コンクリートの温度変化によるひび割れ

 

コンクリート構造物のひび割れは、美観を損なうだけではなく劣化を進行させ耐久性や水密性などを低下させます。ひび割れの要因は様々ですが、主にコンクリートの材料、設計、施工と大きく3つに分けられます。

ここでは、要因の1つであります「コンクリートの温度変化によるひび割れ」について説明したいと思います。

1. コンクリートの温度ひび割れとは

コンクリートは、練り混ぜるとセメントと水の水和反応(化学反応)によって水和熱が発生し、硬化に伴い温度が上昇して行きます。この温度は断面寸法の大きな部材やコンクリートの配合又は外気温などにもよりますが、数日で中心部の温度が80℃くらいまでになります。最高点に達した温度が、外気温程度に降下するまでに2~3週間程度が必要になります。

コンクリートも一般的な物質と同じで、温度が上昇すると膨張し、降下すると収縮します。この下降した時に収縮が拘束された場合や部材表面と中心部の温度差によって発生した引張応力が、コンクリートの引張強度以上になると「温度ひび割れ」が発生します。

2. コンクリートの温度ひび割れのメカニズム

温度変化に対してのコンクリートの熱膨張係数は10×10-6/℃で、これは長さ10mのコンクリート部材の温度が10℃上昇(下降)するとコンクリートが約1㎜膨張(収縮)します。温度ひび割れは、温度変化による体積変化が拘束される事で発生しますが、このメカニズムは大きく分けて内部拘束と外部拘束の2つに分けられます。

2-1. 内部拘束による温度ひび割れ

コンクリート部材の温度は水和熱によって上昇しますが、上昇量は部材中心部の方が表面部より大きくなります。これは表面部より中心部の方が放熱しにくい条件下のためです。また、部材厚が大きいほど中心部と表面部の温度差は大きくなります。

コンクリート部材の温度差が大きいほど、中心部と表面部の膨張量に差が生じ、周囲が拘束されている中心部では圧縮応力が、放熱により収縮が内部のコンクリートに拘束されている表面部は引張応力が発生します。

この引張応力がコンクリートの引張強度以上になると、内部拘束による温度ひび割れが発生します。内部拘束による温度ひび割れは、温度上昇時期の比較的初期の段階で発生し、発生箇所は表面部分に不規則な状態で発生します。

2-2. 外部拘束による温度ひび割れ

上昇したコンクリート部材の温度は徐々に外気温まで下降し、コンクリートは収縮を始めます。この時、下部の既設コンクリートや硬い地盤などに拘束されていると、収縮が妨げられ部材内部に引張応力が発生します。

部材内部の引張応力が、コンクリートの引張強度以上になると、外部拘束によるひび割れが発生します。外部拘束によるひび割れは、比較的ひび割れ幅が大きく貫通していることが多いため、構造物の耐久性や水密性を大きく低下させる要因となります。

3. 温度ひび割れが発生しやすい構造物

温度ひび割れは、コンクリート構造物の部材寸法が大きいほど、温度上昇量が大きいほど発生しやすくなります。建築分野では、最小断面寸法が壁状部材で80㎝以上、マット状部材・柱状部材で100㎝以上が目安とされています。また、土木分野では、広がりのあるスラブについてはおおよそ厚さ80~100㎝以上、下端が拘束された壁では厚さ50㎝以上とされています。

このような部材寸法の大きな構造物をマスコンクリートと呼んでいますが、部位としては耐圧盤(底盤・マットスラブ)や橋脚、橋台などがあります。

4. 温度ひび割れ制御対策

温度ひび割れの制御対策には、様々な方法がありますが大きく分けて、「温度上昇量の低減」、「引張応力の低減」、「適切な施工計画」の3つに分けることが出来ると思います。以下にこれらの対策について説明します。

