北海道建設新聞 2019年8月28日号
コンクリインフラ ドローンで保守
會澤高圧コンクリート参入會澤高圧コンクリート(本社・苫小牧)は、ドローンを使ったインフラ保守事業に乗り出す。米国マサチューセット工科大(MIT)発の航空ベンチャーを今春提携し、このほど高機能ドローンを調達。同社はコンクリートのひび割れを自然に直すバイオ溶液を扱っていて、今後ドローンに溶液吹き付け装置を搭載することで、無人での保守作業を実現する。将来は橋脚の修繕などを全国規模で受注し、大型ビジネスに育てる考えだ。
橋梁修繕など全国受注へ
提携先のトップ・フライト・テクノロジーズ(TFT、本社・マサチューセッツ州モールデン市)は、MIT卒業生を中心に2014年に設立したベンチャー企業。現在一般的に使われている業務用ドローンの飛行時間は15分前後だが、同社製は1時間と長いのが特長だ。
通常のドローンはバッテリー駆動のため、長く飛ばそうとするほど重い大型バッテリーが必要で、浮くのが難しくなる。だが、同社製は、混合燃料を積んで小型エンジンで発電しながらモーターを回す「ハイブリッド電力」システムを採用。期待は横幅2メートル強、重量45キログラムと大型ながら長時間航行を可能とした。
會澤高圧コンクリートの嘉津山公一執行役員は「本道の広い土地は移動だけでも時間がかかり、まとまった作業をやるには長く飛べることが重要」と強調する。
運べる荷の重さは約10キログラムで、現在普及している農薬散布用ドローンと同じ水準。将来は技術開発で100キログラム近くまで運べるようにするという。
7月に米国から2機を輸入し、うち1機を使った公開実験を22日、東神楽町の東和土地改良区で初実施した。現場では機体に高解像度カメラと赤外線カメラを付け、プログラムによる自動運転で約10分間飛行。北海道開発局や地元自治体、取引先の関係者約30人が見守る中、事前に設定した地点を撮影してトラブルなく戻り、着陸した。
両社は現在、コンクリートインフラの保守作業を可能にするため、修復溶液を一方向に吹き付けるドローン容装置を米国で開発中だ。會澤高圧コンクリートは17年にオランダのバイオベンチャー企業と契約し、特殊なバクテリアの働きでコンクリのひび割れを修復する溶液「バジリスクER7」の国内独占販売権を持っている。
開発を待つ間、同社は道内外でTFT製機材のデモンストレーションを実施し、足掛かりとして農業などドローン活用実績のある分野での受注を目指す。このほか、赤外線カメラを使った鳥獣害対策など、新たなビジネスの開拓も同時並行で進める。
20年には吹き付け装置を実用化し、インフラの点検・保守を本格展開する考えだ。同社は日本国内でドローン事業のノウハウを蓄積した先に、海外での事業展開も視野に入れている。
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