セメントの種類について紹介!

コンクリートはセメント、水、細骨材(砂)、粗骨材(砂利)で作られていることはご存知でしょうか?

特にセメントは水と混ぜあうことによって、水和反応をおこし、硬化する性質があり、コンクリートには欠かせない材料です。また、セメントにも用途によっていろいろな種類があります。

それではセメントの種類についてご紹介します。

Basilisk
Basilisk

1. セメントの種類

セメントの種類は大きく分けて、ポルトランドセメント、混合セメント、エコセメント、特殊セメントの4種類があります。それぞれの種類にはいろいろな特徴があり、さまざまな工事に使用されています。まずはその4種類について簡単にご紹介します。

1-1. ポルトランドセメント

ポルトランドセメントは、セメントの原料となるクリンカーの配合割合を調整することで、硬化の速さや固まる際の発熱量などに様々な特色を持たせています。クリンカーの主要化合物は、けい酸三カルシウム(C3S)、けい酸二カルシウム(C2S)、アルミン酸三カルシウム(C3A)、鉄アルミン酸四カルシウム(C4AF)でその特性は、下記の表になります。

 

これらの組成化合物の配合割合を変えることにより、普通・早強・超早強・中庸熱・低熱・耐硫酸塩の6種類のポルトランドセメントが製造されています。また、さらに、それぞれに低アルカリ形タイプのものがあり、合計12種類のポルトランドセメントがJISに制定されています。

1-2. 混合セメント

混合セメントは、ポルトランドセメントと各種混合材を混ぜ合わせたセメントで、高炉セメント・シリカセメント・フライアッシュセメントの3種類があり、JISに制定されています。また、混合材の分量によって、さらにA・B・C種の3種類に分類されています。

1-3. エコセメント

エコセメントは、都市ごみの焼却灰等の廃棄物を主原料とした資源リサイクル型のセメントの一種として2002年7月に新たにJISとして制定されました。エコセメントはその特徴によって普通エコセメントと速硬エコセメントの2種類に分類されています。

1-4. 特殊セメント

特殊セメントは、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、グラウト用セメント、油井セメントなどがあり、JIS規格外品として製造されています。特殊なセメントのため、頻繁に工事に使用されるものではありません。

2. 各種セメントの特性と用途

セメントの種類について、大きく4種類あることが分かっていただけたでしょうか?

次は、ポルトランドセメントの種類、混合セメントの種類、エコセメントの種類、特殊セメントの種類、それぞれについてセメントの特性と用途をご紹介します。

2-1. ポルトランドセメント

①普通ポルトランドセメント

普通ポルトランドセメントは一般的に工事用または製品用として最も多く使用されているセメントです。

②早強ポルトランドセメント

早強ポルトランドセメントは早期に高い強度(3日で普通ポルトランドセメントの7日強度に相当)が得られるため、プレストレストコンクリート、寒中コンクリート、工期短縮を要する工事、工場製品などに使用されています。

③超早強ポルトランドセメント

超早強ポルトランドセメントは、早強ポルトランドセメントよりもさらに早期に高い強度が得られるセメントであり、早強ポルトランドセメントの3日強度を1日で発現します。緊急工事、寒中工事、グラウト用などに使用されていましたが、現在は製造されていないそうです。

④中庸熱ポルトランドセメント

中庸熱ポルトランドセメントは水和熱を低減するために水和反応速度が比較的速い原料を減らし、水和反応速度が遅い原料を多くしているため、普通ポルトランドセメントを基準に比較すると水和熱は低く、初期強度は小さいが長期強度が大きいセメントです。ダムなどのマスコンクリートに使用されています。

⑤低熱ポルトランドセメント

低熱ポルトランドセメントは1997年4月に新たに追加されたポルトランドセメントで、水和熱を低減するために、中庸熱ポルトランドセメントよりもさらに水和反応速度が遅い原料を多くしています。中庸熱ポルトランドセメントよりも水和熱が低く、初期強度は小さいが長期強度が大きいセメントです。

また、高強度域での強度発現が良好であり、高性能AE減水剤が有効に作用するため、低水粉体比のコンクリートで高流動性が得やすいという特徴があります。以上の理由より、低熱ポルトランドセメントはその低発熱性を活かしたマスコンクリートに使用され、さらに高強度コンクリート、高流動コンクリートにも使用されています。

⑥耐硫酸塩ポルトランドセメント

耐硫酸塩ポルトランドセメントは、水和反応速度が非常に速い原料を少なくして硫酸塩との反応性を小さくしてあるセメントです。硫酸塩を含む土壌地帯での工事に適し、耐海水性にも優れています。耐硫酸塩ポルトランドセメントの多くは中近東方面へ輸出されているそうです。

⑦低アルカリ形ポルトランドセメント

低アルカリ形ポルトランドセメントは、セメント成分中の全アルカリ量を0.6%以下に抑えたセメントです。普通、早強、超早強、中庸熱、低熱、耐硫酸塩の6種類それぞれに低アルカリ形があり、アルカリ骨材反応が起きる可能性がある場合に使用されています。

