セメント新聞 2017年7月31日号

「北海道地区特集 會澤高圧コンクリート 自己治癒技術も展開へ」

會澤高圧コンクリート(本社・苫小牧市、會澤祥弘社長)は、生コン、プレキャスト製品、パイルおよびHパイルを主力事業とするコンクリートの総合メーカーで、事業戦略のコアにコンクリート材料の変革を掲げ、「コンクリートマテリアルのプロ集団」を自認する。これまで常にコンクリート材料・技術のパイオニアとしての道を歩んできた同社は4月、オランダ・デルフト工科大学のバイオベンチャー企業と提携し、バクテリアを用いた自己治癒コンクリート技術を展開すると発表した。

オランダのデルフト工科大学発のバイオベンチャー企業、バジリスク・コントラクティング(BV)と、バクテリアを用いた自己治癒コンクリート材料の日本における独占販売契約を締結。今回日本に投入するのはコンクリート内に配合する特殊なバクテリアの代謝活動によって自己治癒を実現する新たな技術で、同大学のヘンドリック・M・ヨンカース氏率いる研究チームが開発した。バイオテクノロジーとコンクリート材料技術を融合することによってコンクリートのメンテナンスフリー時代に道を拓くユニークな試みで、同社では本技術を利用した製品の国内販売のほか、同社の持つコンクリート生産技術を活用した同大学との共同開発等にも力を入れ、自己治癒技術の普及を図っていく方針だ。

「今はまだテストマーケッティングの段階。ips細胞の理論を実践するために多くの臨床試験が必要なように、工業製品として量産するための改良が必要。コスト面から国内での生産体制の確立も目指す」(會澤社長)。現在、液状の塗布剤<ER7>をテスト販売し、クラックが目立つ駐車場の土間などに試験施工している。「自己治癒だけは生命体と合体しないと無理だろうという感覚が以前からあった。技術を確立できればコンクリートの世界に革命が起きる。当社としても重視している」と先行きに意欲を示す。

また、15年10月には水分割練りペースト(pMp)コンクリートを発表している。一般的な材料だけで製造可能な“夢のコンクリート”だが、通常の強制二軸型ミキサーなどでは一次凝集構造体を生成できないため、攪拌性能に優れるコーンタイプのミキサー「ファウンテン」を独自に開発し、pMpコンクリートの製造を可能にした。

「まずはプレキャストコンクリートでの使用を考えている。開発したモデュール(専用の製造装置)は茨城県桜川市内の真壁工場に移設している。9月頃には出荷体制が整う。来年春に向けて品質システムを確立し、住友林業とΣベースLLPが製造管理する基礎梁に使用するコンクリートを18年度から全面的にpMpに切り替え、一貫生産する計画だ」。pMpの海外展開も視野に入れ、早晩、モンゴルでも普及を図る考えだ。

ΣベースLLPは住宅基礎のプレキャスト化事業の確立を目指し、インフラテック、前田製管などと08年4月に設立した共同事業体。ΣベースLLPが持つコンクリート基礎梁のプレキャスト化に関するノウハウをベースに、住友林業の独自技術である基礎構造の設計手法や施工ノウハウを盛り込むことで、新たなPcaによる基礎工法へと改良した。

17年3月期売上高 製品が初めて生コン抜く

同社の17年3月期(単体)の売上高は前年同期比8.4%増の166億8700万円。営業利益は23.7%増の7億6200万円、経常利益が40%増の6億3000万円だった。セグメント別に売上高を見ると、生コン部門は2.2%増の57億3700万円。プレキャスト部門は30.9%増の61億1800万円となり、プレキャストが初めて生コンを上回り、逆転した。VE提案で、過去に例のない高度な大型プレキャスト製品を納入するなど高付加価値品の販売比率を高めたことが寄与した。18年3月期も増収増益を見込んでいる。

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