セメント新聞 2016年9月13日号

「pMpコンクリート実用化へ SDC大臣認定 道内発の取得」

昨年創業80周年を迎えた會澤高圧コンクリート(苫小牧市、會澤祥弘社長)は、生コン、プレキャスト製品、パイルおよびHパイルを主力事業とするコンクリートの総合メーカーで、事業戦略のコアに材料の変革を据えている「コンクリートマテリアルのプロ集団)を自認する。

これまで常にコンクリート材料・技術のパイオニアとしての道を歩んできた同社は、昨年10月、創業80周年の記念式典に合わせ、同社の技術力とコンクリート材料へのこだわりの到達点ともいえる「水分練りペースト(pMp)コンクリート」を発表した。

きわめて小さい水セメント比(25%)でセメントペーストを先練りして安定性の高い「一次凝集構造体」を生成し、その後残りの水、次いで骨材を練り混ぜて製造する高機能・高耐久コンクリートで、高い保水力を有するためひび割れなどの原因となるブリーティングの発生を大幅に抑制できる。水和がゆっくりと長期間持続する点も特徴だ。二次水に少量の凝結遅延剤をあらかじめ添加して一次凝集構造体を被膜すると、数日間にわたって水和反応を停止させ、生コンを使用したい時に硬化を開始させるといった硬化時間のコントロールが可能になる。

一般的な材料だけで製造可能な“夢のコンクリート”だが、通常の強制二軸型ミキサーなどではセメントと一次水を練り混ぜても一次凝結構造体を生成する事はできなかった。コンクリートの品質にこだわり、分割練りで製造する「SECコンクリート」などに古くから取り組んできた同社は、蓄積してきた分割練りのノウハウをもとに、攪拌性能に優れるコーンタイプのミキサー「ファウンテン」を独自に開発し、pMpコンクリートの製造を可能にした。現在、札幌の菊水工場に専用の製造設備を設置し、出荷体制も整えている。

発表以降、大きな反響があった。スーパーゼネコンをはじめとする建設関連企業や業界団体などから問い合わせがあったほか、「建築・土木分野を問わず、このような用途でも使えるのではないかと提案してくださるゼネコンもあり、学界などからも興味を示していただいている」(會澤社長)という。

問い合わせは、遠くインドや中東など海外の企業からも寄せられた。コンクリートの製造・使用条件がわが国ほど恵まれていない国々では、pMpコンクリートを活用するメリットは非常に大きくなるとみられる。

同社はpMpコンクリートの既存事業への活用も計画している。現在、茨城県桜川市内の真壁工場で戸建て住宅用プレキャスト基礎工法「シグマベース」の新規ラインを整備中だが、同工法における生コン打設過程を、固化制御したpMpコンクリートで実施する考えだ。

プレキャストコンクリート製フラットパネルを縦横に連結して基礎立ち上り部を組み上げた後、床面(底盤スラブ)すべてに生コンを充填して立ち上り部と床面を一体構造として打設する同工法は、スピード施工が特長。この工法に、使いたい時に手軽にフレッシュ性状を実現できるpMpを用いることで、建設予定地に直接型枠を持ち込み、その場でパネルを成形するオンサイト型プレキャスティングにも道が開けると見ているからだ。

一方同社は今年1月、BASFが開発した普通強度領域の高流動・中流動コンクリート「スマートダイナミックコンクリート(SDC)」について、伊藤組土建と共同で国土交通大臣認定を取得した。道内では初の取得事例となる。すでに、民間水力発電施設にSDCを80m3ほど出荷した実績もある。

「高流動コンクリートは建設の生産性向上につながる技術として注目されているが、実際には耐震補強工事などで少量だけ必要になることが多い。ユーザーからは高強度でない高流動コンクリートの要望が少なくなかったが、材料メーカーとして見ると必ずしもメリットの大きいコンクリートではないので、対応する生コン工場はまだ少ないようだ。当社はコンクリートに関してユーザーの期待に応えないという選択肢を持たないので、結果的に道内初の認定・出荷事例となった」。

16年3月期(単体)の同社の売上高は前年比3.2%減の153億8100万円。営業利益は49.7%減の4億5100万円だった。部門別に売上高を見ると、生コン部門は前期比1.9%減の56億1200万円。プレキャスト部門は8.1%減の46億7100万円。パイル部門は21.9増の17億400万円。Hパイル部門は5.4%減の31億3600万円。

15年度は公共工事が低調で土木分野、とくにプレキャスト製品の需要が低迷した。ただし、今年度に入ってからはTPPに関連する畜産クラスター事業が本格的に動き出したこともあり、農業の大規模化に向けた基盤整備事業などへのプレキャスト製品の出荷がきわめて高い水準で推移している。こうしたことから、16年3月期(単体)は、当初計画の売上高150億9400万円、営業利益5億9700万円を超えて「上振れ」する公算が高まっている。

セメント新聞

記事はこちらからご覧ください「セメント新聞 2016年9月13日号

新規CTA