2-2. 混合セメント

①高炉セメント

高炉セメントは、製鉄の段階で高炉から排出された副産物(高炉スラグ)を混合したセメントです。混合する高炉スラグの分量は、A種で5%超え30%以下、B種で30%超え60%以下、C種で60%超え70%以下になります。

また、高炉スラグには潜在水硬性があって、ポルトランドセメントの刺激によって次第に硬化する性質があります。潜在水硬性とは、単に水を混ぜただけでは硬化はしませんが、刺激剤と呼ばれる少量の物質が存在するときに硬化し、難溶性の水和物に変わるような性質のことをいいます。

なお、高炉セメントの特性としては、初期強度は小さいが、長期強度が大きく、化学抵抗性、耐熱性、水密性、アルカリ骨材反応抑制などの向上に効果があります。ダム、河川、港湾工事などの土木工事に広く使用されています。

②シリカセメント

シリカセメントは、純度の高いけい石などの粉末を混合したセメントです。混合するシリカの分量は、A種で5%超え10%以下、B種で10%超え20%以下、C種で20%超え30%以下になります。強度80~90N/mm2が必要な高強度パイル(PHCパイル)などに使用されています

③フライアッシュセメント

フライアッシュセメントは、石炭火力発電所において微粉炭を燃焼する際に排出される副産物(フライアッシュ)を混合したセメントです。

混合するフライアッシュの分量は、A種で5%超え10%以下、B種で10%超え20%以下、C種で20%超え30%以下になります。

また、フライアッシュは、ポゾラン反応性を有します。ポゾラン反応とは、それ自体に硬化する性質はないが、水の存在のもとで水酸化カルシウルと常温で反応して不溶性の化合物を作って硬化する現象です。

なお、フライアッシュは、球形であるため流動性がよく、単位水量を減らすことができ、長期的に強度を発現する働きがあります。乾燥収縮も小さく、水和熱も低いため、ダムなどのマスコンクリートに使用されています。

2-3. エコセメント

エコセメントは、都市ごみ焼却灰を主に必要に応じて下水汚泥などの廃棄物を従としてエコセメントクリンカーの主原料に用い、製品1tにつきこれらの廃棄物を乾燥ベースで500kg以上使用してつくられるセメントです。

ポルトランドセメントに比べて塩化物イオン量がやや多く、使用実績が少ないことから当面の措置として用途が限定されています。

①普通エコセメント

普通エコセメントは、製造過程で脱塩素化させ、塩化物イオン量がセメント質量の0.1%以下のもので、普通ポルトランドセメントに類似する性質をもつセメントです。鉄筋コンクリート、無筋コンクリートに使用することができます。

ただし、単位セメント量の多い高強度・高流動コンクリートを用いた鉄筋コンクリートやプレストレスコンクリートへの適用は除外されています。

②速硬エコセメント

速硬エコセメントは、塩化物イオン量がセメント質量の0.5%以上1.5%以下のもので、塩素成分をクリンカー鉱物として固定した速硬性をもつセメントです。無筋コンクリートに使用することができます。

2-4. 特殊セメント

①白色ポルトランドセメント

白色ポルトランドセメントは、JISに規定されていないポルトランドセメントの一種です。鉄分を極端に少なくして白色にしてあるため、顔料を入れて着色ができ、ブロック、塗装用のほか、一般建築物にも使用されています。

②アルミナセメント

アルミナセメントは、アルミン酸カルシウムを主成分とし、非常に早強性であるため、1日で普通ポルトランドセメントの28日に相当する強度に達します。長期強度が不安定な面がありますが、耐火性や化学抵抗性に優れているため、緊急工事用のほか耐火コンクリートとして利用されています。

③超速硬セメント

超速硬セメントは、極めて短時間で高い強度を得られるようにしたセメントです。2~3時間でJISの圧縮強さは10N/mm2に達します。また、アルミナセメントのような長期強度の低下がないため、床版や機械基礎の打替えのほか、各種補修工事に使用されています。

④グラウト用セメント

グラウト用セメントは、コロイドセメントとも呼ばれ、粒子を非常に細かくしたセメントです。中には微細粉した高炉スラグ微粉末やシリカフュームを混合したものもあります。岩盤やひび割れに注入して地盤の崩壊や湧水を防止する目的で使用されています。

⑤油井セメント

油井の掘削において、鋼管パイプと坑壁との間に注入し、パイプを固定するためのセメントです。

3. まとめ

セメントの種類について、各種セメントの特性と用途を交えてご紹介されていただきました。一般的に使用されるセメントは、普通ポルトランドセメント、高炉セメントB種が多いかと思います。

しかし、コンクリート構造物に求められる性能、環境条件、施工条件などによって、使用するセメントの検討が必要ではないでしょうか。

新規CTA