えてきたように。