週刊ブロック通信 第3059号 2019年10月14日号

厚真町で箱型擁壁セミナー
箱型擁壁協会 自治体など100名参加

箱型擁壁協会(会長=村瀬大二郎氏)は9月13日、厚真町総合福祉センター(北海道勇払郡厚真町)で2019年箱型擁壁工法セミナーを開催した。セミナーには北海道開発局や北海道胆振東部地震で甚大な被害を受けた厚真町をはじめとする自治体職員、建設コンサルタント、建設会社などから約100名が参加。関心の高さを印象付けた。

セミナーは2部構成で、第1部では箱型擁壁の構造特性と耐震実験結果、施工性について説明した他、地震災害発生後に各被災地で実施した箱型擁壁の実地調査についても報告した。

第2部では特別講演が行われ、地元北海道の会員社である會澤高圧コンクリート(社長=會澤祥弘氏)が、米トップフライトテクノロジーズCEOのロン・ファン博士を特別ゲストに招き、同社の大型ドローン「エアボーグ」を活用したインフラメンテナンス事業について紹介。実機によるホバリングデモも実施した。

●大型ドローンでインフラメンテナンス事業

箱型擁壁協会の有力会員社、會澤高圧コンクリートが、米マサチューセッツ工科大学(MIT)発の米航空宇宙ベンチャーのトップフライトテクノロジーズ(TFT)と戦略的パートナーシップを締結して取り組む、大型ドローンを使ったインフラの保守・点検・補修事業について紹介した。

この事業では、コントロールセンターの指示で大型ドローンが現場まで自動で飛行し、同社のバイオ修復ソリューションである自己治癒コンクリート「バジリスク」で橋梁などのひび割れ補修を実行後、再び自動で中継基地へ帰還することを想定している。事業化に向けて大型ドローンを安全に航行させる管制塔(コントロールセンター)を設けると共に、同社が生コン事業で培った道内18のプラントネットワークを大型ドローンの中継基地として材料保管や給油、整備等を実施する。

TFTのロン・ファン博士は、「この事業で使用する長距離・大容量の産業用ドローン『エアボーグ』はTFTと會澤高圧コンクリートが共同開発した。一般的なバッテリー式のドローンとは違い、ガソリンエンジンで発電しながら軽量バッテリーに蓄電して電力を供給するハイブリッド電力システムのドローンだ。現行のドローンの飛行時間は最長でも15分程度と短く、バッテリーの交換が煩雑であるのに対し、エアボーグは一回の給油で長時間の飛行が可能で、運行管理の手間を大幅に削減することができる。また安定飛行の妨げとなるエンジンからの振動を抑制する機能や、優れたセンシング技術で、悪天候でも安定した飛行を実現する。我々は會澤高圧コンクリートと、インフラメンテナンス事業を展開することを楽しみにしている」と述べた。

エアボーグには空撮用4Kカメラ、鳥獣害対策に使用する赤外線カメラ、インフラ構造物を3次元スキャンするためのLiDAR(ライダー、レーザー光を用いて地表を高密度でサンプリングし、点群データを生成する手法)などを搭載しており、機体重量は45kg。

会場では事前に厚真町の被災地でエアボーグを飛ばして入手した空撮画像や、3次元点群データをグーグルマップに上書きして得た最新の現地画像などを紹介した。画像からは山肌が滑り落ちて建物が倒壊するなど、災害の爪痕が生々しく残る厚真町富里浄水場付近で行われている災害復旧工事の様子が手に取るように確認でき、エアボーグが災害時にも有効であることを強く印象付けた。

同社では、「昨年は北海道でブラックアウトが発生し、今年は台風15号の被害により千葉県で大規模な停電が続いている。災害にドローンを活用するというアイデア自体は以前からあったが、我々の生活は電力に大きく依存しており、バッテリー動力ではドローンの効力は限定的なものになってしまう。道路や鉄道が分断された時に、上空から被災地にアクセスできるのは非常に有効で、ハイブリッド電力ドローンが活躍できる余地は非常に大きい。また北海道は広大な農地を有している。農業や農業用水路点検や水の管理などで、ドローンを使えば省力化・生産性の向上に大きく貢献できる。労働人口減少社会が進むにつれて、社会的課題は顕在化する」としており、社内ではドローンやICT、ロボティクスを最大限活用したソリューションを念頭に様々なプロジェクトがスタートしている。

閉会にあたり挨拶した會澤社長は「我々は、箱型擁壁ほど耐震性に優れた擁壁は他にないと自負している。大規模地震が発生した時には必ず現地で実地調査を実施しており、今日は箱型擁壁という優れた技術についてご認識いただけたのではないかと思う。また併せて、弊社で開発を進めているドローンについても紹介した。現状、10kg以上の荷物を持って1時間以上飛行できる技術は、TFTが世界唯一で、スピード感を持って普及を図りたいと思っている。厚真町の宮坂尚市朗町長は、厚真町の復興は露出した山肌が全て緑で覆われてはじめて完了すると話している。生態系が復活しなければ本当の復興にならないということだと思う。元の緑を取り戻すため、擁壁やドローンの技術を使い皆さんと一緒に復興に向けて前進することを心から念願している」と述べた。

週刊ブロック通信 第3059号 2019年10月14日号

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