セメント新聞 2019年6月24日号

會澤高圧コンクリート ドローン事業に参入
米ベンチャーと新型機開発
自動航行で補修・補強

會澤高圧コンクリート(本社・北海道苫小牧市、會澤祥弘社長)はこのほど、アメリカ・マサチューセッツ工科大学(MIT)発の航空宇宙ベンチャーと提携して長距離・大容量の産業用ドローン(無人航空機、UAV)の共同開発を実施すると発表した。今夏をメドに新型機を開発し、自動運行による「地理情報システム(GIS)」サービスの提供をはじめ、インフラ点検・監視、維持補修サービスなどの事業を幅広く展開していく。

提携したのは航空宇宙工学の研究者であるロン・ファン博士がCEOを務めるトップフライイトテクノロジーズ(TFT、本社・ボストン)。

現行のドローンの飛行時間は最長でも15分程度と短く、長時間の自動航行が難しいほか、バッテリー交換が頻繁で煩雑になる課題があった。TFTが開発したハイブリット電力システムは1回の給油で長時間の飛行が可能で、運行管理の手間を大幅に削減できる。

両者は最大10kgの積み荷を抱えて最長1時間の継続運行が可能な新型ドローン2機を開発する。機体の販売を進めながら国内の顧客基盤を作り、年末までに新会社などビジネスユニットのあり方について最終決定する方針だ。

會澤高圧コンクリートは老朽化への対応が迫れているインフラのメンテナンス事業に「自己治癒マテリアル」の活用を目指している。2017年にオランダ・デルフト工科大学発のバイオベンチャー「バジリスク」と提携。バクテリアの代謝機能を活用してコンクリートのひび割れを自然に修復する「Basilisk」シリーズの製品化を進めている。

このうちひび割れ部分に塗布することで最大0.8ミリまでのひび割れが修復可能な塗布型材料「Basilisk ER7」のドローンによる自動塗布・目視外施工法の開発を模索していた。

新型ドローンは、10kgの積み荷のほか➀レーザー照射の点群データを基に地形図や構造物の3D画像を作成する高性能ライダー(LIDAR)➁高解像度(4K)電子光学カメラ➂コンクリート表面の浮きや剥離を解析するのに使うサーマルイメージングカメラ(サーモグラフィー)➃コンピュータユニットなどを搭載。機体の総重量は33kgに達する見込みで、これに燃料の重量が加わる。

この新型機を自動航行させることにより、顧客に付加価値の高い情報を提供し続けるGISサービスを展開する。コンクリート系のインフラの点検はじめ、大規模農地の育成状況のモニタリングと農薬散布、長大な送電線網の自動監視などさまざまな用途への活用を図る方針だ。併せて「Basilisk ER7」のドローン施工についても検討を進めていく。

機体の運行や保守点検については、国内ドローン業者の老舗で、全国28ヵ所にドローンオペレーター認定教習所を組織しているTEAD(本社・群馬県高崎市、相吉雄二社長)と提携する。

TFTは2014年にロン・ファン博士をはじめMITの卒業生が中心となって設立。混合ガソリンを燃料とするエンジンで発電しながら軽量バッテリーに蓄電して電力を供給するハイブリッド電力システム(特許取得技術)を搭載した独自機体「airborg」を開発している。

セメント新聞 2019年6月24日号

記事はこちらからご覧ください「20190624 セメント新聞

新規CTA