週刊ブロック通信 第2860号 2015年11月2日号

「pMpコンクリート 硬化開始調整が自在」

會澤高圧コンクリート(本社、北海道苫小牧市若草町3-1-4、社長=會澤祥弘氏)とアイザワ技術研究所(所長=青木涼氏)は、硬化開始時間を自在にコントロールできる高機能・高耐久コンクリートを開発した。

現場の工程に合わせて生コンの最適なフレッシュ性状を引き出せるため、使い勝手が格段に向上する他、建設サイトでコンクリート構造部材を製造して現場で組み上げる「オンサイトプレキャスト」と呼ばれる新たな建設業モデルにも道を拓くものとして注目を集めそうだ。

このコンクリートは、専用ミキサーで練り混ぜた水セメント比25%の極めて安定性が高いセメント粒子塊(一次凝集構造体)に、凝結遅延剤を添加した二次水を加える分割練り製法で生成した特殊セメントペースト「pMp」がベース。pMpは数日間にわたり水和反応を停止することができ、実際に生コンを使用したい時にアジテーターの傾胴ドラムに骨材を投入して所定の回転を加えると硬化を開始する。10月21日、同社が札幌市内で開催した「創業80周年記念祝賀の夕べ」の席上、取引先など約600名の出席者を前にこの新技術を公開した。

水セメント比25%の極端に少ない水でセメントを練り続けると、最初は不規則に結合していたセメント粒子が、やがて最も安定性の高い4つあるいは5つの粒子の塊である一次凝集構造体に分裂する。この一次凝集構造体に、コンクリートの配合上必要な残りの水を二次水として投入しpMpを生成する。同社では極小の水でセメントを練り上げることのできる、攪拌性能に優れたミキサーを独自に開発。中軸スクリュー羽根で材料を巻き上げ、落下する材料を反転する外羽で更に攪拌するコーンタイプのミキサーで、札幌菊水工場内に時間当たり60m3の生コン生産に対応するpMp製造モジュールを設置した。

pMpと所定の骨材を、せん断力が働きにくいアジテーターの傾胴ドラムで練り混ぜると、驚異的な保水力を有するコンクリートとなり、ひび割れなど構造体不良の主因であるブリーディングの発生を大幅に抑制できる。pMpは一次凝集構造体が水和反応を促す水を抱きかかえているため、水和が長期缶持続。走査型電子顕微鏡による微細構造観察やエネルギー分散型X線による元素成分分析を通じて、時間の経過と共に一括練りよりも圧倒的に豊かな水和反応を生成することが確認されている。

また、二次水に凝結遅延剤を添加すると一次凝集構造の粒子塊の一つ一つを被膜して、わずかな凝結遅延材で数日間にわたり水和反応が停止し続ける。必要な時にアジテーターの傾胴ドラムを開店させると、被膜したpMpペーストに骨材が衝突する摩擦エネルギーで被膜が解けて硬化を開始する。

pMpコンクリートは、工場から液体のpMpだけを運び重量物である骨材を現場に近い場所から搬入して建設サイト内で生コンに仕上げることができる。同社では、このような生コン生産方法を用い建設現場でプレキャスト製品を製造する「オンサイトプレキャスト」が現行のプレキャスト製品を製造輸送搬入する方式に比べてCO2排出量を約4割削減する効果が期待できるとしており、サスティナブルなコンクリートの実現を図る観点から、pMpコンクリートを活用したオンサイトプレキャストによる環境負荷低減を進め、構造的な人手不足問題を抱える建設業の生産性向上に貢献したい考えだ。

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