4-1. 温度上昇量の低減

①セメントの選定

水和発熱の小さいセメントの選定が必要です。温度上昇量が小さい順に低熱ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、フライアッシュセメントB種、高炉セメントB種、普通ポルトランドセメントとなります。しかし地域によっては、入手困難なセメントがあるので確認が必要ようです。また、高炉セメントB種はマスコンクリートによく使用されて来ましたが、温度上昇量の最高値は普通ポルトランドセメントと同等かそれ以上となる事がありますので、取り扱いには注意が必要です。

②混和材料の検討

高性能AE減水剤や流動化剤などAE減水剤よりも減水率の高い混和剤を使用すると単位水量が低減出来るため、合わせて単位セメント量が低減出来ます。一般にコンクリートの発熱量は、単位セメント量10㎏/m3に対して1℃程度増減します。

高炉スラグ微粉末やフライアッシュの混和材は、ポルトランドセメントに混合して使用すると発熱量が抑制されます。さらに長期材齢の強度増進が普通ポルトランドセメントより大きいため、管理材齢を91日以内に設定することで、単位セメント量を低減した配合設計が出来ます。

また、最近では膨張材を使用することも多くなり、構造物のコンクリート温度が下降するときの収縮を抑制するための効果が期待出来ます。

③コンクリートの配合設計

コンクリートの配合は、所要の強度及びワーカビリティーを確保しつつ、単位セメント量を低減させることが有効になります。低減方法としては、設定スランプ値を小さくし、強度管理材齢を長期材齢にして配合を設計します。

④コンリート材料の温度低減

コンクリートに使用している骨材などの使用材料を冷却し、製造時にコンクリート温度の上昇を抑えます。また、トラックアジテータ車に遮熱性のドラムカバーを装着し、ドラム内の大幅な温度変化を防止出来ます。

⑤コンクリート打込み後の養生

コンクリート打込み後の養生は、部材全体の温度が急激に下がらないよう、保温性の良いシートや断熱材などを使用し急激な冷却を防止出来ます。また、散水で湿潤養生を行う場合は、中心部と表面部の温度差が大きくならないよう注意が必要となります。

他にパイプクーリングによる冷却方法があり、コンクリートを打込む前に予めパイプを設置し、打込み後に河川水などを通水・循環し内部温度の最高値を下げる方法です。この方法は、適切な温度管理が重要になります。

4-2. 引張応力の低減

①ひび割れ誘発目地

ひび割れ誘発目地は、あらかじめ温度ひび割れが発生する箇所を計画的に定めて、所定の間隔で部材断面に欠損部を設置します。目地を設置することで、ひび割れを誘発させ引張応力を受ける部材の長さを短くしひび割れを制御します。

②養生方法の検討

型枠は保温性がある材料を使用し、存置期間を通常より長くすることで急激な冷却を防止出来ます。

③外部拘束の低減

既設コンクリートや硬い地盤などの外部拘束については、コンクリートを1回に打込む長さ(L)と高さ(H)の比(L/H)を小さくすることで拘束は緩和され、外部拘束による引張応力を低減出来ます。

4-3. 適切な施工計画

①コンクリート打設時の対策

夏期の外気温が高い日中の打設は極力避けて、夜間や早朝などの外気温が低い時間帯にコンクリートを打設することで温度上昇を抑えることが出来ます。

②コンクリートの打込み区画、リフト高さの検討

1回にコンクリートを打込む高さや長さが大きいと温度上昇量も大きくなります。区画の大きさ(ブロック分割)を複数に分けて打込むことは温度上昇量の低減に繋がります。

また1回に打込む高さ(リフト高さ)を1m~1.5程度に抑えることも温度上昇量の低減に繋がりますので、合わせて検討及び計画が必要となります。

5. まとめ

温度ひび割れの制御対策には様々な方法がありますが、構造物のひび割れを制御する上で最適な方法を選定することが重要になります。ひび割れが発生する箇所を事前に予測・検討することにより、適切な計画の基で効果的な対策が実施出来ます。