2018年 6月18日大阪府北部を震源地とする大きな地震が発生しました。
この地震により9歳の小学生が、通学路に設置されたコンクリートブロック塀の下敷きになり亡くなるという、痛ましい事故が起きてしまいました。
その後の調査で、全国の幼稚園や小中学校、高校などのうち、安全性に問題があるブロック塀は1万2000校以上に上る事が分かりました。
また第二次世界大戦後、日本全国の一般家庭でもブロックを使用した塀が設置され続けていましたが、その中にはその後の調査により、かなりの数の違法建築があることが分かってきています。
コンクリートブロック塀は、プライバシーを守るというメリットがありますが、一方で、誤った施工を行っていると地震などの災害によって人の生命を奪う凶器にも代わってしまう可能性の高い危険な建築物です。
ここでは、危険なコンクリートブロック塀(以下ブロック塀)の見分け方について説明していきます。
1. 国や建築学会からの発信
現在、国土交通省から2018年6月21日付で『建築物の安全点検について』通知が発表されており、また日本建築学会からは、『危ないコンクリートブロック塀の見分け方』という情報が発信されました。
これら2つの内容はほぼ同じであることから、今回は国土交通省からの通知をもとにその内容について解説していきます。
1-1. 第一段階 外観に基づく点検
点検は二段階に分けた調査となっています。
先ずは第一段階として外観を目視により調査し、以下の項目に関し問題がないか確認して行きます。
①高すぎないか。
鉄筋を使用せず積み重ねて製造したブロック塀の高さは1.2m以下でなければなりません。内部に規定とおりの鉄筋が入っているなど、補強されたブロック塀の高さは、2.2m以下とします。
②厚さは十分か。
鉄筋を使用していないブロック塀は、高さの1/10以上、すなわち高さが1.2mの場合その1/10以上となるので、使用しているブロックの厚さは12㎝以上必要です。
また補強されたブロック塀の場合、使用するブロックの厚さは10㎝以上(日本建築学会の設計基準では、安全性を高める為12㎝以上としています)、ただし高さが2mを超える場合は、15㎝以上となっています。
③控え壁があるか。
控え壁とは壁の倒壊を支える為に、ブロック塀に対し垂直に設置する壁のことです。
鉄筋を使用していない塀には、間隔4m以下ごとに壁の厚さの1.5倍以上突出した壁をつけなければなりません。すなわち、鉄筋を使用していない高さ1.2mのブロック塀の場合、18㎝以上の長さの控え壁が必要になります。
一方補強されたブロック塀の場合は、間隔3.4m以下ごとに、塀の高さの1/5以上の控え壁を設けなければなりません。
塀の高さが2.2mの場合、44㎝以上の長さの控え壁を設置することになります。
④基礎があるか。
ブロック塀は本来、鉄筋により補強されたコンクリート製の基礎の上にのっている必要があります。
しかしこの基礎が地中に埋まっている場合もあり、たとえ基礎が確認出来たとしても、その基礎が適切な配筋となっているのかは、確認が難しいと思います。
⑤老朽化し亀裂が生じたり、傾き、ぐらつきなどが生じたりしていないか。
ブロックの老朽化によって亀裂が生じたり、基礎の老朽化により塀の傾きやぐらつきがある場合は、早急に調査が必要です。
1-2. 第二段階 ブロック内部の診断
第二段階のブロック内部の診断については、第一段階の外観に基づく点検でひとつでも問題が発見された場合、ブロックの一部を取り外して法令に基づき詳しく確認していく必要があり、専門家の協力のもと診断するのが望ましいと考えます。
⑥鉄筋の接合方法、モルタルの充填状況は、令第62条の6に照らして適切か。
積み重ねているブロックの目地部に均等にモルタルが行きわたり、鉄筋を入れたブロックの空洞部分はコンクリートやモルタルで埋まっていなければなりません。
また高さ方向に入っている鉄筋は、基本的に途中で接合してはいけません。
⑦鉄筋のピッチ及び定着状況は、令第62条の8に照らして適切か。
ブロック塀の中には、直径が9㎜以上の鉄筋を縦横ともに80㎝間隔以下で設置しなければなりません。
縦筋は、壁の最上部と基礎の横筋に、横筋は縦筋にそれぞれ先端をかぎ状に曲げて掛けられていなければなりません。
⑧基礎の根入れ深さは、令第61条又は令62条の8に照らして適当か。
基礎の高さは35㎝以上とし、根入れの深さは30㎝以上としなければなりません。根入れ深さとは、基礎の土への埋め込み深さをいいます。
1-3. まずは目視の点検から
今まで国土交通省より通知された内容について補足を入れながら説明して来ましたが、難しくてよく分からないという内容があると思います。そこで皆さん、まずは塀の高さと厚さを図ることから初めて下さい。
1) 高さは何メートルありますか?
たとえ補強されているブロック塀であっても、2.2m以上ある場合違法となります。
2) 厚さは何㎝ありますか?
高さの1/10以上が必要と覚えておいて下さい。
3) 控え壁はありますか?
塀の裏側に回って見て下さい。そこに控え壁がない場合はその時点でアウトです。
たとえ控え壁があっても、規定の間隔で規定の長さがなければ、違法になります。
4) 基礎はありますか?
可能であれば、地面と塀の間を少し掘って見て下さい。そこにコンクリートが確認出来て、その上に塀が乗っていれば大丈夫です。
5)ブロックに亀裂は入っていませんか?
塀全体を横から見てどちらかに傾きはありませんか?
塀を手で押してみてぐらつきはありませんか?
ブロックに亀裂が入っている場合は、その程度にもよりますが補修が必要となります。
また傾きやぐらつきがある場合は、今後小さな外力によっても倒壊する可能性がありますので早急な調査が必要です。
もし自宅のブロック塀を調査し、ここまでの項目について1つでも不具合がある場合は改善が必要となる為、専門家に相談するのが良いでしょう。
また、ブロック内部の鉄筋の状態やモルタルの充填状況、基礎の根入れ深さなどについても、素人が判断するのにはなかなか困難な項目であり、こちらも専門家の意見を聞くのが得策だと考えます。
2. まとめ
ここまで、コンクリートブロック塀の危険性について説明してきました。
法令の内容についての解説ということもあり、解りづらい部分もあったとは思います。
しかし自宅のブロック塀を違法のまま放置しておいて、もし地震などにより倒壊し人身事故を起こしてしまった場合、すべてあなたの責任となってしまうことを認識しておいて下さい。
そうなる前に事前に調査し、危険の有無を確認しておく必要があります。