コンクリート構造物の性能を維持するためには、構造物の調査・診断結果を踏まえ現状におけるコンクリートの劣化度と今後の劣化進行予測に基づき、適切な維持管理を定期的に行うことが必要です。

この記事では、コンクリートに生じるひび割れの分類とひび割れの幅に応じた補修要否の基準についてご紹介します。

Basilisk
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1. ひび割れ補修・補強方法と実施の考え方

コンクリートに生じたひび割れや変状の補修・補強方法の選定にあたっては、構造物の変状の原因及び劣化状況を十分に調査し、これらの劣化メカニズムに適切に対応できる方法とすることが重要です。

また、実際の補修・補強の実施にあたっては、構造物の劣化状況やその安全性への影響度により緊急度を判断して対応します。変状の原因の排除が困難な場合や変状の進行が速い場合には、対象とするコンクリート構造物の期待余命やライフサイクルコストを考慮して補修・補強の目標レベルを設定するなど、長期的な視野に立った補修・補強の維持管理計画を立てることが必要です。

2.  ひび割れの種類について

2-1. 初期ひび割れ(コンクリート硬化前)

初期ひび割れとは、コンクリートは硬化する過程の中で早い段階で発生するひび割れで、硬化前のひび割れともいいます。初期ひび割れの原因は、沈下ひび割れ、乾燥ひび割れ、型枠・支保工の移動等があります。

2-1-1. 沈下ひび割れ

単位水量の大きいコンクリートほどブリーディングによって水が上昇するため沈下する傾向があります。このためコンクリート上面付近に鉄筋がある場合などには沈下が鉄筋で拘束されるために、打設後2~3時間後に、鉄筋に沿ってひび割れが生じることがあります。

2-1-2. 乾燥ひび割れ

コンクリートの打設後、コンクリートが十分に硬化していない状態で表面が乾燥するとセメント分が収縮して表面にひび割れが生じる事が有ります。打設直後に日射にさらさせれたり気温の高い夏期の施工で発生しやすい傾向がありますが、冬期施工でも養生が不適切な場合に生じる事があります。

2-1-3.  型枠・支保工の移動によるひび割れ

型枠からの漏水やモルタル漏れがあった場合には、沈下によってひび割れが生じる事があります。またコンクリートの凝結開始後に、型枠の変形、支保工の不動沈下があるとひび割れが生じる事があります。

2-1-4.  加重や振動によるひび割れ

コンクリート打設後凝結が進行中に、加重や振動が作用するとひび割れを生じる事があります。また打設時に既に凝結が始まっている段階で鉄筋に振動を与えると、付着強度が低下してひび割れが生じる事があります。

2-2. 硬化後ひび割れ

コンクリートが硬化後、様々な条件によって引張張力が作用し、ひび割れが生じる事があります。鉄筋コンクリート構造物は引張り応力を設計条件として検討していないので、ひび割れが発生したからといって構造物の性能が低下するわけではないです。

しかし、ひび割れを通して水や酸素が浸入することによる鉄筋の発錆によるひび割れや、凍結融解によるひび割れ等が発生する危険性があります。

2-2-1.  鉄筋の発錆によるひび割れ

コンクリートは大気中の炭酸ガス(CO2)が浸透することにより徐々にアルカリ性が弱まり中性化します。中性化が鉄筋位置まで達するとアルカリによる鉄筋保護の効果が薄れ、水と酸素によって鉄筋は錆びます。鉄筋は錆びると膨張し、コンクリートに圧をかけ引張り応力を生じさせる事で鉄筋に沿ったひび割れが生じる事があります。

一度ひび割れが発生するとそこから水が入り、鉄筋の錆びはさらに進み、コンクリートの剥離や錆汁によるコンクリートの変色が加速的に生じます。

2-2-2.  凍結融解によるひび割れ

寒冷地においては、コンクリート内の水分が夜間に凍結し膨張圧が生じ、日中融解する繰返し作用を受けることになります。これが凍結融解作用といわれます。凍結融解作用により、コンクリート内部に応力が発生する事でひび割れが生じる事があります。

2-2-3.  アルカリ骨材反応によるひび割れ

アルカリ含有量の多いセメントを使用した場合、水和によって生じたアルカリ成分と骨材中に含まれるシリカ鉱物とが化学反応を起こし、アルカリシリカゲルを生成します。これがコンクリート中の水分を吸収して膨張し、ひび割れが生じる事があります。

アルカリと反応する鉱物は、火山ガラス、クリストパライト、トリジマイト、オパール等があります。これらの鉱物すべてが有害な膨張を示すことではなく、場合によっては他の鉱物と混合した場合により大きな膨張を示すこともあります。

3.  コンクリートのひび割れ補修の判定方法

補修とは、劣化した部材あるいは構造物の今後の劣化進行を抑制し、耐久性の回復・向上と第三者影響度(劣化した構造物の周囲において剥落コンクリートなどが人及び器物に与える傷害などの影響度合い)の除去または低減を目的とした対策です。

3-1. ひび割れ補修。補強要否の判定

(1)補修・補強の要否を判定する場合は以下によります。

(2)第三者への影響度合いに性能が関係する問題となる場合には、処置を適切に行なったうえで「技術者の高度な判断に基づく判定(コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針-2003-の75頁)」によることを原則とします。

ただし、ひび割れに関して角落、剥離、抜落ちが明らかな場合には”補修要”と判定します。

(3)対象部材による判定

対象が構造部材でない—–→(4)、(6)

対象が構造材  ————→(4)、(6)によるほか(5)による

(4)耐久性や防水性の観点から補修の要否を判定する場合

ひび割れの幅による補修の要否は、本来構造物の重要性、環境条件および年数に応じて技術者が判断するべきです。拠り所のない場合、調査によって得られたひび割れ幅を下表と照合して補修の要否の判定を行うことが出来ます。

調査したひび割れ幅が下表の(A)と(B)の中間となる場合は、「技術者の高度な判断に基づく判定」によります。この場合は、ひび割れ幅だけでなく、ひび割れの原因、ひび割れの深さ、密度、パターン等を総合して判定。水利関係の構造物など漏水に対する抵抗性が要求されるものは「防水性からみた場合」を参照します。

ひび割れの補修基準表①

他の要因(大、中、小)とは、構造物の耐久性及び防水性に及ぼす有害の程度をしめしており、次表の要因を総合して定めます。

ひび割れの補修基準表②

(5)構造安全性能から補強の要否を判定する場合

構造物の耐力低下が考えられる場合は、「技術者の高度な判断に基づく判定」によることを原則とします。

ただし、構造形式が単純で、損傷が明らかな場合には、信頼できる方法により補強の要否を判定してよいです。

(6)その他から補修の要否を判定する場合

気密性、美観等によって補修の要否を判定する場合は「技術者の高度な判断に基づく判定」によります。

以上、参考元“コンクリートのひび割れ調査、補修・補強指針-2003- ”

4.  まとめ

コンクリートのひび割れには様々な原因が考えられます。遠くからでも見た目ではっきり確認出切るほどのひび割れに関しては、状態が悪化して構造性能が確保されていない可能性があるので注意する必要があります。

遠方から見た目で確認できるひび割れがあった場合でも環境や様々な条件で補修の必要性や方法が異なるため、専門の業者に依頼して確認してもらう事が良いでしょう。適切な対処をすることでコンクリートの耐久性を維持し、健全な状態を保つことが出来ます。

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